甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

川端康成「かけす」 その2

2021年06月23日 20時49分04秒 | 本読んであれこれ

 農村部に住んでいる友人宅では毎年ツバメたちが子育てするそうです。去年だったかも、やはり子育てにやって来たそうです。

 そうすると、いつもそれを楽しみにしているヘビがいるそうで、みんなヒナたちは食べられてしまったんだとか。そうなると、親たちももう一度卵を産んで、もう一度子育てにチャレンジする。そうしたら、また食べられてしまったとか……。どうして、そこまでして子育てし、それをまんまと食べるヘビもいる。

 どうせだったら、ヘビは2回目は許してあげるとか、ツバメたちも新しいところで子育てしてみようとか、そういうことはしないんですね。あくまでも自分たちの決めたことを納得がいくまでやってみる、ということなんでしょう。

 2回目のヒナたちを食べられた夫婦は何を思ったでしょう。どうしてヒナたちは食べられてしまったのか、目の前真っ暗でも、また今年も来ているのかもしれないです。そして、今年こそちゃんと子育てしようと燃えているかもしれない。もう意地というのか、野生の対決というのか、とことんやりきるとこまで行くんだろうな。でも、自然って、強い方が勝つことが多いから、どうなっただろう。また、聞きに行くのが楽しみです。



 別居している父が縁談を持て来た時、芳子は意外だった。
「お前には苦労をかけてすまなかった。こうこういうわけの娘ですから、お嫁というよりも、楽しい娘時代を取りもどさせてやってくださいと先方の母親によく話してある。」
 父にそんなことを言われると芳子は泣いた。
 芳子が結婚すれば、祖母と弟とを世話する女手がないから、父達は祖母達と一つになるということであった。それがまず芳子の心を動かした。父のことから結婚を恐ろしいように思っていたが、実際の話にぶっつかるとそう恐ろしいとは思わなかった。

 お父さんは、娘のしあわせを願っていたようです。ちゃんと親同士で話の通じる家庭の男の人を選んできたようです。なかなかやるじゃないですか。

 そして、お祖母ちゃんは、息子であるお父さんとその妻が面倒を見るようです。ちゃんと生活設計もできています。芳子さんも何の心配もなく結婚できそうな感じです。そして、みんながそうであったので、相手の男の人がどういう人かは問わない。ある程度父親を信じて、その男の人のところへ行く。

 そんな風にして、昔の夫婦というものはできていたんですね。今の若い人たちだったら、そんなの絶対納得しないだろうし、親もそういうことができなくなっています。子どもは、自分で動き出さない限り、親としては手出しできない感じ。



 身支度(みじたく)がすむと芳子は祖母のところへ行って立った。
「お祖母(ばあ)さん、この着物の赤いのお見えになって?」
「ぼうっとそこらの赤いのはわかるよ。どれ。」と祖母は芳子を引き寄せて着物や帯に目を近づけながら、
「もう芳子の顔は忘れたよ。どんなになっているのか、見たいねえ。」
 お芳子はくすぐったいのをじっとしていた。祖母の頭に軽く片手をおいた。

 おばあちゃんと芳子さんの最後のふれあいの場面です。でも、親にはぐれたヒナはどうなったんでしょう。

 芳子さんは、いよいよ結婚だし、赤い着物も用意したみたいです。結婚前のはなやかさが漂っています。

 これで終わったら、タイトルが鳴いてしまう。きっとトリのところに話は戻ってくるはずですよ。

 父達の来るのをその辺まで出迎えたく、芳子はぼんやり坐っていられないので庭へ出た。掌を開いてみたが濡れるほどの雨ではない。裾(すそ)をからげて、小さい木のあいだや熊笹(くまざさ)のなかを丹念にさがしていると、萩(はぎ)の下の草のなかに雛鳥がいた。

 芳子は胸をどきどきさせて近づいたが、雛はじっと首をすくめたままだった。たやすくつかまえた。元気がなくなっているらしい。あたりを見廻したが母鳥はいない。
 芳子は家へ走りこんで、
「お祖母さん、雛鳥がいたわ、つかまえたわ。弱ってるわ。」
「おや、そうかい。水を飲ませてごらん。」
 祖母は落ちついていた。
 茶碗に水を汲(く)んで嘴(くちばし)を入れてやると、小さいのどをふくらませて可愛く飲んだ。それで元気を取りもどしたのか、
「キキキ、キキキ......。」と鳴いた。

 おばあちゃん、何でも知ってますね。芳子さんもそれがまるで自分のこれから見たいな気持ちでヒナを何とかしたくなっていますよ。

 もちろん、探していたオヤはやってきますよ。そうじゃなきゃ!



 母鳥が聞きつけたらしく飛んで来ると、電線に止まって鳴いた。雛は芳子の手のなかで身もだえしながら、
「キキキ......。」と呼んだ。
「ああ、よかったね。早くお母さんに返しておやり。」と祖母が言った。
 芳子は庭へ出た。母鳥は電線を飛び立ったが、向こうの桜の梢(こずえ)からじっと芳子の方を見ていた。

 芳子は掌のなかの雛を見せるように上げてから、そっと地上においた。
 ガラス戸の陰から様子を見ていると、空を仰いで悲しげに鳴く雛鳥の声を頼りに母鳥が次第に近づいて来た。すぐ傍らの松の下枝まで母鳥が下りて来た時、雛は飛び立たんばかりに羽ばたきして、その勢いでよろよろと前に歩くと、ひっくりかえりそうに倒れながら、鳴き立てた。
 それでも母鳥は用心深くなかなか地上におり立たない。
 まもなくしかし、すっと一直線に雛の傍(そば)へ来た。雛のよろこびようはない。首を振り振り、ひろげた羽をふるわせて、甘えるようである。母鳥は餌(えさ)をやるらしい。
 芳子は父や義理の母二人が早く来てくれて、これを見せたいものと思った。
 

 さあ、芳子さんとおばあちゃんのチーム力によって、親にはぐれたヒナは息を吹き返しました。親子はどこかもう一度生活を立て直せるところに移動して、ヒナが大きくなるまで、あとしばらくは一緒に暮らすでしょう。

 トリだって、トリだからこそ、ものすごくシンプルで、真っすぐで、子育てに一生懸命です。人間は、迷い、悩み、素直じゃなく、お互いの関係の中で浮遊しつつ、それぞれがそれぞれの場所で生きていくようです。

 おばあちゃんのたくましいこと。何でも知っていること。おばあちゃんのおかげで、芳子さんは安心して結婚に進めそうです。弟も、お祖母ちゃんのことを思ったら、いつまでも父たちに反発もしていられないでしょう。

 お父さんたちは、トリの親子を見ても、何とも思わないはずだけど、それでも芳子さんは話してあげたいなと思った。

 そんな小説でした。川端さん、やりますね。あと少しだけど、何十年ぶりかで全部読めそうなんだけど、ものすごく時間かかってますね。

 川端さんの「かけす」でした!

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