報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「本編NG劇」

2017-02-06 20:57:57 | アンドロイドマスターシリーズ
 雲羽百三:「それじゃ次のシーン、行くぞー!赤羽駅からときわ台駅行きのバスに乗るところ!」
 AD:「本番行きまーす!5、4、3、2……」

 カチッ!(カチンコの音)

 運転手:「お待たせ致しました。17時1分発、ときわ台駅行きです……」

 プシュー、ガタガタッ!(ノンステップバスの前扉が開く)

 敷島:「大人3人で」
 運転手:「ありがとうございます」

 ピピッ!(敷島がSuicaを読取機に当てた音)

 多摩準急:「なあ、クモ」
 雲羽:「何スか?名誉監督」
 多摩:「運転手役、違くね?」
 雲羽:「えっ、そうですか?眼鏡を掛けた中年のエキストラのはずですが……」
 多摩:「いや、何か違うような……」
 運転手:「クフフフフフ……。お待たせ致しました。発車致します」
 多摩:「オーディションの時、あんな厭らしい笑いをしてたっけ?」
 雲羽:「えっと……そりゃ……」

 バスが走り出す。

 運転手:「先般の元旦勤行における大感動は、未だ冷めやらぬものであります。このバスは17時1分発、常盤台方面、顕正会東京会館行き、直行便でございます。途中の下車は大いなる罪障を積むことになりますので、下車されぬように固く固くお断り致します。尚、運転手は私、横田が勤めさせて頂きます。それではしばしの間、唱題でもしてお過ごしください。クフフフフフフ……」
 雲羽:「カットカット!何だこれ!?誰だ、お前は!?」

 運転手、深く被っていた帽子を取る。

 横田:「横田です。先般の“大魔道師の弟子”に出演させて頂いた感動は、未だ冷めやらぬものであります。当作品にも出演させて頂いた功徳は……」
 雲羽:「誰が出ろっつった!?帰れっつったんだ!」
 多摩:「撮影の邪魔だから帰ってくれ」
 横田:「クフフフフフ……。いいんですか?私を排除した場合、大いなる仏罰があなた達に下りますよ?」
 雲羽:「上等だ、この野郎!俺はもう日蓮正宗も辞めたんだ!怖いものなんてない!」
 横田:「クフフフフフフ……。そうですか」

 横田、車内放送と車外放送のスピーカーを両方ONにする。

 横田:「皆さーん、あのねー!雲羽監督はねーっ、女子講員にフラれたから法華講辞めたんですよーっ!」
 雲羽:「わわわっ!黙れっ、変態!!」
 多摩:「おい、そんなこと一言も聞いてないぞ?」
 雲羽:「デマですよ!」
 シンディ:「フラれたのは事実でしょ、カントク?」
 雲羽:「昔の話だ!」
 横田:「多摩準急さんはねーっ!実は学会員だったんですよ!」
 多摩:「くぉらーっ!」
 雲羽:「……いつの間にご入会を?……はっ!まさか、紹介者はあの、んっ?さんじゃ?」
 多摩:「違う!デマだ!」
 横田:「コホン。では今度は桜梅桃李さんの恥ずかしいネタをば……」
 雲羽:「命が無くなるから辞めなさい!」
 多摩:「さっさとこいつを引きずり出せ!」

 シンディによってバスから引きずり降ろされる横田。

 横田:「と、常盤台に行くのですから、顕正会ネタは鉄板ですよね!?」
 シンディ:「そういうのは“大魔道師の弟子”の方でやってくれる?」

 シンディ、後ろから横田を羽交い絞め。

 横田:「はぁぁッし、シンディさんの大きなオッパイが背中に……!(*´Д`)ハァハァ……!も、もっとキツく抱いてください……!」
 シンディ:「よくってよ……!!」

 シンディ、両目を光らせ、サディスティックな笑みを浮かべて力を入れる。

 横田:「はぐわ!?」

 この後、背骨がバキバキに折れた横田が発見された。

 AD:「監督。運転手役の役者さん、グルグル巻きにされて駅前の公衆トイレに閉じ込められてました」
 雲羽:「やっぱりな。大丈夫か?」
 運転手:「突然、後ろから殴られて……!『ケンショーの為に御奉公しなさい』と……」
 多摩:「カルト教団め。俺から言わせりゃ、日蓮正宗さんも似たようなもんだ」
 雲羽:「それはそれは……。よし!とにかく気を取り直して、撮影を再開しよう!配置について!」

 AD:「それではテイク2、いきまーす!5、4、3、2……」

 カチッ!(🎬)

[1月7日17:00.天候:晴 JR赤羽駅西口→国際興業バス赤53系統車内]

 運転手:「お待たせ致しました。17時1分発、ときわ台駅行きです」

 プシュー、ガタガタッ……。

 敷島:「大人3人で」
 運転手:「ありがとうございます」

 ピピッ!

 敷島:「後ろの方がいいか?」
 アリス:「そうね」

 敷島とアリスは2人席に座った。
 シンディはその横に立つ。
 本数の多い路線であるということは、それだけ混雑しやすいということでもある。
 土曜日の夕方であっても、ローカル線のそれと比べて明らかに乗客数が多かった。

〔「17時1分発、ときわ台駅行き、発車致します」〕
〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは前扉のグライドスライドドアを閉めると、定刻通りに発車した。

〔♪♪♪♪。毎度、国際興業バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは志村一丁目、前野小学校経由、ときわ台駅行きです。途中、お降りの方はお近くのボタンを押してお知らせ願います。次は法善寺交番、法善寺交番でございます。冨士大石寺顕正会東京会館へお越しの方は、終点までご乗車ください〕

 アリス:「駅から最高顧問のお宅までは遠いの?」
 敷島:「いや、歩いて行けるよ。一応、家は知ってるから」
 アリス:「そう」

 バスは駅前のバスプールを出ると、坂道のトンネルに向かう。
 ときわ台駅までの道のりは結構アップダウンが激しく、道も狭い所がある為、沿道の人口が多いことも相まって、利用客が多いのだそうだ。
 けして顕正会員の利用が多いわけではない。

 アリス:「やっぱり、トニーも連れて来たら良かったんじゃないかしら?」
 敷島:「いや、いいよ。さすがにまた小切手をもらうわけにはいかない」
 アリス:「マルチタイプ9号機を早いとこ造った方が良さそうね」
 敷島:「2月中にはできるんだろ?」
 アリス:「そのつもり」
 敷島:「それならいいじゃないか。どうせまた完成したら完成したで、製作費用もらえるんだから」
 アリス:「DCJの売り上げになるわ」
 敷島:「そりゃ良かった」

 最高顧問はシンディのような風貌のロイドを気に入ったようなので、デザインは彼女に似せるものの、性能自体はメイドロイドに似たようなものにするということなので、実質的な製作費用は実際のマルチタイプの半額以下になり、つまりマルチタイプの劣化版というか廉価版というか、簡易版みたいなものだ。
 最高顧問たる敷島孝之亟にはそれで十分ということだ。
 バスは夕闇に包まれた北区内を板橋区に向かって走行した。
コメント (10)
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