恋しくて (1987)

こっちゃんポイント 鑑賞環境	★★★★ こっちゃんシアター
上映時間	95分
製作国	アメリカ
公開情報	劇場公開 (Ｐａｒ＝ＵＩＰ)
初公開年月	1987/06/
ジャンル	青春

男言葉を使い、 いつもドラム・スティックを持ち歩いているボーイッシュな女の子ワッツ（メアリー・スチュアート・マスターソン）は、 クラスの悪ガキも一目置く存在だ。彼女は幼なじみのキース（エリック・ストルツ）に片想いをしていたが、 キースはそんな彼女の気持ちには全く気づかず、 ワッツに恋の相談を持ちかけるほどハイスクールのマドンナ、 アマンダ（リー・トンプソン）に夢中だった。ある日、 キースは思い切ってアマンダをデートに誘う。（goo映画より抜粋）

 

８０’sには、８０年代の良さがある！この時代の爽やかなハイスクール四角関係映画。

期待通りのラストにホッと胸をなでおろしました。やっぱ、こうでなきゃ。８０年代は、良くも悪くもストレートさが売りのような気もしますが、こういう気持ちの良いラストはやっぱり許せちゃうんです。

ややダークな音楽で始まるオープニングは、無心にドラムスを叩くワッツ、自動車の整備をするキース、恋人とイチャつくアマンダの３人が交互にクローズアップ。この物語が何処へ行こうとしているかを、おぼろげに予感させます。その後、キースの家庭にカメラが入り、彼の家族の雰囲気が映し出されるのでした。

ガソリンスタンドでバイトをする高校生のキースは、１８歳だというのに、母からは「髪を切りなさい」、父からは「大学へ行け」、妹からは「変人」と言われる自称はみだし者。そんな彼の夢は絵の才能を生かし、美術の道へ進むコト。友達は男勝りのワッツのみ。こんな毎日を送る彼が、美しい女性アマンダに恋心を抱きます。でも、憧れの彼女には性格の悪い色男（ダン・エイクロイド似）のカレシが・・・・。そんな二人を恨めしそうに眺めつつ、彼女の顔を遠巻きに、図書館でシコシコ似顔絵をデッサンするしかありません。

そんな彼が、ついに思い切って彼女をデートに誘っちゃう辺りから、話は結構面白くなります。しかも、デートの申し込みを切り出すのが実にグッドタイミング！正に彼女が男の浮気心に腹を立てたその瞬間に呼び寄せる（笑）そして、あっさり「デートＯＫ！］もらっちゃうんだもんなぁ。そっから彼の舞い上がり生活がスタートするワケですよ。

でもね～、最初から見てるこっちゃんには、そんな彼の喜ぶ顔がツライのよ。え？何がってアンタ・・・・。だってキースの側にはいつも中の良い「彼女」がいるじゃない。そうそう、ワッツですよ。

気の毒なコトに彼女、めちゃくちゃボーイッシュな設定なんです。
　　①スカートははかない。
　　②モチロン髪はベリーショート。
　　③ブラジャーもつけない。（普段は）
　　④パンティは男物トランクス。
　　⑤ドラムのスティックは手放さない。
　　⑥ボロのクルマも全然平気。（ドアの色も違うし、窓ガラスもない！）

これじゃあ、「女」として見れって方が難しいよね。ボーイッシュ通り越して「男」だもん。でもココがミソなんですね～。この映画のテーマは、「内面を見ろ」ってコト。そこかしこに、そんな意味合いのセリフが散りばめられているんです。

クルマの整備をするキースに「ベンツの下に潜った気分は？」と聞くワッツ。彼は「下から見ればフォードと同じだ。」と答えます。ワルな感じのスキンヘッドの皮チョッキお兄さんの描いた女の絵はガイコツでした。「女も皮を剥げばコレだ。」とお兄さんは言います。舞い上がるキースの目を覚まさせようと語るワッツ。その時に出たキースの台詞。「表紙じゃ本は分からない。」

ね？これらは全部、「中身を見なきゃダメ！」ってことだったんだなぁって。

なのに・・・・ですヨ！当の主人公は、すっかりフォーリン・ラブしちゃってるもんだから、他人の言葉に耳を貸さない。周りを見る余裕が無くなっちゃってるんだもん。もっと目の前にいる女性に早く気がついてぇ～！って言いたくなる事請け合いです。オマケにアマンダのモト彼の【黒いワナ】も見え隠れ。さぁ、さぁ、キースは本当の『恋』にたどり着くことが出来るのでしょうか？それともボコボコになって終わりなのでしょうか？（笑）

終盤に向かうにつれて、切ない感じもドンドン高まって行きますヨ～。「キスの練習台」になると言ったワッツの気持ちは、悲しすぎるほどイジらしいですね。好きな人とキスしているのに、相手は自分以外の誰かを思っているのです。パーティの一夜の運転手を自ら買って出たのも、「キースが心配だから」の純粋な気持ちだったのでしょう。そんな彼女がアマンダに面と向かって「彼を傷つけんなよ！」って言い切った時には、「こっちゃん切ないメーター」の針がピークを振り切りました。

更に、この映画には、もう一つのテーマがあるようです。「息子であるお前のため」と言いながら、何でも自分の思い通りに道を決めようとする父に対して、キースが噛み付くシーンがあります。「ぼくを信頼して！」と叫ぶキースに、父親は「信頼にも限度がある！」と言い返します。その時の、キースの言葉。「信頼に限度があるの?!」

そうなんですよね。本当の意味での「信頼」には限度なんてないはずなんです。ワッツが、あれほどまでに自分の気持ちを押し殺し、キースの後押しをし、彼の側を離れなかったのも全部この「信頼」だったのかもしれませんね。ラストにはそれが形となって幕が下ります。

エンディングで流れる名曲「CAN'T HELP FALLING IN LOVE」が、アイリッシュ風にアレンジされてとても可愛らしかったな。他にも８０’ｓらしいロック・ポップ・ナンバーがそこらじゅうに流れてましたよ♪素敵な映画でした！

若かりし頃の、想像以上にカッコ良いエリック・ストルツを観て、ぜひ惚れちゃって下さい。リー・トンプソンも絶頂期の可愛さですよ。

でも、何よりラストで見せたメアリー・スチュアート・マスターソンの泣き顔。
ここを観る映画だったんですね。

《2006.07.25記事一部改訂》

 

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