my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

Weedflower

2012-02-03 16:19:00 | 好きな本

もうしばらく前から、この本棚の「積読」のところに入っていて‥
いったいいつから読みたいと思っていたのか、何をきっかけに(誰かのレビューを
きっかけに?)知ったのか、そもそも本当に読みたいと思っていたのかさえ
思い出せなくなっていました。

同じような本がまだ数冊あるのですが、それらを減らしていこうと、今更ながらに
思いつき、やっと図書館に予約して借りてきたのがこの本です。





こんなふうな書きだしで、物語ははじまります。

 ひとりぼっちだと感じるのは、こんなとき。

 一、みんなに見られているとき。ときどき感じる。
 二、だれにも見られていないとき。しょっちゅう感じる。
 三、なにもかもどうでもよくなるとき。週に一回くらい感じる。
 四、ちょっとしたことで泣きそうになるとき。一日に一回くらい感じる。


主人公の、ニッケイ3世のスミコは、ハクジンのクラスメートから初めて
お誕生日会に招待され、舞い上がり、いつも感じる「ひとりぼっち」を今日はちっとも
感じない、と喜びいさんで帰ってくるのが冒頭のシーンなのですが、それがまた
その後のスミコの落胆ぶりを示唆しているようで、なんとなく気が重いまま
読み始めました。

物語の舞台は、アメリカのカリフォルニア州で、時は、まさに太平洋戦争が始まろうとして頃。
主人公のスミコと幼い弟のタクタクの両親は事故で亡くなっていて、花農家を営んでいる
母方の祖父の家族に引きとられて、一緒に暮らしています。

私の予想通り、ニッケイのスミコは、ハクジンの家には入れてもらえず、屈辱を感じながら
それでも楽しかったと健気な嘘をつきながら帰宅します。かわいそうなスミコ、と思うまもなく
恐ろしい時代の波が、スミコやアメリカに住むすべてのニッケイジンに襲ってきます。
太平洋戦争の始まりとともに、財産を没収され、仮収容所へ入れられることになったのです。

仮収容所から、今度は、アリゾナ州のポストンへ。
スミコの目を通して描かれるそこでの生活は、収容所という言葉から連想される
悲惨で過酷なものとは違うのですが、それでも、人間が自由を奪われて生きるということ、
人間としての尊厳など、色々なことを思いながら、読みました。

3世である、スミコの「感じ方」も私にはとても興味深かったです。
たとえばこんなくだり‥

 見つめられて、スミコは“ハジ”を感じた。なにかいけないことでもした
 みたいな気がする。同時に、ちょっと怒りも感じる。だってわたし、
 なにも悪いことなんかしてない。スミコは知っていた。前にジイチャンから
 聞いたことがあるから。わたしが感じる“ハジ”はわたしの日本人としての
 一面で、怒りはアメリカ人の部分だ。

また、こんなのもありました。

 べつの男の人がいった。「まあ、“シカタガナイ”さ」
 スミコは最近、しょっちゅうその言葉を耳にする。(中略)
 家が焼けてしまったとき、愛する人が死んだとき、失恋したとき、悲劇に
 おそわれたとき、それにただ足の爪が割れただけでも、日本人はいう。
 “シカタガナイ”


それと、こんなことも、終盤、思いました。
好きな人と一緒にいたい、好きな人には近くにいてもらいたい、というのは「恋心」。
好きな人には、その人の好きなことをやってもらいたい、たとえ会えなくなっても
どこかで自由に生きていてもらいたいと願うのは「愛」なんだなって。

そして、友情も、愛の一部なんですね。


スミコたちは、まだ10代なのに、最後の別れの場面では、いろんなこと
教えてもらった気がしています。
よい物語でした。



この本の中で、スミコたち一家が「クサバナ」と呼んでいるのは、
カーネーションのように温室で育てる花ではなく、畑で育てている花のことで、
特にストックが、スミコのお気に入りです。






コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2月になりました | トップ | ヒルサイドセミナー「あなた... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

好きな本」カテゴリの最新記事