映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

母の身終い(2012年)

2014-12-31 | 【は】



 ヤクの輸送の片棒担がされて18か月の服役を終えて出所してきた50前のおっさんアラン。仕事もなく、母親の家に居候し、案の定、母親とは衝突ばかり、、、。

 が、その母親は治療が難しい脳腫瘍に侵され、いずれは自分を失うと医師に宣告される。そこで、母親は、決断する。自律できているうちに、自分の人生に自分の手でピリオドを打つことを。


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 すごくキッチリしたお母さんであるイヴェットです。そんな彼女の“身終い”は、なるほど彼女らしい。そう、つまり、彼女は“尊厳死”を選ぶのです。自分が自分でなくなる前に、キッチリ折り目正しく人生を終えたいという、、、。

 フランス国内ではそれを実行すると、自殺幇助の罪に問われるため、彼女はスイスのある協会の援助を受け、実行します。そして、この現場に立ち会うことになるのが、典型的ダメ息子である、アランです。一人息子なのね、きっと。

 正直、子の立場で言わせてもらえば、親が自殺する現場に立ち会わされるのは、理屈抜きで「嫌」です。親の意思は理解できるし、もちろん尊重もしたい。でも、自分の目の前で、たとえ“尊厳死”と言われても、実態は自殺であり、親が死ぬための薬を飲むのを眺めていなければならない、という場面は、子にとって酷(こく)過ぎます。

 私は、世界で30番目くらい(根拠はありません)に親不孝者だという自覚は十分持っていますが、その罪滅ぼしに、親の尊厳死に立ち会え、と親に言われたら・・・。まあ、たとえ世界一の親不孝者になっても、拒絶すると思います。そんな重荷を子の先行きに負わせるなんて、親として勝手すぎやしませんか、とかなんとか言って。

 ただ、このイヴェットの尊敬すべきところは、「子(アラン)に迷惑を掛けたくない」とか、一切そういうことを言わないところです。そういう思いもあったと思うけれども、彼女は彼女自身のために尊厳死を選んだ、という一貫した描写であり、そこがむしろ好感を持てました。ただでさえ、親の自殺に立ち会うという重荷を背負わされた上、さらに「あなたの将来のためよ」なんて言われた日にゃ、「どこまでオレに十字架背負わせんだよ!!」とキレたくなりますよ。

 私が親なら、まあ、子に立ち会わせることはしないだろうな、、、。というか、子に相談する時点で、子には精神的に負担を掛けることになるから、勝手は百も承知で、相談なく実行してしまう気がします。

 日頃は、死ぬまで生きるべし、と思っているけれども、確かにイヴェットのように、将来確実に自律を失うと宣告されたら、自律を失う=死、と解して、その手前で決するのはアリかも知れないと、本作を見て思いました。これは、非常に重い問いかけです。

 4人に1人は認知症になる、といわれる時代で、自分が認知症になったら、ということを考えておかなければならないと強く感じました。私の年齢からすれば、若年性にだってなり得るわけで、今から、どうすべきなのかを考えようと思います。自分が分からなくなる前でないと、自分の“終え方”は決められませんからね、、、。キビシイ現実です。

 それにしても、アランを演じるヴァンサン・ランドンが、私、生理的にダメでした、、、。何か、生理的にダメ、ってしょっちゅう色んな作品で書いているので、少々気が引けるのですが、でも、ダメです、どーしても。

 なので、彼がイヴェットに「死んじまえ!!!」などと、暴言を吐いているシーンは、正直、反吐が出そうでした。(何度も書くけど)私も世界中で30番目くらいに親不孝者ですが、さすがに、親に向かって「死んじまえ」と言ったことはありません(母親には何度も言われましたケド)。一方的に疎遠宣言をしたので、「死んじまえ」と言いながらも親のそばにいるアランの方が、親にしてみれば可愛くて孝行息子なのかも知れませんが、、、にしても、親に限らず、誰かに「死ね」というのは、ちょっと人格を疑います。

 そんなアランと行きずりの関係から恋仲になりかける女性が現れ、2度もラブシーンが描かれるのは、解せません。アランのコイバナなんて、必要ないじゃん? 強いて言えば、その女性に、一度は「言いたくない」と拒絶した今の自分の置かれた状況を正直に「18か月服役して無職の男だ」と話すことで、彼はようやく自分に向き合った、ということにはなるのでしょうか、、、。そんなことは、服役中にしておけ!! と言ってやりたいところですが。

 隣人のおじさんがイイ味出しています。彼の存在が、本作では一服の清涼剤となっています。


自分が自分でなくなる日が必ず来る、と言われたら、どうしますか?




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