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Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第12話

2015年08月02日 07時46分33秒 | 小説「パスク」(連載中)
「ひとつだけ、お主に助言を授けよう」
 背はこちらに向け、なにか遠くを見ているように話し続ける。
「王室直属騎士団になりたかったら、あの女には決して逆らわない事じゃな」
「あの女って……。どういうことだよ」
「いずれ、それを知るときが来る」
「なんだよ、それ……」
 もったい付けさせておいて言ってくれず、僅かに残っている力さえ流れ出そうだった。
「詳しくは言えんじゃが、なにしろ監視員がおるからな……」
 選考会参加中は、使いの者が交代で参加者を常に隠れて見張っている。それを上に報告しているわけだが、そのこと自体は参加者も周知である。
「そんなに、まずいことなのか……?」
「いや、監視員が報告するのは、対戦結果と適正に行われたか。それ以外は言わんよ」
「だったら、もったい付けないで言えよ」
「万が一、お前さんが残ったとき――或いは、手前まで来たときに不利になると思ってな」
「そうなのか……?」
「それはわしにも分からん。選考会参加は初でな。用心することには越したことはないだろう。じゃがな、これだけは言える」
 ひと呼吸置いて、それから発した言葉――
「逃げたくなるような選択肢を迫られても、前に進め」
 よく分からないが、その言葉が重くのしかかった。
「伝えたいことはこれだけじゃ。わしは次の対戦者を求める」
「理解はできないが、ありがとう……ございます」
 あまりのことに話がついていけず、つい敬語を忘れそうになった。
「それでよい。その時になって思い出せばよいのだ。それはそうと、怪我は大丈夫かな?」
「実家の近くに、いい湯治場がありまして」
 全国でも指折りのところで、怪我やほぼ全ての病に効能があり『医者要らずの湯』とまで言われている湯治場がある。そこならこの傷も癒やせるだろう。
「ならばよい。でも、気をつけるのじゃよ」
「はい、ありがとうございます」
 帰る後ろ姿を見て、思わず叫んだ。
「セーキさんも、お気をつけて!」
 こちらに振り返ることなく、右手を挙げて手を振った。



 オレも帰りを急ぐことにした。実家に着くまでは誰とも対戦したくないし、できる状態ではない。とにかく帰らなければ。
 しかし、いろいろ気になる。
 まずは、監視員。今回が初めて参加したわけはないので、存在はもちろん知っていた。どうも一人ないし二人が常に監視している。こちらが寝ているときも監視しているのだろう。
 その情報は、二十人の騎士団を束ねる長に集まり、選考会の判断に使っている。じいさんが言ったとおりぐらいの伝達だが、本当にそうなのか。
 それと、じいさんの言葉。どういうことなんだ。自分で判断しろって事か……?



 そして――『あの女』か……。


≪ 第11話-[目次]-第13話 ≫
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