こっちゃんポイント
鑑賞環境 |
★★★★
映画館 |
上映時間 |
133 分 |
製作国 |
アメリカ |
公開情報 |
ムービーアイ=松竹 |
初公開年月 |
2005/05/28 |
ジャンル |
ドラマ/スポーツ |
「自分を守れ」が信条の老トレーナー、フランキー(クリント・イーストウッド)は、23年来の付き合いとなる雑用係のスクラップ(モーガン・フリーマン)と、昔ながらのジム、ヒット・ピットでボクサーを育成している。有望株のウィリーは、教え子を大事に思う余りタイトル戦を先延ばしにするフランキーにしびれを切らし、別のマネージャーの下へと去ってゆく。そんな折、フランキーの前に現れた女性ボクサー、マギー(ヒラリー・スワンク)。マギーはフランキーの指導を乞うが、昔気質のフランキーは女のボクサーを認めようとしない。だが連日ジムに通い詰めるマギーの一本気さに、やがてフランキーの心も揺り動かされ始めるのだった・・・・・。
(goo映画より抜粋)
正直、この映画を観るのが怖かった。漠然とした、例えようのない怖さが観る前から付き纏っていました。
公開後、ちょっと日数が経った事もあり、こっちゃん宅のご近所シネコンはついに一番小さなスクリーンの上映。そこで観ました。しかしこの映画の感想を書こうにも、パソコンのキーが重く感じるような・・・。とにかく”例えようの無い脱力感”に満たされているのでございます。
もう、この映画のレビューはあちこちで読むことが出来ますね。こっちゃんは、観るのが遅すぎたくらいです。皆さんのレビューはどれも大絶賛!いったい、どれほどの映画だったのでしょうか?こっちゃんは皆さんの感想の通りに感銘を受け、そして涙することが出来たのでしょうか?静かに物語は幕を開けます___。
ボクシングの映画は実に痛々しい。右、左と対戦相手に向けられていくパンチが、まるで観ているこちら側のハートにヒットするかのような感覚に捕らわれてしまいますからね。この作品もやはりそう。これは自分の選んだ道を信じてボクシングの道を突き進む女性マギーのお話です。
前半は、彼女のサクセス・ストーリー的な展開。
「オンナは取らない。他所へ行け。」と言い捨てるフランキーの言葉に尻込みせずジムに通い続けるマギー。レストランのウエイトレスとして働く彼女は、客が残したステーキを自宅で口にするほどの貧乏生活。彼女にとってはボクシングこそがただ一つの目標であり、また支えでした。
フランキーのもとで勝利を勝ち取り賞金を手にするようになった彼女は、そのほとんどを貯金に回し、やがて離れて暮らす母親と妹のために一軒の家を買います。しかし驚くのはこの時の母親の態度ですね。もはや肉親とは思えません!どんな時もマギーを見守るクリント・イーストウッドの優しい眼差しがとても対照的に映ります。
後半は、この二人の愛がテーマの中心となって進んで行きます。
いつも静かに優く流れてくるBGMと飾り気のない演出。ヒラリー、モーガン、イーストウッドの演技だけがクッキリと浮き上がって見えます。三人がそれぞれに語り合うシーンだけでも、もう十分に引き込まれてしまうほどですからね。
モーガン・フリーマンの名前どおりのスクラップ人生を感じさせる低音の声。マットに叩きつけられ声まで磨り減っってしまったかのようなクリント・イーストウッドのしゃがれ声。これだけでもう十分ですね。もう何も、いりましぇん!
もちろん代役ナシでこの演技に挑んだヒラリー・スワンクも素晴らしい。彼女が時折り見せる笑顔は言葉の10倍以上も伝わるものがありました。
このように、この映画は単にストーリー的にだけではなく、随所に見ごたえがある素晴らしい仕上がりを見せています。
しかしながら、ここまで感銘を受けながらも、あえてこの映画のもたらす結末には全く賛同は出来ません。これは色んな意味でキツイ終わりかたです。
『愛』あっての事とは理解できるも、「正しいか?」と言われればそうではない。もっとも、その場に直面した者だけが理解できるであろう苦しみと、その挙句に犯してしまった過ちであるということも分かりますが、これはこっちゃんが望んでいた結末とはまるで正反対。
決してこの作品を否定しているのではありません。イーストウッド作品も到達すべき境地に足を踏み入れてしまった凄さを、一方ではヒシヒシと感じました。
ただこれは、あくまで自分の中の感情的な問題。冒頭でお話した”例えようの無い脱力感”とはこのコトです。
とうとうこの作品に★★★★★五つ星をつけることが出来ませんでした。
この作品の本当の「評価」は、ご覧になった方の胸の中だけにあるのではないでしょうか?
《2006.07.09記事一部改訂》
【作品】 ミリオンダラー・ベイビー