マオ猫日記
「リヨン気まま倶楽部」編集日記
 



(写真)記者会見するド=ヴィルパン首相

 ドミニク・ド=ヴィルパン仏首相は10日午前、首相官邸マティニヨン宮殿で会見し、学生・労組らの反対運動が高まっていたCPE(新社会人雇用契約)制度について、就職困難に陥っている青少年のための別の制度で置き換えると発表。事実上、CPE制度を撤回しました

 この日朝、大統領官邸(エリゼ宮殿)にジャック・シラク大統領、ド=ヴィルパン首相、関係閣僚、与党上下両院議員団長(ベルナール・アコワイエ、ジョスリン・ド=ロアン両氏)らが参集。議員団長らが関係団体との意見交換の結果を伝え、CPE撤回を正式に決定。午前10時半から首相が記者会見を開いて公表しました。当初、3月31日の大統領演説の段階では、シラク大統領はCPEの一部修正(自由解雇期間の2年から1年への短縮、解雇理由の説明)で事態を決着させようとしましたが、続く4月4日のデモでも反対運動は衰えず、攻守は逆転。既に週末の段階で「政府はCPE廃止を決断する」との観測が与党議員からも流れており、大統領と首相が議会与党UMP(国民運動連合)の圧力に押された形となりました。これは、大統領の強い行政権限と議会権力の制限を規定した第5共和国憲法の下では極めて異例の事態と言えます。
 首相記者会見を受けて、与党はさっそく国民議院に青少年の企業における就業に関する法律案」(la proposition de loi sur l'acces des jeunes a la vie active en entrepriseを提出。「機会の均等に関する法律」第8条を全面改正し、特に学職歴の無い若者を雇用した企業に対する財政支援等を充実させる、としています(法律案の和訳全文はこちら)。

 これに対して、CPE反対運動を繰り広げてきた関係12団体は同日午後4時半会合を開き、政府の決定を歓迎するものの、CPEが正式に廃止されるまで運動を継続することを確認。学生団体の一部は、CPE制度だけでなく、CPEを規定する「機会の均等に関する法律」全体の廃止、更にはCNE(新規雇用契約)制度の廃止をも要求しています。

 従来、タブー視されてきた若者の雇用制度改革(しばしば大規模デモを誘発して政府案撤回に追い込まれている)を、今回敢えて挑戦したド=ヴィルパン首相。しかし、2007年の総選挙を前に世論を気にする与党(特に同じ2007年に大統領選挙への出馬を予定するニコラ・サルコジUMP総裁の支持層)と、大統領・首相の支持率低下を前に事実上CPEの撤回にまで追い込まれてしまいました。CPE撤回により、この危機からは一時的に脱出することはできたものの、今後の長期的な経済構造改革の停滞は必至と観測され、政府・与党にとっては更に重い課題が圧し掛かったといえます。

参考:フランスの主な労働契約形態



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« 薄目猫(マオ) 全国運転マナ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。