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「雨族」 断片64-ぷーたろー:13年後~⑥:kipple

2010-02-07 14:40:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片64- ぷーたろー
             13年後~⑥


 僕は金色の波間に、たぷんたぷんと揺られていた。

 青いボートの形をしたソファーの上にいた。

 たぷんたぷん。

 僕は、うつ伏せになって金色の波をいつまでも見つめていた。

 しばらくすると赤い糸が波にゆられながら僕に近づいてきた。

 僕は、そっと赤い糸をすくい上げた。

 真っ赤で堅い糸だ。

 糸の先には何があるのだろう。

 僕は赤い糸を延々と、たぐり寄せた。

 何百メートルも糸は続く。

 しばらくして糸の先方に何かの手ごたえを感じた。

 僕は引く手を早め、金色の波間を注視した。

 すると女の生首が現われた。

 ぶかりぶかりと糸にからまり、波にもまれていた。

 空は快晴だった。

 僕は女の生首を引き上げて、よく観察した。

 つるんとして、ピカピカ光っている。

 それは、クロエの生首だった。

 生首は泣いていた。

 血の涙を流していた。


 僕は、はっと、飛び起きた。

 午前7時だった。胸がドキドキする。最近、毎日、おかしな夢を見る。今のは特に気分が悪い。

 僕は顔を念入りに洗い、ヒゲを剃り、ジーンズをはき、スケルトンマークのTシャツを着た。

 クロエは、まだ寝ている。今日は平日だから彼女も、もうすぐ起きるだろう。

 仕事に行くのだ。彼女は印刷関係の仕事をしている。フリーだから休みも、かなり自由になるし、収入もいい。

 僕は窓の近くで寝そべって、しばらく空を見てからクロエの朝食を作った。

 クロエは9時に起きてくると僕の作った朝食を食べ「じゃね」と言って仕事に行った。

 僕は食器を洗い、又、窓の近くで寝そべって空を眺め続けた。

 あっという間に昼になり、僕は昼食を作って食べ、デパスを2錠飲み、食器を洗い、タバコを続けて4本吸って、部屋の中を何も考えずにうろうろし続けた。

 TVをつけたが見る気がしない。本を出したが読む気がしない。

 僕は抗鬱剤を2錠飲んで夕食の材料の買出しに出かけた。

 夏の夕暮れ。涼しい風が吹く。商店街の人々の活気。僕は眩暈がしてきた。すばやく買い物を終えてマンションに帰り、少し寝そべっていた。

 目を閉じ、目を開ける。目を閉じ、目を開ける。そこにあるのは現実。

 次第に日が暮れてきて、あたりは薄い青に染まっていった。僕は起きて、コーラを飲み、タバコを吸い続けた。

 何も起らない。誰からの電話もない。

 午後8時頃になってから僕は夕食を作り始めた。クロエは、だいたい9時過ぎに帰ってくる。そして、その通りに彼女は帰って来た。

 2人で夕食を食べ終わると、クロエはTVを見始める。僕はTVが嫌いなので、TVを見てるクロエを眺める。

 そうして、12時頃に我々は寝る。

 僕の毎日は、殆んど、このペースだ。


 平和と言えば平和。地獄と言えば地獄。






断片64     終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)



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