――『セーキ』
この名前を知らない方がおかしいくらい、有名な人物。
若かりし頃は国中を放浪し、強者と剣を交わしては名を轟かせ、己の腕を上げていった。当時は今と違って選考会がなく、とにかく腕の立つものを入れていた。心機一転した王室直属騎士団にスカウトされて入団。それ以来の活躍は言うまでもなく、群を抜いていた。最近になって外されたと聞いて、てっきり年齢によるものだと思っていた。それが選考会に参加して目の前にいるわけだ。
「そろそろ、若手に譲ってもらいましょうか」
とはいえ、じいさんが言うように確かにまだ『現役』だ。全盛期よりかはスピードが落ちているが、サイフを抜き取る一連の動きは見えてなかった。だが、もしあれが全力に近いなら……。
「まだ、譲るわけにはいかんな。わしにもやり残したことがある」
じいさんの戦い方は分かっている。……ならば!
「正々堂々、勝負させて頂きます!」
使い慣れた我が剣を閃光のごとく振り抜いたが、予想通りじいさんにはいとも簡単に交わされた。まあ、それでいいんだが、あの速い動きをどうにか止めなくては勝ちは見えてこない。腕を後ろで組み、一見無防備そうで隙のないじいさんを……。
「どうしたかね? もう終わりか?」
「これからですよ」
挑発をかけてやろうと思ったが、先にやられた。
「では。いかせてもらいます」
素早く右足で蹴り出し左から右へ引き抜いたが交わされた。そこへ息つく間もなく斬りかかったが、それすら交わされてしまった。
確かに速い。しかし、攻撃パターンを試行錯誤やってみて、動き方が徐々に分かってきた。それに……思っていたとおり、やはり老体。これだったら……!
「この勝負、勝たせて頂きます」
「なかなかの自信じゃな」
怒濤の連続攻撃を相変わらずじいさんは交わしてくるが、考えていたとおりそのスピードは確実に落ちてきている。天下のセーキも年齢には勝てない。
「これだったら、どうだっ!!」
全力で斬りかかったが、何か硬いものに受け止められた。じいさんは通常のものよりやや短めの中剣を二本と、短剣を数本隠し持っている。だが、攻撃時にしか使わず、防御はスピードを生かして交わしてくる。それを二本の中剣で受け止めるということは、追い込んできた証拠。
勝てる。元・王室直属騎士団に!
猶も攻撃を仕掛けるが、もう交わさずに中剣で受け止める。あともう少しで……!
「やはり……じゃな」
「なにが、だよ……?」
不敵な笑みを見せると、一旦離れて距離を置いてきた。するとじいさんは、その場で軽く数回ジャンプすると、消えてしまった。
――違う、見えなかった。
かまいたちを思わせるスピードで、体の至る所を斬りつけられた。
「やはり、わしの体力を奪って、隙を作るつもりだったか。疲れたフリをしてみたら予想通り」
まだトップスピードを出せる力があったか。いや、作戦を読まれてセーブされてしまったというべきか。
「それに、お主はもう負けじゃ。誤算が大きすぎる……」
「まだ、判らない!」
残っている力を振り絞り、じいさんに向けて振り続けた。しかし、力強く踏み込んだ瞬間に激痛が走り、耐えきれず剣を離してしまった。
「大怪我さえなければ……。体力が完全回復していれば……。だが、その誤算は言い訳に過ぎない」
抵抗する体力は残っておらず、激痛に耐えうる気力もなく、倒れてしまった。
じいさんの言うことは事実だ。そして、経験の差がありすぎる……。
地に伏せて見上げると、じいさんが横に立っていた。
「……なんだよ? もう勝負は付いただろ」
「起き上がれ。……ひとつな、教えておこうと思ったことがあるんじゃ」
そして、じいさんの口から意外な人物の話が飛び出た。
≪ 第10話-[目次]-第12話 ≫
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この名前を知らない方がおかしいくらい、有名な人物。
若かりし頃は国中を放浪し、強者と剣を交わしては名を轟かせ、己の腕を上げていった。当時は今と違って選考会がなく、とにかく腕の立つものを入れていた。心機一転した王室直属騎士団にスカウトされて入団。それ以来の活躍は言うまでもなく、群を抜いていた。最近になって外されたと聞いて、てっきり年齢によるものだと思っていた。それが選考会に参加して目の前にいるわけだ。
「そろそろ、若手に譲ってもらいましょうか」
とはいえ、じいさんが言うように確かにまだ『現役』だ。全盛期よりかはスピードが落ちているが、サイフを抜き取る一連の動きは見えてなかった。だが、もしあれが全力に近いなら……。
「まだ、譲るわけにはいかんな。わしにもやり残したことがある」
じいさんの戦い方は分かっている。……ならば!
「正々堂々、勝負させて頂きます!」
使い慣れた我が剣を閃光のごとく振り抜いたが、予想通りじいさんにはいとも簡単に交わされた。まあ、それでいいんだが、あの速い動きをどうにか止めなくては勝ちは見えてこない。腕を後ろで組み、一見無防備そうで隙のないじいさんを……。
「どうしたかね? もう終わりか?」
「これからですよ」
挑発をかけてやろうと思ったが、先にやられた。
「では。いかせてもらいます」
素早く右足で蹴り出し左から右へ引き抜いたが交わされた。そこへ息つく間もなく斬りかかったが、それすら交わされてしまった。
確かに速い。しかし、攻撃パターンを試行錯誤やってみて、動き方が徐々に分かってきた。それに……思っていたとおり、やはり老体。これだったら……!
「この勝負、勝たせて頂きます」
「なかなかの自信じゃな」
怒濤の連続攻撃を相変わらずじいさんは交わしてくるが、考えていたとおりそのスピードは確実に落ちてきている。天下のセーキも年齢には勝てない。
「これだったら、どうだっ!!」
全力で斬りかかったが、何か硬いものに受け止められた。じいさんは通常のものよりやや短めの中剣を二本と、短剣を数本隠し持っている。だが、攻撃時にしか使わず、防御はスピードを生かして交わしてくる。それを二本の中剣で受け止めるということは、追い込んできた証拠。
勝てる。元・王室直属騎士団に!
猶も攻撃を仕掛けるが、もう交わさずに中剣で受け止める。あともう少しで……!
「やはり……じゃな」
「なにが、だよ……?」
不敵な笑みを見せると、一旦離れて距離を置いてきた。するとじいさんは、その場で軽く数回ジャンプすると、消えてしまった。
――違う、見えなかった。
かまいたちを思わせるスピードで、体の至る所を斬りつけられた。
「やはり、わしの体力を奪って、隙を作るつもりだったか。疲れたフリをしてみたら予想通り」
まだトップスピードを出せる力があったか。いや、作戦を読まれてセーブされてしまったというべきか。
「それに、お主はもう負けじゃ。誤算が大きすぎる……」
「まだ、判らない!」
残っている力を振り絞り、じいさんに向けて振り続けた。しかし、力強く踏み込んだ瞬間に激痛が走り、耐えきれず剣を離してしまった。
「大怪我さえなければ……。体力が完全回復していれば……。だが、その誤算は言い訳に過ぎない」
抵抗する体力は残っておらず、激痛に耐えうる気力もなく、倒れてしまった。
じいさんの言うことは事実だ。そして、経験の差がありすぎる……。
地に伏せて見上げると、じいさんが横に立っていた。
「……なんだよ? もう勝負は付いただろ」
「起き上がれ。……ひとつな、教えておこうと思ったことがあるんじゃ」
そして、じいさんの口から意外な人物の話が飛び出た。
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