露の音 幽かな独り言

 
軌跡を見失わないよう
     追憶のよすがを
       記憶の欠片を遺したいのです

初春文楽公演

2019-01-26 14:54:33 | 日記


新年初文楽



11月の公演を観に行った折の展示にて

豪華な打掛と俎板帯を見て

いくつもの櫛や簪を挿した首を思い浮かべながら

傾城さんの出てくる演目が観たいなぁ、なんて思っていましたら

初春文楽公演で登場すると知り、ずっと楽しみにしておりました

是非とも間近から見たいと最前列を取りました


まずは「冥途の飛脚」

見栄を張ってその場しのぎを繰り返す忠兵衛が憎々しく思えますが

何といっても顔が良い

源太の首の美しさを初めて知ったのは4年前の初春公演での同演目

三味線を弾くお禿も可憐でしたし

梅川さんの頼りなさげな所作も素敵でした

基本的に娘人形を見るのが好きなのですが

今回の席から少し離れた場所にいることが多かったので

今回は忠兵衛に注目

やはり顔が良い

預かり金を懐に夜道を行く場面で

主遣いの吉田玉男さんですら隠れる角度から見ることになり

お人形が独りでに歩いているように見えて

現実にない世界に入ったような不思議な気分になりました

幕引き寸前のわずかな時間

絵画のような光景にいつも感動を覚えます


そして楽しみにしていた「壇浦兜軍記」

心待ちにしてた遊君阿古屋の登場

それ以降わたしはほぼ阿古屋さんしか見ていませんでした

展示されていた絢爛な打掛を纏い

牡丹の俎板帯の上に胡蝶の飾りをつけ

神妙に瞑目して座す

その姿がちょうど真正面にくるの席にいたもので

最前列で何者にも邪魔されずに見惚れる至福に浸っておりました

詮議をする重忠の言葉にじっと聞き入っている間

目を閉じたまま身じろぎもしない阿古屋さん

ずっと眺めていても良かったのですが

美しい置き人形ではなく文楽人形

静かに目を開くと高雅な口調と所作で応え

時には高く結った髪にいくつも差した簪のうちの1本を抜いて差し向け

岩永の脅しを嘲弄してのける様が素敵でした

そしていよいよ三曲の演奏

小箱を開けて、三本の指へ爪をつける細やかな所作

床での演奏とぴたりと合った動きは予想していたのですが

思った以上に大きく素早い演奏に驚きました

三味線では「冥途の飛脚」と同じ言葉が唄われ

二胡では異国風の響きに酔いしれました

実際に弾いているのは床の三味線さんなのですが

阿古屋さんの指の動きに見惚れっぱなしでした

いつしか遣っている桐竹勘十郎さんも見えなくなっていて

ただただ楽器を弾くお人形を見ているような気がしていました

阿古屋さんのいる場所だけが凄く明るく見えて

本当に阿古屋さんしか見ていなかったなぁとしみじみ思います


文楽を観るようになってから今年で5年になりますが

好きな役どころを3つ挙げますと

玉藻の前、岩長姫、そして今回の阿古屋さん

両面&双面、ガブ、傾城

華々しい首が好きなのでしょうか

それとも遣う勘十郎さんが好きなのでしょうか……


今年も良い演目がたくさん観られるといいなと思います


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