歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

鋳造ジャーナル11月号が届きました

2006-12-12 21:35:32 | ものづくり・素形材
鋳造ジャーナル11月号が届きました。
注目したのは、砂型に樹脂のバインダーを使わずに氷を使う技術を紹介した株式会社前川製作所の論文「急速凍結鋳型を用いた鋳造システムの開発」です。
鉄鋳物を鋳造する際には砂型を使いますが、砂だけでは崩れてしまうので、昔は粘土、今はフラン樹脂という石油化学製品を使って砂型を固めています。
しかし砂型に溶けた鉄が流し込まれた際、フラン樹脂が気化してガスが発生するのですが、その臭いは人に好かれる類のものではありません。また、フラン樹脂で固めた砂型は頑丈であるため(だから良質な鋳物を作るのに適しているのですが)、中の製品を取り出すために砂型をばらし、さらに製品に焼き付いた砂を落とす作業はなかなか大変です。労力がかかるだけでなく、粉塵も舞い上がるため現場の作業環境にもよくありません。
前川製作所が開発した技術は、砂に水を混ぜ、これを凍らせて砂型を作ってしまうというものです。この凍結鋳型の技術は、もともと1970年頃にイギリスで考案されたものですが、オリジナルが液体窒素を使うのに対し、前川製作所の技術は空気を媒体とする冷凍機を用いて凍結させるというもので、コストダウンを実現しています。何しろバインダーは水ですから、有害なガスは発生しませんし、時間がたてば熱によって自ら砂型は崩壊してくれるので型ばらしの手間が大きく省けます。3Kの鋳物工場の製造現場を一変させる、すごい技術だと思います。
しかし、1600度の溶けた鉄が流し込まれて、凍らせた鋳型がすぐに崩壊しないのかな、と思うのですが、そんなことはないようです。すでにこの技術はある鋳物メーカーですでに導入され、実際に稼働しているとのことなので、機会があれば視察に行ってみようと思います。

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6 コメント

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はじめまして (mycom)
2006-12-24 09:56:11
はじめまして、ご紹介頂いた論文の著者のものです。
この度は、論文をご紹介いただきありがとう
ございました。
ブログを拝見させていただきましたが、非常に
多岐にわたる情報とその内容の分かりやすさに
興味を持たせていただきました。
この冷凍鋳型もより多く世の中にだせるよう
日々努力しております。
是非、あなた様のような方にこの鋳造法を
視察していただき、
感想をいただければと思います。
私も、一歳半の息子がおり、同世代の方だと
思います。ざっくばらんな意見交換などを
させていただければと思いますので、
もしよろしければ、メールをいただければと思います。 whnpw089@yahoo.co.jp
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コメントありがとうございます (kunihiko_ouchi)
2006-12-28 00:13:32
mycomさん、コメントありがとうございます。
著者の方からコメントを頂けて光栄です。是非、凍結鋳型の現場を拝見したいと思いますので、よろしくお願いいたします。鋳物についてはどうしてもローテクというイメージが付いて回るのですが、こうした素晴らしい技術開発が行われているのだ、ということを微力ながら多くの人に知らしめていきたいと思います。
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百聞は一見に如かず (鋳物工場に住むペンギン)
2007-01-08 16:32:01
凍結鋳造のプラント導入した大阪の鋳物屋です。
とにかく自慢するわけではありませんが、鋳物工場は『3K職場』の代表。
そんな工場から粉塵・振動・騒音・酷熱作業が激減する画期的鋳造プロセスです。
鋳物に絶対タブーなのが〝水っ気〟
凍っているとは言え、水分たっぷりの鋳型に溶湯を流し込んで〝キライ〟や〝欠陥〟は発生しないのか?
とにかく、このプロセスは正しく『百聞は一見に如かず』です。
私も前川製作所さんでのテスト鋳込みを見るまでは、信じていませんでした。会社に戻って報告をしても、上司も職人さんも、そして大学の先生も信じてくれませんでしたので、とにかく鋳込み立会いに色々な人を連れて行き、意見・感想を聞き、検討の結果、日本初・世界初での採用(チャレンジ)に至りました。
キャッチフレーズは『ペンギンの住める鋳物屋』です。
まだまだ問題も多く抱えている段階ではありますが、圧倒的に【環境】と【ランニングコスト】には有利なプロセスです。是非大阪に来られる時にはお立ち寄りを。
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ぜひ訪問させてください (kunihiko_ouchi)
2007-01-08 18:42:40
鋳物工場に住むペンギンさん、コメントありがとうございます。
私も正直言って論文を読んで、ほんとかな?と思った1人です。ぜひ見学させてください。都合をつけて大阪まで出張しますので。
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鍛造用語ビギナー (マグノリア)
2007-01-15 02:07:22
すみません、キライとはどういう意味か教えてもらえたらうれしいです。
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調べました (kunihiko_ouchi)
2007-01-16 00:17:36
マグノリアさん、はじめまして。実は恥ずかしながら私も知らない言葉だったので、調べてみました。
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「きらい」(吹かれ)とは、鋳物の表面に発生するブローホールに類する欠陥の1つ。
砂型の表面に水分があると、溶湯と接触したときに水分が蒸発して気体となり、鋳物表面に空洞欠陥を形成する。
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出所:http://www.kodo.javada.or.jp/kodo00/tech/t01/t01_s1.htm

だそうです。
砂型を固めるのに氷を使うわけですから、鋳物工場に住むペンギンさんがコメントされているように、キライができるのではないか、と想像するのは無理ないですね。
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