読書日記と読書ノート 第三部(2013年6月~2015年6月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

243、共同研究「転向 5」(東洋文庫)-その4-(4/4)

2017-11-26 06:51:36 | 読書記録

(2)ノートから

第一章  藤田省三

①内面的自律性の観念は、国家と組織の時代となった近代において、その強固な行動規律の体系との関連の下に初めて人類の自覚にもたらされ主唱されるに至った観念である。機構と組織体の中で生活する個人がそこの行動において厳密な規律に従いながら、なお自己固有の精神と世界を保持しようとしたとき内面の自立性が人間固有の属性として自覚されたのである。

②力における敗北が直ちに理念の自発的放棄をもたらす日本的転向の典型。天皇制は三千年間この方法で何回かの危機を切り抜けて存続してきた。思想と外界との同一化構造。

➂日本の政治指導者における追随主体性という自主性の特殊構造。つまり、征服者の意向を「先取り」する点において「自主的」であるような、逆説的な「自立」なのである。

→GHQに慰安所の設置を持ち掛けたのもその一例だろう。

④絶えず民主主義を作りまた再生産し拡大していくもののみが民主主義者なのである。その意味で民主主義者とは民主化主義者である。

➄「人権」といった普遍的原則は普遍的であるがゆえに常にあらゆる人々に存在しうるし、また存在すべきであるが、同時にその抽象的原理が歴史的状況によってある特定者の中に典型的に体現される場合がある。

➅敗戦とともに、今まで表面的には押し殺していた欲望自然主義が公然と表出した。

⑦公然たる社会的存在が国家の実定法で認められていないがゆえに公共物ではないと考える思想形態。

⑧一君万民主義は人の上に人を作っているという虚偽だけでなくて、デモクラシーに欠くことのできない、すべての権威と権力への批判の自由を持っていないことによって虚偽意識であった。   

 

(了)


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