コメちゃんの悪性リンパ腫闘病日記

悪性リンパ腫になってからの生活の様子と病気についての考え方を書いていきます。

癌治療についての考察

2017-06-27 08:53:51 | 日記
そろそろ癌治療についての考えをまとめていこうと思う。
今回はまず癌というものがどういうものかを考えてみる。
生命は単細胞生物から我々のような多細胞生物に進化してきたのだが
多細胞生物は人間で言えば細胞1個の受精卵から60兆の細胞で出来た個体を形成するまでに
数限りない細胞分裂を行う必要がある。
その細胞分裂において個体を形成、維持していくための設計図であるDNAを
正確にコピーしなければならない。
中には細胞分裂の際に正確にコピーできない場合もあり(一億分の一の確率?らしい)
DNAの修復機構はあるものの
修復機構が及ばないほどDNA損傷が大きい場合には
身体の排除機構によりアポトーシス(自然死)させられ排除される。
その排除機構から逃れた細胞(DNA損傷が残ったままの細胞)が癌細胞となる。
ヒトは外部環境から自然放射線や化学物質により
常にDNAが損傷される危険の中で生活しており
内部環境では好気呼吸の電子伝達系で発生する活性酸素により
DNAが損傷しやすい環境にいることになる。
それ故にDNA修復が追い付かず
癌細胞は一日5000個ほどが生まれているとされているが
そういった身体にとって役に立たない(害を成す)細胞は
通常では免疫機構によって排除される。
正常細胞では自己を表す標識(MHC分子)が正常に発現しているが
腫瘍細胞などの異常細胞では
MHC分子の発現が減少または消失している。
例えば異常細胞を攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞は
MHCクラス1分子の発現している細胞は自己とみなして攻撃しないが
MHCクラス1分子の発現が減少または消失している癌細胞は
役に立たなくなった細胞(非自己)とみなして攻撃する。
また癌細胞では癌抗原をMHCクラスⅠ分子に結合させて細胞表面に出している。
これが癌細胞であるという標識になるが
抗原提示細胞(樹状細胞など)やヘルパーT細胞によって活性化したキラーT細胞は
この標識をTCR(T細胞受容体)で認識して
「パーフォリン・グランザイムまたはFasリガンド」(説明は省きます)によって
癌細胞をアポトーシスさせる。
このように癌細胞ができたとしても
通常は色々な免疫細胞によって排除されるが
癌細胞のできる数が多ければ当然免疫細胞によって排除しきれなくなります。
また癌細胞は免疫細胞からの攻撃を逃れる方法もいくつか持っています。
一つは細胞表面に出している癌抗原の一部を切り離して
癌抗原を攻撃の目印にしている免疫細胞に認識されにくくする方法です。
他には癌細胞から発現しているPD-L1を
T細胞上にあるPD-1に結合させることで
T細胞を弱らせ、攻撃をブロックする方法も持っています。
またTGF-β(トランスフォーミング増殖因子ベータ)を産生することによって
Th1細胞(ヘルパーT1細胞)およびCTL(細胞傷害性T細胞)の活性抑制も行います。
他にも免疫からは外れますが
癌細胞は放射線治療や抗がん剤などの酸化ストレスに対して
一酸化炭素(CO)を生成し細胞を死に難くすることが知られています。
これは一酸化炭素(CO)が臓器における血流の制御や
炎症を抑える作用を持っているからです。
一酸化炭素(CO)は取り込んだブドウ糖を
解糖系から一時的にペントースリン酸回路へう回させます。
核酸合成に重要な経路であるペントースリン酸回路へ一度う回して
後で解糖系の下流に戻ることにより
増殖に必要な物質を合成しつつATP合成量も維持するという
細胞増殖に有利なように巧みに代謝経路を切り替えています。
またペントースリン酸回路は核酸の合成に必要なだけでなく
NADPHの合成経路でもあります。
NADPHは、細胞内に存在するグルタチオンという解毒物質を還元することにより
還元型グルタチオン量が増加するので
その還元型グルタチオンを使って
放射線治療や抗がん剤などの酸化ストレスに対して抵抗するのです。
こうして癌は抗がん剤に耐性を持ち、効かなくなってきます。
これまでに述べたことで
癌がどのようなものか分かってきました。
身体が細胞分裂を行っている中で細胞分裂が上手くいかない細胞が出来てきます。
通常は排除機構により排除されますが
排除機構で取り除けなかったものが癌細胞になります。
癌細胞がある程度の大きさになってしまうと
細胞増殖に有利なように代謝経路を切り替えてしまいます。
それにより酸化ストレスにも抵抗するようになります。
このように癌はほおっておくと後になるほど対処に困るようになる
本当に悪賢い厄介者なのです。
今回は癌がどのようなものかを考えてみました。
次回は予防や治療について考えてみます。