読書日記と読書ノート 第三部(2013年6月~2015年6月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

243、共同研究「転向 5」(東洋文庫)-その2-(2/4)

2017-11-23 07:01:39 | 読書記録

(1)日記から-つづき-

・5月6日(水)

今日は「転向5」を200ページ読んだ。戦前の右翼活動家=津久井龍男の生涯の軌跡を論述。津久井は軍部に対する批判の目をもっていた。国家社会主義(財産の国有化?)に共鳴しながら、次第に国家主義に傾斜していく。最後は侵略戦争を支持する。が、戦後は中国やアジア人への贖罪意識から無償で留学生のために尽くす。嘘やごまかしのない生き方。津久井が理想とした人間関係は肝胆相照らす全幅の信頼関係。村落共同体の仲睦まじい全人格的友誼。この理想郷は異質なものを受け入れない。異分子を排除する。戦前・戦中はそれが排外主義となり、国内ではテロリズムを生んだ。全人的信頼関係は他者性を受け入れない。もう一人、小学校教師の東井義雄。東井は戦前は皇国臣民を育てることを自己の使命とした。頭での知的理解ではなく、身体と感性を伴った全人的な帰依。親鸞の他力信仰に裏打ちされていた。親鸞の阿弥陀仏が東井にあっては天皇となる。天皇の御光によって生かされているという信仰。それゆえに一人一人の命は貴い。戦後になると天皇の御光は消える。残ったのは、身体の奥深くから湧き起る知の喜びと認識の獲得、そして命の貴さ。何かファナチッチな臭いがする。命の乱用。感覚・感性の偏重。こういう教育者はえてして子供を洗脳しがちだ。洗脳を教育の成果と誤信する。やはり、異論・批判を許さない。子供を他者と認識できない。津久井と東井の思想は違うけれど、自己と他者の一体性を求める点では共通している。心情倫理への傾斜、ナショナリズムへの志向。天皇制の大衆的、心理的基盤だ。

 

(つづく)


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