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「のらくろ」豚の国大戦争編

2009年12月10日 | マンガ
【「坂の上の雲」日本人なら一度は触れて欲しい物語】
http://blog.goo.ne.jp/ldtsugane/e/3b6faa922eec158b89c0e4f65c711feb

【2008-02-23:ハリマオ】
http://blog.goo.ne.jp/ldtsugane/e/6bc53145e1accd932fad6fe6281b8393

【「マライの虎」】
http://blog.goo.ne.jp/ldtsugane/e/5eed336285b550f30074c9e1b102bcac

先日、「坂の上の雲」を取上げた事もあるので、僕の“関連”の記事を集めておきます。下の「のらくろ」の記事は「快傑ハリマオ」を取上げた大分前の時に、友人のロヒキアさんから「のらくろ」について話を振られて、ちょっと機会があれば紹介したかった所を書きました。古い掲示板に残っていたので、今回、このブログに再入力しました。

それで「坂の上の雲」のエントリー後、いろいろ情報を頂いたのですが、やはりというか、司馬史観あるいは日露戦争を肯定的に描く事が気に入らない人たちがいて何か抗議があったみたいですね。…まあ、色んな意見がありますし言う分には構わないんですけどね。強権を用いて気に入らない「物語」を潰そうとしたり書換えようとしたりされるのは我慢なりませんね。(←そういう経験を何度かして、ちょっと、トラウマみたいになっています)
また逆に、近代日本を肯定的に描く事に否定的な勢力とは、反対の勢力(?)として、たとえば毛沢東の「物語」を描く時に彼を“大悪人”に描かないと気に入らない。あるいは安重根の「物語」を描く時に彼を“小人物”に描かないと気に入らないという人たち。あるいは平和主義の危険な一面を描かないと、とか……いや、想像ですが(汗)対面にはそういう人たちもいるんじゃないかと思います。当然ながら僕はそちらの側に与する気もありません。(ここらへんはプロパガンダとの絡みがあるので本当は一律には語れませんが、スタンスとしてはそうです)

「物語」の感動は、「物語」のままに…というのが僕の願いです。

ただ、昔の人の「物語」に接する時は、当時の状況やものの考え方を読み取って、なるべく肯定的に接して行く事が多いです。その方がより深く「物語」を「愉し」めるので。…「この物語の(思想的に)間違っている所を見つけてやる!」とか「この物語が(思想的な)間違いに無自覚である事を糾弾してやる!」とか、そういう否定的な接し方のみに腐心しても、心を歪ませるだけだと思うんですけどねえ…。



(※以下、「のらくろ」豚の国大戦争編)

ロヒキアさんが「のらくろ」に話をふってきたので、ちょっと「のらくろ」の紹介をしっかりしたいと思い、復刻版を引っ張り出したりしていました。昔(僕が子供の頃)はけっこうどこの図書館の隅にも「のらくろ」が置いてあったはずなんですが今はどうなんでしょうねえ…?
戦前の大大大ヒットマンガ。戦後の作品群にも大きな影響を与えた作品で、当初は孤児という境遇から猛犬連隊に入隊したのらくろの軍隊生活を描くコメディ色の強いマンガだったんですが、のらくろが少尉に上がった頃に豚の国との大戦争に突入して行きます。「のらくろ総攻撃」「のらくろ決死隊」「のらくろ武勇談」の三部作がそれで、僕はここを抜き出して「豚の国大戦争編」と呼んでいます。ロヒキアさんがここ(…と戦後の「のらくろ」)を指してのらくろと第二次世界大戦のヒーロー、キャプテン・アメリカとの符合指摘するのは何となく…いや結構、分かりますw

…で、ですね。ここらへんの一連の展開ってもうモロに日中戦争なんですね。それまでものらくろは戦争を体験してはいるんですが、基本的には想定される実在の国家はなかった。しかしこの「豚の国大戦争編」の豚の国はモロに当時の漢族中国(汗)しかも、かつて豚の国に居座っていた熊にそそのかされて犬の国に戦争をしかける。さらに犬たちは羊たち(満州族)が豚の国で酷い扱いを受けている事を知って彼らの独立国(当然、満州国を指す)作ってあげるという念の入れようw
この日中戦争をやっている真っ最中に、日中戦争そのものを描く、という展開がどういった経緯で行われたのかは分かりませんが「豚の国大戦争編」から「戦前のらくろ」の完結編とも言える「のらくろ探検隊」は当時の国際情勢をかなりリアルに捉え描いた大河ドラマとして仕上がっていて、ストーリー・マンガというものをワン・ランク(犬だけに…)レベルアップさせた快事になっています。冊をまたぐ大戦争(連続ストーリー)というのは当時の漫画としてはかなり未体験のゾーンだったと思われます。この「豚の国大戦争編」を経て、のらくろは予備役に退いて、中国大陸の開拓に乗り出して物語は一端の幕を閉じて行きます。(…まあここで終わってないのが、また「のらくろ」の奥深さなんですが…今はその話は省きます)
復刻版の「のらくろ」を読んだ時に、僕はこの「のらくろ」のストーリーにもの凄く感動した事を覚えています。当時、これが日中戦争の事を模しているなどとは思いもしなかったのですが「豚の国大戦争編」は戦争ものとして大変面白く、また「のらくろ探検隊」は当初の、おどけずっこけな漫談集であった「のらくろ」のシリーズからは想像もできなかった壮大で素晴らしいラストを迎えています。

実は本日、この話を作文前に人にしたんですが。年上の先輩にやんわりとたしなめられました…のかも?wう~ん、やっぱりやんわりたしなめられる事なんだ…とか思いながら書きますが…。まあ、僕はこの「豚の国大戦争編」が大好きなんですね。それは米の戦争ドラマ「コンバット」に匹敵する…とか言って一概に比べれませんが(汗)しかし、のらくろが勇ましく進撃していく様は本当に胸が躍ったし、シンプル故に重厚な物語は今読み返しても充分な読み応えを感じさせます。戦前のこの時、既にマンガは政治的な背景を描きつつ、戦局を展開させるという(それこそ「ガンダム」のような?w)域に既に達していたんですね。
そしてのらくろは退役して「これからは大陸の開拓だ!」と言って大陸へと飛び出し、他の犬(朝鮮族)、豚(漢族)、羊(満州族)、山羊(モンゴル)たちと協力して鉱山を掘り当て、また次の開発を求めて去って行きます。そのラストは本当に素晴らしい。それは「のらくろ」が今まで日本人が見た事がなかった世界を見せてくれたって事を意味しています。ずっと島国の中にいた日本人が見た事のなかったもの。源氏物語も、平家物語も、太平記も、太閤記も、忠臣蔵も描くことのなかった、ただただ広い世界フロンティアというものを見せてくれたんだと!(ジャーン!ここでグレゴリー・ペックの「大いなる西部」のテーマをかけて下さいw)日本の子供達に見せてくれたんだと、そう思うわけですね。
…ってここらへんでちょっと待ってが入ったんですがwでも、新大陸を“発見”して、そこに入植する決意をした西洋人がその大地に立った時、どれほど熱く胸を躍らせたのか?西部劇の映画とか観て、それが理解(共感)できるなら、当時の日本人が満蒙の大地に何を思い描いたか?も想像できるはずです。そういう感動や楽しさを変な理由でゆがめて受け止めたくない…と僕は常々思いながら生きています。たとえその感動が様々な悲劇と隣り合わせだったとしても…ですw

しかし、その「のらくろ」が見せた世界は、敗戦によって閉じられてしまい、のらくろ自身もまた戦後に別の物語を迎えて行きます。これはまた別の機会で話せればと思います。そういう様々な意味で「のらくろ」は本当に貴重な物語です。最近、図書館とか行かないんですけどねえ…今でも本棚の片隅にひっそりと残って語り継がれて行ってくれているといいなと思っています。(「閑話喫茶」2008/03/03より)


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