映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ハイジ アルプスの物語(2015年)

2017-10-01 | 【は】



 日本人なら知らない人はいない、あの「アルプスの少女ハイジ」の実写映画。

   
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 ハイジの実写映画が公開されていることは知っていたけど、以前、「フランダースの犬」の実写版をBSで見て、激しくガッカリした記憶があるので、今回もスルーしていたのだけど、ツイッターで斎藤環氏が「めちゃめちゃ良かった」などと書いており、何やら評判が良さそうだし、よく見れば、おじいさんはあのブルーノ・ガンツが演じているではないか!というわけで、俄然見たくなってしまい劇場へ行ってまいりました。これは、見て正解。大スクリーンで見るべし!!

 どーでも良いけど、私が生まれて初めて買ってもらったレコードは、「アルプスの少女ハイジ」のテーマ曲のレコードでした。A面がオープニング、B面がエンディング。買ってもらってすご~~く嬉しかったのを今もハッキリ覚えております。飽きるほど何百回も聞いたなぁ、、、。


◆椅子が2つになった、、、涙。

 ハイジは、叔母さんに連れられて、アルプスの山麓に住むおじいさん(おんじ)の下へ、半ば置き去りにされるような形で預けられる。おんじ(ブルーノ・ガンツ)は変わり者で、ハイジにも冷たく当たる。……と、まあ、アニメ版と同じ流れ。

 ハイジは、おんじの部屋を見て言う。「おじいさんはいつも一人なの? 椅子も1つしかないの? ベッドも1つ……」(セリフ正確じゃありません)。当然、おんじは無言で答えない。その後、ハイジの可愛さに負けたおんじは、ハイジがペーターとヤギの放牧に行っている間に、手慣れた作業で、木材を加工し始める。そして、放牧から帰ってきたハイジが部屋に入って、真っ先に目に入ったのは、真新しい2脚目の椅子、、、。そのときのハイジの嬉しそうな顔!!

 割と序盤のシーンなんだけど、既にここで私の涙腺は決壊。うっ、、、、。これでは先が思いやられる。

 椅子が2つに増える前に、ハイジを放牧へ送り出すときに、おんじが、チーズとソーセージを切り出して、布巾に包んでハイジの背負い袋に入れるシーンがあるんだけど、これが、何だかジーンとなる。それはもちろんお弁当なんだけれども、何というか、そのおんじの一挙手一投足に、おんじの優しさが垣間見えるんだよなぁ、、、。

 おんじは、麓の町では変人扱いされており、「人を殺したって話だよ」なんて噂されている。時代は逆行するけど、かつては総統閣下だったもんなぁ、、、ブルーノ・ガンツ。……と、ネットでも同じツッコミをしておられる方はいらっしゃいましたね、やはり。みんな思い浮かべることは同じなのね。


◆一人に戻ってしまったおんじ、、、また涙。

 せっかく、おんじとハイジの穏やかな生活が続いていたところへ、またまたあの叔母さん登場。結局はお金目当てでハイジを(今なら確実に誘拐で逮捕だね、ありゃ)強引にフランクフルトまで連れて行っちゃう。

 ハイジがペーターと一緒に戻ってこないので、おんじは大パニックに、、、。ここで再び涙腺決壊。おんじの哀しそうな顔、、、。ハイジが来たことで、人と暮らすことの良さを思い出したのであろうおんじ、、、。切ないなぁ。

 で、この後、ハイジがこのアルムに戻ってくるまで、おんじ=ブルーノ・ガンツが出てこないのです。これも寂しい。まぁ、出て来たとしても、黙々と一人で暮らすひたすら寂しそうな姿しかないだろうし、シーンとしては確かに成立しにくいよなぁ。

 一方、拉致られたハイジは、ペーターと放牧している最中にそのまま電車に乗せられ、、、というわけで、服もボロボロ、まさに野生児のルックスで、あのゼーゼマン家に現れた。あのまんま連れて行っちゃう叔母さんは、やっぱりヒドイ人だ! と憤りを感じるけれども、パンフを読むと、当時のスイスは非常に貧しくて、現金収入はなかなか得られず、多くの人が国外へ流出していたのだとか。……という背景を知ると、叔母さんの言動も、まあ、時代ゆえの仕方のないことだった、、、とも言えるのかも。

 ゼーゼマン家では、いきなり食事のシーンになり、ハイジはボロのまんま、スープ皿を両手で持ってそのまま皿に口を付けてズズ~~ッと音を立てて飲むという荒技に出て、ロッテンマイヤーさんに「こんな野生児だったとは……」と言わしめる。でも、傍らのクララは面白そうに見ている。このクララの性格の良さと、セバスチャンの優しさが、また泣けるんだよなぁ、、、。


◆夢遊病になるハイジ、アルムに戻っておんじと再会するハイジ、、、またまた涙。

 本作は、展開が非常に早く、ストーリーも、カルピス劇場のアニメと大きく違わないと思う。黒パンと白パンの話も当然出て来て、ハイジが白パンをこっそり集めていたり、窓から外の景色を眺めて「どうして山がないの?」とセバスチャンに尋ねたり、、、とおなじみのシーンが続く。

 幽霊騒ぎも起き、夢遊病になるハイジの姿はやはり泣ける。

 でも、もっと泣けるのは、ハイジがアルムに帰ると決まったときのクララの反応。賢くてよい子のクララが、ハイジが帰ってしまうことに激しく動揺して、お父さんのゼーゼマン氏に泣き叫んで、テーブルの上の皿を床にぶちまける。……文字にするとそれだけのことなんだけど、ハッキリ言って、この時のクララの気持ちが痛いほど伝わってきて、とっても切ない。その騒ぎを、物陰で聞いていしまうハイジもまた哀しい。

 セバスチャンに付き添われてアルムに帰るハイジは、それでもやっぱり、とっても嬉しそう。「おじいさ~~~ん」と叫びながら走ってくるハイジを見たときのおんじも、持っていた木材を取り落としちゃって、メチャメチャ嬉しそう。……はい、ここでも泣けるのはお約束。

 その後、クララがアルムにやって来て、ハイジと2人、自然で戯れるシーンはとにかく美しい。このシーンがスチール画像に使われているけど、ホント、このシーンだけでも見る価値ありだと思う。ハイジがクララに、スープを皿ごと飲んで、その後皿をペロペロ舐めて、口も手で拭いちゃう、、、という“お作法”を実践して見せて、クララも真似するシーンとか、ホント、可愛い。

 クララが立つ瞬間は、割とあっさりした描写で、アニメみたいにハイジが大騒ぎする感じではなかったかな。でもまあ、その後、ゼーゼマン氏もアルムにやって来て、ゆっくり自力で歩くクララを見るシーンは、ちょっと感動的に描いているけれど。


◆ハイジのその後が暗示される

 アニメの記憶がかなり曖昧なんだけど、アニメでは、ハイジのその後を思わせる展開は、あったんですかね? 本作では、ゼーゼマン家にいる間に、ハイジは、字が読めるようになり、アルムに戻ってきてからは、ペーターに字を教えてあげたりもするほどで、本も読んでいる。そして、学校にも行って、将来は「作家になる」と言うシーンもある。

 ハイジがこんな将来を思い描いたのは、クララのおばあ様の影響が大きいんだと思う。おばあ様は、字の読めなかったハイジに、絵本の読み聞かせをすることでハイジが字を覚えるように誘導したり、「あなたは外の世界も見た、やりたいと思えることがあるのなら誰がなんと言おうとやらなきゃだめよ」などと言ったり、ハイジの意識を覚醒させる存在だ。

 原作はどうなのか知らないが、感受性豊かなハイジなら、物書きは向いているかもしれない。

 ただ、この時代、女性が、ましてや親のいない女性が独り立ちして生きていくのはかなり困難だったろうと想像する。まあ、本作を見てそこまで心配する必要なないけれど、、、。例えば、ロッテンマイヤーさんは、いわゆるガヴァネスだったと思われる。途中で、ゼーゼマン氏に色目を使っていると思しきシーンがあるけど、ガヴァネスから脱出するのであれば、妻亡きゼーゼマン氏に見初められることが一番の近道なのだ、、、。アニメを見ていた頃は、ただのヒスおばさんとしか思っていなかったけど、学だけあって経済的バックグラウンドのない女性にとっては辛い時代だったのだ。

 ハイジも知的好奇心旺盛な子のようだから、きっと学は身につくだろうが、、、。物書きといっても、女性が本名で作品を発表することも難しい時代。それで食べていくことなどもっと難しいと思うが、、、。


◆その他もろもろ

 なんと言っても、ハイジ役のアヌーク・シュテフェンが、メチャメチャ可愛い! ただ顔が可愛いというのではなくて、まあとにかく、その存在自体が愛おしいと思える魅力溢れる子だ。本作が初めての演技経験というのだから、ビックリ。クララ役のイザベル・オットマンは、可愛いというより美人。しかも、品もあって、個人的にはアニメ版のクララよりイザベルちゃんのクララの方が好き。イザベルちゃんはプロの役者だそうだけど、2人の息はぴったりで可愛さ倍増。

 ペーター役の子も、本作が初めての演技経験とのこと。顔がね、、、よくこんなピッタリな顔の子を探してきたもんだ、と思うほど、ペーターに合ったキャラで、この3人の子役の配役で、本作は半分成功していると言っても良いのでは。何より、子どもたちをこれだけ生き生きと描くよう演出した監督の手腕が素晴らしい。

 そして、ブルーノ・ガンツのおんじは、期待通り、いやそれ以上かな。ブルーノ・ガンツと言われなきゃ分からないかも。

 特筆事項は、アルプスの自然の美しさ。これはスクリーンで見ないと損だと思う。CGナシとのことで、ホントに美しい。夏の景色も美しいが、私は、冬の雪に覆われた景色が感動的に美しいと思った。その斜面を、おんじとハイジの乗った橇が滑降していくシーンだあるのだけど、息をのむ美しさとスピード感は、スクリーンでなければ味わえない素晴らしさだと思う。

 あと、セバスチャンを演じたペーター・ローマイヤーが、出番は多くないけど良い味出していたと思う。さりげない優しさって、表現するのは難しいと思うけれど、ローマイヤー演ずるセバスチャンは、まさに、さりげない優しさの持ち主。ユーモアもあるし。

 ロッテンマイヤーさんは、キャラはアニメと同じだけど、見た目はアニメよりゼンゼン美人。どこかで見た顔だなぁ、、、と思っていたら、『ヒトラー暗殺、13分の誤算』に出ていたカタリーナ・シュットラーさんだった。『ヒトラー暗殺~』では、険のある美人だけど嫌な感じの顔だと思ったけど、本作では、キャラはキツいけど顔は正統派の美人だと思った。演じる役で顔の印象まで変えられるというのは、良い役者さんの証拠だと思うわ。

 ……とにかく、アニメの実写版かぁ、、、と侮ることなかれ。
 






心洗われる逸品。




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