マオ猫日記
「リヨン気まま倶楽部」編集日記
 




(地図)フラームス・ブラバント県の地図。青線が地方圏境、緑線が県境。東側がルーバン郡、西側がハル・ヴィルヴォード郡で、同郡とブリュッセル首都圏を併せたのがブリュッセル・ハル・ヴィルヴォールド選挙区(赤色及び桃色部分)。桃色部分は、蘭語共同体にありながら仏語住民が多いため、便宜措置(仏語の公的使用が可能)が認められた6自治体。

 7月29日の参議院選挙では、安倍晋三総理率いる自由民主党と公明党の連立与党が民主党ら野党に大敗しましたが、6月10日のベルギー総選挙(上下両院の同日選挙)でもヴェルホフシュタット(Guy VERHOFSTADT)現首相率いる「ランダース自由民主主義」(VLD)らの4党中道左派連立政権が敗北。代って保守系(キリスト教系)の政党「フランダース・キリスト教民主主義」(CD&V)が勝利し、レテルメYves LETERME前フランダース地方圏首相(本名Yves Camille Desire LETERME、46歳)が国王から組閣担当者(次期首相)に指名され(7月15日)、組閣作業を進めています。

 ところがこのレテルメ次期首相、先に行われた7月21日のベルギー独立記念日式典における取材で失言事件を起こし、仏蘭の言語問題に敏感なベルギー政界でちょっとした問題になりました。
 サンミシェル聖堂での式典に参加する途中、1人で歩いていたレテルメ次期首相に対して、RTBF(ベルギー仏語系ラジオ・テレビ)の記者が「7月21日は何の記念日ですか」と仏語で質問(レテルメ次期首相は仏語も一応話せる)したのに対し「憲法の公布(された日)だと思う」と仏語で回答誤答であり、正解は国王レオポルド1世の宣誓が行われた日)。続いて、「(ベルギー国歌)ラ・ブラバンソンヌ(La Brabanconne)は知っていますか?」との質問に「少しは」と答え、「どうぞ(歌って下さい)」との記者の催促に「アロン・ゾンフォン・ドゥ・ラ・パトリーエ、ル・ジュール・ド・グロワー・エー・タリヴェー」と誤ってフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を歌い、「ラ・ブラバンソンヌって本当にそれですか?」との記者の質問に「さあ、知りません」と言い残し、最後まで間違いに気付きませんでした。その後同日、レテルメ次期首相は、記者団に対して上記事件を陳謝しつつも「仏語圏住民にベルギー国歌の蘭語歌詞を歌わせてみなさい。どれだけ難しいことかわかるはずだ」「これはRTBFの意図的な取材」と反論しました。
 更に、RTBFは、レテルメ次期首相が式典の最中に携帯電話で通話しているところをカメラで撮影。これについてレテルメ氏は、「滅多に電話が無い高齢の父からの通話だった」と釈明。いずれにせよ、国歌を取り違えたことと併せて大きな問題になりました。日本では、まさか「君が代」を韓国や中国の国歌と取り違えることは無いですが、隣国と同じ言語を話し、国歌が3バージョン(公用語であるフランス、オランダ、ドイツ各語)がある国ならではの失言事件でした。

 元来、フランドル地方圏での実績と人物像からフランダース(フランデレン)地方圏・蘭語共同体では人気が高いレテルメ次期首相(ちなみに両親は父親がワロニア(ワロン)系、母親がフランダース系)ですが、仏語圏に対しては批判的であり、昨年8月17日には、フランスの雑誌「リベラシオン」の取材に対して「(ブリュッセル首都圏に隣接し蘭語共同体に属しながら仏語の公的使用が認められている仏語便宜自治体(=図で桃色の地域)の)仏語系住民は、(著者注:例外的に仏語使用を認めることで蘭語習得の移行期間を確保したのに)明らかにオランダ語を学ぶ知的状態に無いし、故に(便宜自治体の)特別な地位が延長されている」「(蘭語圏と仏語圏の)相違は積み重なり、溝は深まっている。両者の間で共通に残っているものは何か?国王、サッカーチームといくつかのビール(だけだ)・・・」と発言。特にワロン地方圏・仏語共同体から批判を浴びましたが、こうした批判に対して、レテルメ次期首相は同月28日の蘭語系雑誌の取材に「オランダ語を話せないのに親ベルギー論を展開する仏語圏の政治家は信頼できない」と反論したりもしました。更に、レテルメ次期首相は、国政上の課題になっているブリュッセル・ハル・ヴィルヴォールド(Bruxelles-Halle-Vilvoorde)選挙区問題(同選挙区は、地理的には蘭語圏のフラームス・ブラバント(フランダース・ブラバント)県にありながら、西部のハル・ヴィルヴォード郡35自治体(図で赤色及び桃色)がブリュッセル首都圏の仏蘭併用19自治体と同一選挙区に合区されており、蘭語系住民から不利だとして選挙区分割が要求されている問題)でも改革に前向きであり、それだけに仏語共同体系の住民の不興を買っています。

 とはいえ、レテルメ次期首相による組閣作業は順調に進んでおり、7月22日には「人々の力」と題する組閣文書を提示して、連立協議を開始しています。



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