月扇堂手帖

観能備忘録
あの頃は、番組の読み方さえ知らなかったのに…。
今じゃいっぱしのお能中毒。怖。

万作・萬斎 祝祭大狂言会

2013年04月21日 | 狂言の会
フェスティバル・ホール オープニングシリーズ (大阪・フェスティバルホール)



昨日に引き続き、フェスティバルホール。

観たかった熊哲の「第九」と、観たかった萬斎の「ボレロ」がせっかく連続して上演されるのに、どちらかを観てどちらかを観ないというのは悔いの残ることに思えたものの、では、二日続けて大阪まで出てくるのかと思うとちょっと体力的に厳しい気もして、さりとてホテルに泊まるというのも大袈裟というか予算的に厳しくもあり、うむむと悩んでいたところ、お友達がうちに泊まればと言ってくれたのだ。持つべきものは、大阪のおうちを建て替えたばかりの独り身の友♪

今日は、昨日より若干ゆとりもあり、リニューアルオープン11日目のまだふかふかしている赤絨毯の感触などを確かめつつ会場入り。

フェスティバルホールは、昨日も書いたとおり音響はかなりよさそうだ。シートの間隔も広がっているのか、膝のあたりはだいぶ楽になっている。
1階席に関しては段差がゆるやかで、歩くには楽だけれども、前にちょっと座高の高いひとが座るとどうしても見にくくなるような気がする。
3階席は(まだ見ていないけれども)逆に傾斜が急で恐ろしいらしい(複数の声を聞いた)。舞台奥は見えるけれどもオーケストラピットあたりまでせり出してこられると見えにくいそうだ。

それはともかく、あらかじめ番組をよく見ていなかったので、当日になって、狂言2つがボレロの前にあることを知る。ボレロ自体は15分間しかない。

狂言はシテ万作「木六駄」と、萬斎が山伏を務める「茸(くさびら)」。性格の異なる(というか正反対)2つを配していた。

萬斎による解説が最初にあり、能舞台の橋掛かりは現代では向かって左にあるのが普通だけれども、歴史を遡ると、右にあることもあれば後ろにあることもあって、さほど固定的ではなかったと。

今日は、左右の後ろに橋掛かりが設けられており真後ろへも行けるようになっている。他にも何本か現れるかも知れませんとの予告通り、「木六駄」では、さらに奥に通路のようなものが通され、太郎冠者は常の2,3倍ある道中(左の橋掛かりから右の橋掛かりを越えて背後を通って、再度左の橋掛かりから舞台へ入ってくる(@o@;) )を牛を追ってゆっくりゆっくり雪を踏みながら歩き、途中で酒盛りをしたりするのでなかなかお使い先に着かず、こちらも途中で記憶が途絶えた。気づいたときには主の伯父さんに叱られていた。

「茸」は例によってわははと笑って過ごし、いよいよ「ボレロ」へ。

「MANSAI ボレロ 」
解説のとき、萬斎さんが「昨日、第九見ましたよ。ここに、オーケストラがいて、合唱団もいて、ダンサーもたくさんいて迫力がありましたね。なのに、今日はひとりなんですよ。どうなるんでしょう。でも、ひとりでやるんです」というようなことを言っていて、もちろんそこには、心細さのようなものはなくて、ただこの時間と空間を自分一人の存在感で埋め尽くすのだという自信が見て取れた。それだけですごいなと思う。

休憩の終わるころ、お調べが聞こえてきて、え、もしかしてボレロの演奏は笛でするのかと(ドラムの刻むリズムは太鼓?)びっくりした。

始まってみるともちろんそんなことはなくて、どこのオケかはわからないけれど、録音された演奏がきこえてくる。

闇の中に一条の白い光が差し、蹲る真っ白な装束が浮かび上がる。おもむろに舞台へ移動し、四方拝のような動きから舞へと移行する。

「ボレロ」の単調なリズムのくり返しは「三番叟」に通じるものがあるとか、振付には死と再生のテーマがあるとか、パンフレットには書かれていたけれども、わたしが感じたのは、『銀の三角』のラグトーリンや『イティハーサ』の亜神の誰かのような、天地の間にあって孤独に世界を見つめている者の存在だ。

スモークがたかれる中で舞う萬斎は雲上におり、照明が青さを増せば宇宙空間にいるようにも見えた。そうして最後には羽のように袖を広げて舞い上がり、放物線の頂点で消えた。照明が落とされるあの一瞬というのは、ほんのわずか早くても遅くてもすべてが壊れてしまうという絶対の瞬間。照明さん、すごい。

安倍晴明と平知盛と三番叟と…すべての要素が入り混じり昇華されたような、拍手喝采のすばらしいボレロ。観に来てよかった♪



*****
解説:野村萬斎
狂言「木六駄」野村万作・内藤連・深田博治・石田幸雄
狂言「茸」  野村萬斎・高野和憲・中村修一・内藤連・宇貫貴雄・岡聡史・
       竹山悠樹・月崎晴夫・深田博治・石田幸雄
「MANSAIボレロ」野村萬斎
技術監督:福田純平 舞台監督:勝康隆 
照明:小笠原純、佐々木真喜子 音響:尾崎弘征

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
豪華 (嫦娥)
2013-04-29 16:27:54
超絶に豪華な二日間ですね!
両方見たかったです。特に二日目は。
それにしても、見ている人にそんな感想を持っていただけて、ボレロの照明さんが聞いたらきっと喜ばれると思います。
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豪華でした。 (月扇堂)
2013-04-30 01:29:55
嫦娥さん、ありがとうございます。

贅沢しました。おかげで懐さびしい今日この頃です(^_^;)

照明さんは、ほんっと、すごいと思いました!
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