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『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実』

2012年01月19日 | ドキドキした映画

                                     (G)
2011年・日本(140分)
               
監修:半藤一利
監督:成島出
脚本:長谷川康夫、飯田健三郎 
音楽:岩代太郎
出演:役所広司、玉木宏、柄本明、柳葉敏郎、阿部寛、吉田栄作、椎名桔平、
   益岡徹、袴田吉彦、五十嵐隼士、坂東三津五郎、原田美枝子、瀬戸朝香、
   田中麗奈、伊武雅刀、宮本信子、香川照之 ほか

<ストーリー>
昭和14年夏。
日独伊三国軍事同盟をめぐり、締結を強く主張する陸軍だけではなく、
国民の大半も同盟に希望を見いだしていた。
そんな中、海軍次官の山本五十六(役所広司)、海軍大臣の米内光政(柄本明)、
軍務局長の井上成美(柳葉敏郎)は、
陸軍の圧力や世論にも信念を曲げることなく同盟に反対の立場をとり続ける。
しかし、第2次世界大戦が勃発し……。

 

鑑賞日:2012年1月11日 (新百合ヶ丘)


まずは余談から。

「うっ!?」
客席に入った瞬間、ぼくは異変を感じた。

平日の昼間、しかもレディース・デーの水曜日。
こんな時間に、
こんなにも漢字が多く堅苦しいタイトルの戦争映画を観る人なんて、
そんなにいるはずがない。
きっと客席は空いていることだろう。
そう思い、予告編の上映開5分前に窓口でチケットを購入。
案の定、座席も場内の中央の席が難なく取れたので、
「やっぱり空いてるんだ。」と、安心してトイレに向かい、
軽く用を足した後、
予告編の始まる時間丁度に客席へ。
ところが!!

客席のほとんどは、すでに埋まっていた。
どうやら、中央の席が空いていたのは、たまたまだったようだ。
まぁ、込み具合いの当ては外れたが、問題は別にあった。
場内に漂っている臭いだ。
「いったい、なんだ?」
ざっと客席を見渡した瞬間、答えは明白となった。
なんと、観客のほとんどが70歳前後のジイサマたち。
中には80歳のジイサマもいたかもしれない。
大人数のジイサマたちがひしめき合えば、
その臭いが鼻を刺激するのも当たり前。
誰が悪いという訳でもないので、
仕方なく、ぼくはポケットからマスクを取り出した。
臭いに関しては、それで対処することができたのだが、
結果として最悪のジイサマが少し離れた席に座っていた。

そのジイサマは二人連れで来ていて、予告編が上映されている時からずっと喋りっ放しだった。
まぁ、本編が始まれば、さすがに静かにするだろうと思い、注意は控えた。
それに、離れた席のぼくよりも、
そのジイサマの周りの人が注意するだろうとタカをくくっていた。

だが、この読みは全て外れた。
ジイサマは、本編上映開始後も喋り続け、
エンドロールが終わるまで、ず~っと、ず~っと、喋り続けていた。
しかも、漏れ聞こえてくるは、太平洋戦史の解説だ。
かなり戦史に通じているらしく、連れのジイサマにひたすら説明を続け、
何とルーズベルト大統領の開戦演説のシーンでは、
英語のセリフまで先に諳んじてみせ、
「な、言った通りだろ。」と連れのジイサマに説明。
さらに、
飛龍(空母)の艦上で、
司令官・山口多聞に専任参謀・伊藤清六が「何か、形見を。」と言うシーンでも、
ジイサマが先に「何か、形見を。」と、口走る始末。

「頼むから黙っててくれ。」と、心で念じるも願いかなわず。
やむなく身を乗り出すようにして、何度かジイサマたちに静かにするよう合図を送るが通じず。

しかも、調子に乗ったジイサマは、
東京日報主幹・宗像景清(香川照之)のもとに、
出征の挨拶に訪れた記者・真藤利一(玉木宏)との別れのシーンで、
あろうことか、宗像のセリフを代弁するかのように
「死ぬなよ。」と、言い放った。
だが、そんなセリフは宗像の口からは出てこない。
出てくるはずがないことは、シーンを見ていれば分かるはずなのに、
勝手にそう言うと思い込んでいるジイサマは、
再び「死ぬなよ。」と口にした。
もちろん、宗像は最後までその言葉を言わなかったし、
仮にこのシーンで言ったとしたら、作品が陳腐になってしまう。
それなのに、それなのに、
別れの挨拶を終え、部屋を出ていく玉木の背中に、
ジイサマは三度セリフを繰り返した、「死ぬなよ!」と。

ここまでやられると、怒りを通り越して、もう笑うしかない。
結局、小椋佳が歌うエンディング・テーマが流れる間も、
ジイサマは喋っていた。

それにしても、なぜ周囲の客は一度も注意をしなかったのだろう?
興が削がれはしなかったのだろうか?
不思議だ。

そんなわけで、この作品に集中するのは非常に困難な状況ではあったけれど、
途中から片耳を塞ぐようにして最後まで観続けた。

対米開戦から70年。
今なぜ、この映画が制作されたのか。
この作品を通じて何を伝えようとしたのか?
それは非常に分かりやすかった。
そして何より、今の日本が、開戦前の当時と非常に似ているという描き方は、説得力があった。
大勢が三国同盟に賛成し、
アメリカとの戦争も辞さないという時代の流れの中で、
冷静に判断し、懸命に抗い、
結局本意なき状況に追い込まれても尚、責務を全うし、
最後まで活路を見出そうとし続けた山本五十六の姿は、
多くの示唆に富んでいた。

数多の情報が氾濫する今の時代だからこそ、
ひとりひとりが、よく見て、よく聞いて、冷静に判断しなければならない。
同じ轍を踏まない
ためにも・・・。
いろいろと考えさせられる映画でした。


ゼロ戦に乗ってる気になれる度:★★★★★★★★★★★★
テーマの分かりやすさ度:★★★★★★★★★★★★★★★★
役所広司の内から滲み出る演技力:★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
阿部ちゃんに惚れてしまいそうになる度:★★★★★★★★★★★★
若い世代こそ観るべき度:★★★★★★★★★★★★★★★

鑑賞後の満足度:★★★★


それにしても、あのジイサマめ・・・。




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