映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

炎628(1985年)

2015-11-30 | 【ほ】



 第二次大戦下の白ロシア(現在のベラルーシ)で、とある村がナチスの特別行動部隊(アインザッツグルッペン)により全滅させられた。なぜなら、その直前、ドイツの偵察機が、村の少年フリョーラが機関銃を持って荒野にたたずんでいるのを見つけていたからであった。フリョーラは友人の少年と、村の長老に武器を掘り出すことを諌められるのも聞かず、機関銃を見つけて喜んでいたのだった。

 フリョーラは地元のパルチザンに入ろうとして、少年であるために隊から置いてけぼりを喰ってしまい、仕方なく自宅に戻って、村中の人々が惨殺されていたことを知ったのだった。自分のせいで村が虐殺の的にされたと知り、精神的に追い詰められるフリョーラ。

 その後、アインザッツグルッペンは、地元民を集めると、とある教会の中へ入るよう皆に命令し、地元民たちは続々と押し込まれていく。そして、扉が閉められ、、、。

 1943年3月、ハティニという村の住民149名全員が惨殺された事件を題材にした映画。タイトルの628は、ナチスによって焼き払われ、殲滅させられたベラルーシの村の数、だということです。
 
 
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 有名なトラウマ必至の戦争映画、ということで、今さらですが見てみることにしました。

 で、感想ですが、正直なところ私には、そこまで騒ぐほどトラウマ映画ではありませんでした。ホロコーストものなら、もうさんざん色々な映画を見ているので、衝撃には慣れてしまっているというのもあるかも知れませんが、ソ連がやったことをおぼろげながらも知っているので、あまり被害者側一辺倒になって見ることが出来なかった、というのもあるかも。いずれにしても、戦争映画の衝撃度でいえば、私は、『戦場のピアニスト』の方が遥かに大きかったです。

 本作の前半は、少々退屈。フリョーラがパルチザンに入り損ねて、自宅に戻ってくるまでの少女とのあれこれが、う~ん、という感じ。あの少女は、ラストでナチにレイプされて血まみれになっていた女の子と同一人物なんでしょうか? ちょっと、顔がよく判別できませんでした。であれば、あの長々としたシーンも多少は理解できますけれど。

 中盤からは一気に緊迫度が上がります。まず、フリョーラが自宅に戻った時の、その自宅の何とも言えない不気味さ。誰もいない、でも、ただの留守とは到底思えない不穏さ。それから後は、ひたすら地獄絵巻。もう、ひどいのなんの。でも、あれが実際にあった光景と大差ないのだろうな、と思います。

 そして、ラストの生きたまま地元民たちを焼殺するというおぞましい虐殺行為。何も言うことはありません。

 最初は、ごくごく普通の少年だったフリョーラですが、恐ろしい体験を重ねていくうちに、髪は白くなり、顔もどんどん皺が増え、最後には老人のような容貌になっています。特殊メイクだろうけれど、これが本作で一番印象的だったかも。

 あと恐ろしいのは、虐殺の後に、パルチザンに捕えられたアインザッツグルッペンの将校が殺されるのを目前に吐くセリフです。「子どもから始まる。だから生かしてはおけぬ。必ず殲滅する!」(セリフは正確ではありません)というもの。子どもは守るべき存在ではない。共産主義の子どもなど、世界の癌だというわけです。だから絶滅させなければ、と、信じていたんでしょうなぁ、あの将校さんは。

 ナチスは確かに子どももたくさん殺していますし、そもそも民族浄化というのは、ある民族を根絶やしにするわけですから子どもこそ殺さなければならない存在、という思想は、まあ、当然といえば当然です。あの将校も、金髪碧眼で長身のイケメンでした、そう言えば。

 別に、ソ連もソ連なんだから、こんな映画作って被害者面してんじゃねーよ、などという気はさらさらないし、いろんな立場の人がいろんな側面から物事を描くのは大切だと思いますので、本作に存在意義はもちろん十分あります。実際に、ナチスがこの地で行ったことはただの虐殺で、その思想だの大義名分だの、何の意味もなしません。

 ただ、場所が変われば主客転倒し、虐殺者は被虐殺者となり、被虐殺者は虐殺者となるのです。ですから、本作を見て思うのは、戦争とは、人間の理性をあっさり奪うものであり、人間とはあっさり理性を捨てられる愚かな生き物であるということです。それ以上でも、それ以下でもない。『ベルファスト71』を見た時も思ったけれど、戦争や紛争は、結局はただの殺し合いだってことです。どちらにも義はないよね、あると言うだろうけど、双方ともに。

 今、ISISを空爆していますけれど、あれも同じことですよね、結局。それで解決なんかしないと、みんな頭では分かっているのに、メンツが勝ってしまう。あそこで、今、本作で描かれていたようなことが現実に起きているのだと想像する方が、恐ろしい。恐ろしい、と言っているだけで、何もできない、しない自分も、確かにここにいるわけで。せめてアベベには、有志連合に参加するなんて勇ましいこと考えず、いかに戦力でない方法で解決の糸口を探るかを考えて我が国の立ち回り方を示していただきたいものです。ま、ムリでしょうが。

 





思ったほどの衝撃はなかったけど、悲惨な内容です。




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