報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道師達の旅」

2017-04-07 18:18:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月28日06:12.天候:晴 山形県山形市 ホテルメトロポリタン山形7F客室]

 稲生:「う……」

 カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる。

 稲生:「……あれ……?」

 稲生は起き上がった。
 そして、周囲の状況を確認する。

 稲生:「……?」

 Windows10がインストールされているPCの起動の方が、稲生の意識レベルの起動より早かったようだ。

 稲生:「あれ!?僕、寝ちゃった!?」

 慌てて起き上がる。
 ふとライティングデスクの上に、メモ書きがしてあった。
 マリアの字で英語で書かれていたが、それを日本語訳するとこうなる。

『ぐっすり寝込んでしまったようなので、私はユウタの部屋で寝るからよろしく。あと、外の騒ぎは師匠達が鎮圧してくれた。安心してくれ』

 稲生:「僕の役立たずーっ!!」

 稲生はorzの体勢になった。
 取りあえず目を覚ます為に、バスルームに入ることにした。

[同日07:00.天候:晴 同ホテル・同室]

 稲生は顔だけでなく、昨夜風呂に入っていないことを思い出して、入浴もした。
 その後、窓の外を見ると、駅前が平穏に戻っていることが分かった。

 稲生:「一体、何があったんだろう……?」

 と、そこへ、部屋の電話が鳴った。

 稲生:「はいはい!」

 稲生は電話を取った。

 稲生:「はい、もしもし?」
 マリア:「あ、ユウタ。起きてた?」
 稲生:「ええ。……すいません、何か寝ちゃったみたいで……」
 マリア:「まあ、しょうがない。だから、私はユウタの部屋で寝させてもらったよ」
 稲生:「は、はい」
 マリア:「それで、だ。師匠達はまだ起きなさそうだから、2人で朝食をと思ったんだけど、どう?」
 稲生:「行きます!行きますとも!」
 マリア:「じゃ、行こう。昨夜のレストランで食べれるみたいだから」
 稲生:「はい!」

 稲生はすぐに部屋の外に出た。
 そして、稲生の部屋から出て来たマリアと合流した。
 いつもの緑色のブレザーとグレーのプリーツスカートをはいている。

 稲生:「おはようございます。すいませんでした、昨夜は……」
 マリア:「しょうがない、しょうがない。どうせ起きてたところで、所詮私達じゃ何もできなかった」
 稲生:「はあ……」

 稲生はエレベーターのボタンを押して言った。

 稲生:「あの、昨夜は何が……?」
 マリア:「食べながら話そう。でも、東アジア魔道団のインターン(弟子)達が協定に背いて私達を狙って来たというのは知ってるでしょ?」
 稲生:「部屋の外まで来たヤツですね?」
 マリア:「そう。ユウタが寝た後で何がどうなったか、食べながら教えてあげる」
 稲生:「はい」

[同日07:30.天候:晴 同ホテル・最上亭]

 稲生は和定食を注文し、マリアは洋定食を注文した。

 マリア:「だいぶ師匠達は魔力を消耗したらしいから、チェックアウトギリギリまで寝ているかもしれないね」
 稲生:「そんなにですか」

 パトカーまで出動したくらいだから、騒乱そのものの揉み消しは無理だったらしい。
 地元の珍走団と愚連隊が大乱闘を起こし、ダンテとイリーナとで警察の鎮圧活動に協力したという形にしたという。
 もちろん、大乱闘者の正体は東アジア魔道団の者達なのだが。

 マリア:「ああいう場合は師匠達にお任せでいい。勝っても負けても、その方法が悪かったら、結局後でまた揉めることになるからね」
 稲生:「はあ……」
 マリア:「人質になったりしたら余計面倒になるところだったから、それが防げただけでも良かったって言ってたよ」
 稲生:「何か、実感湧かないですねぇ……」

 稲生は頭をかいた。

 マリア:「とにかく、ユウタがどう思おうが、ちゃんと丸く収まったし、別に師匠達が咎めるとかそういうことは無いから安心しろってこと」
 稲生:「分かりました」
 マリア:「このホテルのチェックアウトは?」
 稲生:「11時です。実際、仙山線はかなりゆっくりした時間のものに乗ろうと思うので、慌てる必要は無いです。もう、お昼近くの電車になると思います」
 マリア:「なるほど。それじゃ、ルームサービスでも頼むことに……」
 稲生:「いや、それがこのホテル、ルームサービス無いみたいです」
 マリア:「何だってー!?」

 10時頃に起床したイリーナとダンテは、最上亭での朝食時間に間に合わず、館内のカフェで軽く済ませたという。

[同日11:15.天候:晴 JR山形駅構内]

 ダンテ:「いやあ、昨夜は参ったねぇ……。もちろん、証拠は押さえたから、ちゃんと先方には厳重抗議をしておくからね」
 イリーナ:「お願いしますわよ、先生?おかげさまで、私の睡眠時間が3時間も削られたんですから」
 ダンテ:「弟子達が危険な目に遭ったことに対しては、何も無いのかい?」
 イリーナ:「もちろん、ありますとも。でも、先生なら私が言わずとも、それを含めて厳重抗議して下さるだろうと予想しておりますわ」
 ダンテ:「ふふ……。まあ、そうなんだけどね。稲生君」
 稲生:「はい!?」
 ダンテ:「電車はお昼くらいの出発かね?」
 稲生:「はい。11時59分発、仙山線快速、仙台行きです。仙台空港まで行きますので」

 新幹線で東京駅まで行き、そこから成田エクスプレスに乗り換えるというのがデフォルートだと思うが、それをしなかったのは、上りの新幹線がグリーン車であっても満足な席が空いておらず(虫食い状態で、4人ともバラバラの席になってしまう)、また成田エクスプレスにあっても同様だったからである。
 仙山線と仙台空港アクセス線はそもそも指定席すら無いし、仙台空港からの成田行きなら良い席が空いていたからである。

 ダンテ:「うむ、分かった。そこは全て稲生君に任せる」
 稲生:「成田空港のホテルで、アナスタシア先生達がパーティを開いて下さるそうですね」
 ダンテ:「らしいね」
 稲生:「アナスタシア先生、僕に『ダンテ先生ともあろう御方を普通電車の普通車に乗せるとは何事!?』と、怒りませんかね?」
 ダンテ:「怒るだろうね。あのコの性格だと」
 稲生:「僕が怒られます?」
 ダンテ:「しかしキミのルートプランだと、どう予算を高く計上したところで、そうなってしまうんだろう?」
 稲生:「そうです。E721系にグリーン車は無いですし……。JR北海道721系なら、指定席“uシート”があるんですけど……
 ダンテ:「それならしょうがない。キミがそう思うのなら、堂々としなさい」
 イリーナ:「そうよ。あんまりうるさかったら、ナスターシャの鼻っぱし、パシッと叩いていいから!」
 稲生:「いや、それはできません!」
 ダンテ:「稲生君の立場ではムリだろうねぇ。さて、稲生君オススメの駅弁は何かな?」
 稲生:「あ、はい。それはお任せください」

 稲生達は昼食の駅弁と飲み物を買うと、仙山線のホームに向かった。
コメント
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