国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




■はじめに
 国立大学に勤める一般職員であれば教員と事務職員の区別なく、この4月に「共済積立貯金4月募集のご案内」のパンフレットを受け取ったことでしょう。今回はこの「共済積立貯金」に関するエントリーです。
 相変わらずマイナーすぎるネタなんですが、共済積立貯金は利用している職員さんが少ない訳でもなく、文部科学省共済組合全体で5万人が2300億円を貯金しています。この金額は運営費交付金で言うと東京大学の2.5年分、鹿屋体育大学(運営費交付金が最も少ない国立大学)の164年分、この貯金を今すぐ凍結して運営費交付金の穴埋めに使うと全国立大学の運営費交付金を毎年前年度比で1%削減し続けても向こう24年間は大丈夫と、ちょっとしたものです。
 そんな巨額な資産の割に、個々の利用者に対するサービスというか利用案内がいまいち充実してない気がしたので今回は各種手続きと書類の記入例をまとめてみました。手続きも書類も文部科学省共済組合に限定されていますが、多分他の国家公務員共済組合にも通じると思います。

■「共済積立貯金」にはいつ加入することができるのか
 銀行の口座なら窓口に出向けばその日の内に開設することができるでしょうが、共済積立貯金は年に2回、4月と10月のタイミングでしか加入することができません。平成22年度の4月募集のパンフレットには募集期間が「平成22年4月1日(木)~4月23日(金)」と記載されていますが、実際にはもう少し早めに提出することを求められると思います。特に総合大学等では「文部科学省共済組合に提出するために本部が一度取りまとめ、さらに本部に提出するために部局が一度取りまとめ」と事務上の手間が多いために、個々の組合員に配布する通知文書にはパンフレットの締め切りよりも早く提出するように指示していると思います。
 加入方法はごく簡単で、「貯金加入申込書」に必要事項を記入して担当係に提出するだけです。「貯金加入申込書」はパンフレット等と一緒に配布される訳ではないので、事務室まで行って担当の職員さんからもらうことになります。記入する内容もさほど難しくありませんが、唯一ややこしいのが「非課税の適用の有無」の項目です。これは「マル優」と通称されている、所得税法第十条が定める少額貯蓄非課税制度を利用するかしないかの自己申告の欄です。詳しくはリンク先を参照するのが良いかと思いますが、結論から言うとこの制度の対象者は障害者手帳交付者や遺族年金受給者等で、積立金の利子が少し増える(控除される税金が免除される)効果があります。ちなみに、今のところこれを利用している組合員には出会ったことがありません。
 加入に際しては原則として事務側からの「募集しますので希望する人は申請してください」といった連絡を待つことととなりますので、加入を考えている組合員は4月と10月に募集があることを念頭に、時期になったらパンフレットが配られるのを待っていてください。不安なら担当係に連絡して既に配布されていないか、例年はいつ頃配布されていたかを確認するのもアリでしょう。加入の申し込みに限らず、共済関係は書類の締め切りに対してやたら厳しいので、連絡を受けたら早目々々に書類を提出してください。

<記入例:様式第1号 貯金加入申込書>

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■「共済積立貯金」の積立額の変更はいつできるのか
 一度加入してしまえば積立額の変更は臨機応変に対応してくれそうなものですが、実は積立額の変更も年に2回、加入の時期と同じ4月と10月にしかできません。
 積立額を変更する際は「積立金変更申込書」を担当係に提出します。この用紙も事務室まで行って担当の職員さんにもらってください。「変更する時期」は4月と10月なのですが、「変更が反映される」のは6月と12月からだということに注意してください。半期毎のタイミングで提出して、ボーナスのタイミングで反映されると把握していれば大丈夫です。
 また、積立金変更申込書は一般職員から「共済に加入する非常勤職員」などになる場合にも提出が必要です。「共済に加入する非常勤職員」とはいわゆる特別教員とか特認教員、その他では再雇用職員等であり、これらの職員は「期末・勤勉手当をもらわない共済組合員」であるため、身分が切り替わる4月に期末・勤勉手当からの控除額をこの申込書によって0円にしておく必要があるからです。この手続きに関しては恐らく事務側から連絡があるかと思いますが、定年が近い組合員や職種を変える教員の方は知っておいて損はないと思います。

<記入例:様式第4号 積立金変更申込書>

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■「共済積立貯金」はいつおろせるのか
 共済積立貯金ではお金をおろすことを「払いもどし」と表現します。払いもどしに関しては毎月することができます(加入後6ヶ月を除く)。払いもどしを希望する場合は「積立貯金(払いもどし・解約)請求書」に必要事項を記入して担当係まで提出してください。この用紙もやっぱり事務室にあります。
 たまに共済積立貯金が給与と一緒に支給されると勘違いされている組合員がいますが、共済積立貯金は給与とは別個に、毎月25日に支給されます。「払い戻し請求書」をいつまでに提出すればよいかは各国立大学の各部局により異なりますので、用紙をもらいに事務室に行った際に職員さんに尋ねるのが良いでしょう。ちなみに大学本部から共済組合への提出期限が「支給する日の前月の25日」なので、目安としては大体毎月の20日から24日くらいまでが期限になっていると思います。いずれにしろ銀行の口座等と違って「お金をおろす日の1ヶ月以上まえには請求をしなければならない」ことには注意が必要です。給料日1週間前に書類を提出して「給料日に出してね」という組合員さんがたまにいるのですが、こういう場合は末端事務職員が努力してどうなるものではないので、諦めてあと1ヶ月ちょっとばかり待ってください。あと、期限ぎりぎりに書類を提出して「登録印が一致せず」ではね返されて、泣く泣くもう1ヶ月待たされる組合員さんもたまにいます。提出する際は登録印をしっかり確認するか、分からない場合は期限に余裕を持って提出するのが良いかと思います。

<記入例:様式第9号 積立貯金(払いもどし・解約)請求書>

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■「共済積立貯金」はいつ解約できるのか
 「解約」は「払いもどし」と同じ事務手続きになります。「積立貯金(払いもどし・解約)請求書」を使って解約する月の前月25日くらいまでに提出してもらいます。「解約」すると積み立てている貯金の全額が払いもどされます。

■改姓・登録印変更・口座変更・引越しの際の手続き
 「(氏名・印鑑・受取口座・住所)変更届出書」を使ってこれらの項目を変更することが可能です。また、登録印を紛失した場合にもこの書類を使って新しい印鑑を登録することができます。払いもどしが急遽必要だけど登録印がどうしても見つからない場合などに、払いもどし請求書と同時に手元にある印鑑を再登録し、その印鑑で払いもどしの請求を行うといった裏技も存在します。

<記入例:様式第12号 (氏名・印鑑・受取口座・住所)変更届出書>

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■「共済積立貯金」を一時停止させることは可能か
 結論から言って可能です。滅多に使わない様式ですが「積立て(中断・復活)申込書」という書類があります。使用するのは育児休業を取る場合や、海外に長い間研究に出かける場合などです。

<記入例:様式第5号 積立て(中断・復活)申込書>

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■「共済積立貯金」の利率や運営状況
 共済積立貯金の利率は平成22年度の募集時において半年複利で年0.5%、税金を引いた後でも年0.4%とこのご時世においてはかなり高い利率です。毎月3万円、期末・勤勉手当で10万円を貯金すれば5年で3万円の利子が付きます。
 共済積立貯金単独で経理を行っている訳ではないようですが、共済積立貯金・団体積立終身保険事業・グループ保険事業・団体障害保険事業の全ての資産運用で平成20年度は年間34億円の利益を上げています。
 自分は経済学とか財務関係がひどく弱いので運営状況などであまり詳しいことは分かりませんが、要するに組合員の預けたお金をその道のプロ集団が国債やら政府保証債やらに投資して利益を作り出している、ということなのでしょう。公務員てホント「自分のお金」のことになるとやたら本気を出すよなぁ…と思わざるを得ません。

■終わりに
 自分は共済積立貯金の窓口事務をしているので、今回のエントリーも提出書類などの説明が多くなりました。運営状況等は最後に少し触れただけでしたが、できればこのあたりのことをもう少し詳しく調べてみたかったです。もっとも、このあたりの情報を読む力が無く、またどうやって調べればよいのかも分からないのが個人的にかなりネックなところです。大学時代にもう少し勉強しておけば良かったなと思うのもこんな時です。あるいは財務関係の部署に異動させてくれたらもう少しこの手の内容に詳しくなれるのでしょうか。仕事って案外奥が深いものですね。

コメント ( 11 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
Unknown (GW)
2010-05-04 18:26:16
いつも楽しく拝見しております。

財形貯蓄と共済積立貯金は別モノですか?
私は6月に申し込みがあるもので貯蓄していこうと
最近心に決めた(あまりにお金が貯まらないのでそろそろヤバいと感じたので・・・)のですが、それって財形貯蓄でしたか?
 
 
 
Re:GWさん (管理人)
2010-05-04 21:06:56
当ブログをご閲覧いただきありがとうございます。

財形貯蓄と共済積立貯金は全くの別物です。しかし「貯蓄して増やす」という方向性と、「給与から天引きされる」点が同じなので混同しやすいと思います。

共済積立貯金は国家公務員共済組合が管轄しているのに対し、いわゆる「財形貯蓄」とは一般の銀行が管轄しています。資産運用も共済積立貯金は国家公務員共済組合に一元化されていますが、「財形貯蓄」は各国立大学が別個に利用する銀行を選んでいます。また、共済積立貯金が共済組合員しか利用できないのに対し、「財形貯蓄」は民間企業でも銀行の制度を利用して行うことが可能ですし、実際に多く利用されています。さらに事務分掌から見ても、共済積立貯金が「保険証」とか「共済年金」などと同じくいわゆる「共済」の業務であるのに対し、財形貯蓄は「健康診断」などの「福利厚生」の一環として行われています。

手続きや用紙なども全く違うのに共通点も多いので、個人的にはどちらか一方を選択したほうが「あれ?あの手続きはどっちだったかな?」とかいうことにならないので良いかと思います。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2010-05-22 22:59:42
いつも楽しく拝見しております。

給料(年収)のことなどのデータは非常に現実的で参考になります。
そこで是非たずねたいことがあるのですが”退職金”というものはどのくらいになるものなのでしょうか?
こちらも具体的な計算式みたいなのがあるのでしょうか?記事としてまとめて頂けるとうれしいです。
 
 
 
Re:Unknownさん (管理人)
2010-05-24 20:28:30
当ブログをご閲覧いただきありがとうございます。

退職金に関しては何度かご要望をいただいているのですが、自分のいる大学では本部の極々一部の職員さんしか関われないため、記事にまとめることができていません。

金額的には、一般事務職員で大体2000万円を少し越えるくらいが相場だったかと思います。基本的な計算式などは規程にありますが、細則や通知などが多いため、自分でも把握しきれていない部分が多いです。

いつかは記事にするかもしれませんが、長い目でみてやってください。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2010-05-31 01:30:25
私は修士卒業後、試験ではなく公募採用という形で4月に国立大学に技術職員に採用されました。

この日記を拝見させて頂き知ったのですが、普通修士卒業後ならば1級31号俸ということですが、私は1級21号俸しかありませんでした。
これは、上記のように公募採用だからでしょうか?それとも技術職員だからでしょうか?それともないと思うのですが大学側の間違いでしょうか?

ちなみに事務の同期のかたに聞くとやはり同条件では1級31号俸だそうです。技術の同期はいません。

採用されたばかりで自分の給与がすくないというクレームをつけに行くのは心苦しいので、御存知のかたは御教えねがいます。
 
 
 
Re:Unknownさん (管理人)
2010-05-31 22:55:34
当ブログをご閲覧いただきありがとうございます。

1級31号俸ではない理由は、恐らく「公募採用だから」だと思われます。

このブログで言う所の「初任給」は、「国立大学法人等職員採用統一試験」を通って採用された、無期雇用の常勤職員が最初にもらう給与月額を指しています。

公募採用とあるので、恐らく有期雇用の非常勤職員として採用されたのではないでしょうか(まれに無期雇用の非常勤職員さんもいますが)。その場合の初任給は大学毎によって違いますが、1級21号俸というのはあり得る数字だと思います。採用されたときに渡された「労働条件通知書」に、「その他の項目については○○大学パート職員就業規則による」のような文言があると思いますので、それで常勤職員として採用されたのか、非常勤職員として採用されたのかを確認してみてください。

また、公募採用の場合は労働条件の提示があらかじめ行われていたと思いますので、労働契約締結後に給与の額でクレームをつけるのは、法律的にもかなり厳しいものがあるかと思います。
 
 
 
初任給 (Unknown)
2010-05-31 23:39:48
お早いお返事ありがとうございます。

情報が少なくてすみません。
間違いなく正職員であり、無期雇用の常勤職員としての採用です。もちろん正職員の入社式にもでましたし、試験採用の方と共に簡単な研修にも参加しています。
大学内にあるセンターの管理・研究者の支援などが主な仕事です。

労働条件に関しても、公募の書類には、
・本学給与規定に基づき年齢、職歴により決定(国家公務員に準拠)

とありました。
採用方法としては、書類選考、個人面接でした。

給与担当の方に聞いてみようとは思っているのですが、同条件で採用された方や給与関係の方などおられましたら情報をお願いします。
 
 
 
初任給ひょっとして (fufu)
2011-10-26 23:41:21
興味深く拝見させて頂いております。

さて、もう見られていないかもしれませんが、初任給 (Unknown)さんの採用の形態により格付けが異なっているのかもしれません。

初任給決定などについては、正規試験による採用者(要は公務員試験を受けた者)を前提にしており、特例として、「正規試験による採用が困難な場合にこれに代わる同等の試験を用いて採用する」というのがあります。これに該当すれば、正規試験と同じ初任給の計算になりますが、通常、この様な例というのは、医師、歯科医師、原子力関係、余人を持って代え難い等の特殊な場合のみです(教員系の場合もこれに該当)。

そうでない場合、正規試験以外の採用、つまりは面接やその他などでの採用の場合は、1級1号に経験年数(学歴も)などを積み上げていくと思います。

初任給 (Unknown)さんの例で言うと、単純に言えば、(大学4年+修士2年)×4=24号俸を加算して、その後で昇給抑制分を数号俸引けば、おおむねそのような号俸になる可能性があります。

いずれにしても、あくまでも仮想の話ですので、給与決定実務を担当されている人にどのような計算をされたか尋ねるのが一番のように思います。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2012-07-25 20:57:11
はじめまして。共済積立について調べていて、このブログを見つけました。
とても分かりやすかったのですが、ひとつ質問です。
先月、6月13日に払い戻しの請求書を事務に提出しました。翌月25日が振り込みだと聞いていましたので口座を確認したところ振込みがありませんでした。口座はゆうちょではありません。積立は昨年の12月からしています。積立開始から6ヶ月を過ぎているので払い戻しは可能ということでしたが、なぜ振り込まれていないのか、教えていただけませんでしょうか?
 
 
 
横から失礼 (FLYING_TO-JO-)
2012-07-29 16:39:05
>Unknownさんへ
 お勤めの担当部署に尋ねるのが確実ですが,積立申請をした際に登録した口座を勘違いしているということはありませんか?

 ご存知の通り国立大学の場合,給与が振り込まれる口座,旅費や立替払いが振り込まれる口座,そして積立払い戻し口座を別々に登録します。
(給与は人事課,旅費等は経理課,積立は共済組合と担当部署が違いますので)

 全部同じ口座を登録すれば間違いはありませんが,登録口座を分けていると,本人が忘れてしまうということがあります。本人であれば教えてもらえるはずですので,登録口座の確認をしてみてはいかがでしょうか。
 
 
 
Unknown (職業訓練指導員)
2016-02-27 12:43:54
 法務省による刑務所・少年院の運営などの矯正業務について、フルコストが2766億300万円、収容者1人の1日当たりのコストが1万1734円に上るものと

 文科省の予算に、1人当たり数百円でも回して頂けたら、明日の日本も明るくなると思います。
 
 
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