ぶろぐのおけいこ

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三岐鉄道 三岐線

2023-08-19 19:43:30 | PiTaPaより遠くへ

 近鉄名古屋線に乗ると、どこかの駅で、三岐鉄道乗り換えとか案内が書かれているのを見たことは何度もありますが、西のほう(山のほう)に伸びる線路くらいの認識しかありませんでした。三岐というくらいだから、三重県から岐阜県辺りまで走っているのだろうくらいしか意識していません。その「さんぎてつどう」という鉄道に乗ってみようと思ったのは、昨年、桑名駅近くで3種類の線路幅を渡る、日本で唯一という踏切を渡ったことからでしょうか。いや、「乗れない鉄道に乗ってみた!」という番組でセメント輸送を担う三岐鉄道を見たからでしょうか。いやいや、三岐鉄道の駅員として駅に暮らしている女性の番組を見たからでしょうか。

 三岐鉄道には近鉄富田から走る三岐線と西桑名(近鉄やJRの桑名駅に近い)から走る北勢線とがあります。員弁川(いなべがわ)の両岸を二線が走るイメージです。一度にこの二線に乗るためには、途中どこかの駅から徒歩で川を渡ればよいということになります。近鉄富田から三岐線で終点の西藤原まで乗る。戻ってきて伊勢治田で下車、およそ2km歩いて北勢線の終点、阿下喜に到着。北勢線に乗ったら寝ていても西桑名まで運んでもらえる。

 「三岐鉄道1日乗り放題パス」という切符があって、これを買えば思い付きで途中下車も可能です。

 名古屋行きの急行を近鉄富田で降りたら、ホームの向かいに黄色い色の電車が止まっています。乗り換えが便利だと思ったものの、切符売り場まで例のパスを買いに行かねばなりません。幸い、乗り換えに時間があったので問題はありませんでした。しかしそれより大きなギャップを感じたのは、例のパスがゴム印で日付を押すタイプのものだったこと。この時代、ゴム印タイプのパスなんてよほど小さなスキー場にでも行かないとお目にかかれないのではないでしょうか。二つ折りのパスには、二線の駅名と、有人駅か無人駅かの区別が書かれてあります。これから乗る三岐線は一駅を除いて有人駅。近鉄線では合理化合理化で、いつのまにか急行停車駅でも窓口がなくなってしまった令和の時代に、各駅に駅員を配置するなんて。

 それにだいたいどの駅も島式ホームで1面2線。だいたいどの駅でも交換可能ということになります。新規で開業する鉄道ではこういうわけには行かないんでしょう。いかに無駄を省くかが命題ですからね。もっとも、三岐線は貨物輸送が大きなウエイトをもっていますから、お客だけを運ぶ、他の私鉄とは様子も違うことでしょう。昔、昭和55年に大糸線に乗ったことがありましたが、どことなく似た感じを受けました。駅舎の雰囲気、駅付近のいでたち。懐かしい気分すらしてきます。電車の揺れ方がまた懐かしい。3Dの揺れ方とでも形容しましょうか、さっきまで乗っていた近鉄の幹線とは違う豪快な揺れ方です。

 丹生川駅で下車。女性の駅員さんがいました。駅舎周辺は花がいっぱい。やはり無人駅ではないしっとり感があります。人がそこにいるという安心感でしょうか。

 無人駅だって、一定間隔で掃除にくるスタッフがいるわけで、手入れはされているとはいうものの、無人駅のドライ感がありますよね。

 この駅には貨物鉄道博物館があります。ボランティアによる日本唯一の貨物鉄道の博物館だそうです。もっとも、月に一回しか開館されませんし、私の訪れた日は開館していませんでしたが、屋外に展示された車両もたくさんあります。駅のすぐそばに小学校があり、水泳の授業をしているようでした。後になって、丹生川駅の女性駅員さんは、夫婦お二人でこの駅の管理を44年間続けている方だったのだと知りました。知っていたら、もう少しお話をしたかった。そして、夫にあたる方が貨物鉄道博物館の館長らしい。貨物の車両を見て、待合室で待っていたら高校生と思しき男子が3人やってきました。二人は定期券利用者のようでしたが、一人は窓口で切符を買っていました。「隣の駅まで」そう、この三岐線では口を開かなければ切符も買えないのです。考えてみれば、切符を買うにも改札口を通過するにも声を出す必要はないこの時代。高速道路を利用しても、ETCのお陰?で、料金所で窓を開ける必要もありません。機械に「ありがとうございました」ってお礼を言われてもねえ。

 次の列車で、終点まで走ります。電車の窓から見えたのは、電車に手を振る小さな子供。子供は鉄道が好きなものですね。セメント工場の横を走って、終点西藤原。止まったホームの隣の線路は機関車展示専用となっていました。藤原岳への登山客もこの駅を利用するようです。

 

 駅舎は蒸気機関車風に作られています。駅の東側は広場になっていて、鉄道模型用のレールが敷かれています。どれどれと行ってみると、「桑工ゆめ鉄道運転会」の案内が。三重県立桑名工業高等学校の生徒たちがクラブ活動の一環として、月一度運転会を行っているようです。

 車庫も作られていて、その脇には転車台と給水塔まであります。「駐車スペースが少ないため、三岐鉄道 三岐線をご利用ください。」って、桑工ゆめ鉄道のページに書いてあるのも憎らしいね。この運転会にはどうやら前段があるらしい。

三岐鉄道90周年記念事業 90年の歩み」にはこう書かれています。

2001(平成13)年7月に開業70周年を迎えた当社では、記念事業として西藤原駅前公園を整備し、開業時のSL102号機などの車両を展示するとともに、公園内に専用軌道を敷設し、毎週日曜日にミニSLを運行する「ウィステリア鉄道」を発足した。

 もともと、ボランティアの手を借りて、「ウィステリア鉄道」のミニ車両の運行がここで行われていた。2015年3月に終了し、桑工ゆめ鉄道がそのレールを引き継ぐ形で続けているようです。桑工ゆめ鉄道は、幼稚園や商業施設での出張運転会もしているようで、高校生が模型鉄道というツールを使って社会と関わる、とてもうれしい話ですね。

 次の電車で、伊勢治田まで戻ります。

   この駅は東藤原駅と同じように留置線がたくさんあって貫録を感じます。さらに、線路が湾曲している分だけ東藤原駅より趣があるような気がします。下車。

    んっ?駅名板が傾いています。

   どんな意図があるのでしょう。駐輪場を覗いてみました。「この駐輪場は、下記の方々の格別のご理解により建設された…」と「手書き文字」で書かれています。つまり、地元の人も三岐線が便利になるように力を合わせているということでしょう。

 

 片道とほんの少し乗っただけですが、三岐線はとても面白いと感じました。私が感じた魅力を整理してみます。

  • 昭和博物館。駅舎やホームのたたずまいが昭和の感じ。自動改札機が一切ないのもまた昭和。
  • 駅に人(駅員?管理人?)がいる暖かさ。運転士すらいない列車が存在する時代に逆行とも思えますが、その暖かさ、うるおい、安心感。
  • 他所から人がやってくる仕掛け1。貨物鉄道博物館は、商業的には成功していない、けっして成功しないと思いますが、ほかに同様の博物館がないので、ここを頼るしかありません。おそらく、全国で解体・廃棄するには惜しいなと思われる貨物列車関連のものが、ここに引き込まれてくる。それを見たい、体験したいと思う人たちも引き込まれてくる。貨物輸送にウエイトがある珍しい私鉄ゆえに成り立つこと。
  • 他所から人がやってくる仕掛け2。ウィステリア鉄道から桑工ゆめ鉄道も同様に、三岐線に遊びに行こうという仕掛けを持っていること。
  • 地元の人が乗る仕掛け1。ほとんどの駅で、乗客用の無料駐車場がたっぷり作ってあること。鉄道かクルマかではなく、いいとこどりをしましょうよという発想。駅前の駐車場が無料なら、渋滞に巻き込まれるより、電車で短時間で通勤しようという気になりますものね。
  • 地元の人が乗る仕掛け2。サイクルパスという制度。無料で自分の自転車を電車に乗せてよいというシステムがあります。(乗客の少ない)三里から奥は毎日、桑名駅を除く各駅では土日祝日のみ、自転車持ち込みがOK。どうせ空いているんだから、自転車もどうぞというわけですね。お金もかからないし便利なら、自転車に乗って三岐線で買い物に行こうかという気にもなります。

 ほかの鉄道にない仕掛けがたくさん。いいわぁ、三岐線。

 では、ここから北勢線の阿下喜まで歩いてみましょう。

(つづく)





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