「瓦礫の中のラブレター」
“ずぅぅぅっと、あなたが好きでした。ずっとずっと好きでした。いつも、あなたの事ばかり考えていました。朝から晩まで、眠ってる時も夢の中で、あなたの事を想っていました。でも、わたしはどうしても言えなくて・・・。言えないどころか、あなたに何の関心もないように振る舞ったり、、、kipple君!今日こそ、わたしは勇気を出して自分の素直な気持ちを伝えようと、これを書きました・・・”
と昨夜手書きでしたためた赤い封筒をしっかりと両手で持ち席を立つと、ぷるっ子は“ぷるっ!”と一回頭を振って、決意し教室を飛び出し、kippleを探した。
いた。kippleは校庭の隅っこにある鉄棒で大車輪をしていた。
ぷるっ子は一歩一歩と神妙な顔つきをしてクルクル回っているkippleに近づいていった。
kippleは近づいてくるぷるっ子に気が付かず、ただひたすら大車輪を続けていた。
ぷるっ子は、クルクル回るkippleの直前で立ち止まり、“ぷるっ!”と気合を入れ、目と鼻の先でクルクル回っているkippleに向かって叫んだ。
“kippleくぅ~ん!”
・・・まだまだ声は小さく、大車輪中のkippleの耳には届かなかった。ぷるっ子は、もう一度、全身のラブ・パワーを振り絞って世界が吹っ飛ぶんじゃないかと思うほど大きな声でkippleを呼んだ。
“kippleくぅぅぅ~~~ん!”
一瞬、クルクル大車輪を続けるkippleの表情が変わり、クルクル回りながら、“え?何?”と言う呆けた感じで、ぷるっ子が何かを叫んでいるのに気付いた。
・・・その時、巨大地震が起きた。
尻餅をついた、ぷるっ子は激しく揺れる風景の中に青白い閃光が渦巻き状に亀裂を作っているのを見た。
空間に亀裂が入っている・・・あれは何? あ!kipple君!と、ぷるっ子が思ったその時。
激しい揺れによって鉄棒から手を放してしまったkippleはクルクル回りながら、その青白い渦巻き状の亀裂の中に呑み込まれていった。
ぷるっ子は唖然としながらも揺れ続ける大地から立ち上がり、kippleが消えていった青白い渦巻き状の亀裂に向かって、全身全霊を込めて封筒を投げた。
それから何が起きたか・・・ぷるっ子はよく覚えていなかった。大勢の人が高台に避難しろと叫んでいて、誰かに腕をつかまれ、騒然とした中で大勢の人々と一緒に走っていた。
そして、大津波が来た。
我に返った時、ぷるっ子は大勢の人々と一緒に町の高台で真っ黒な大津波が全てを飲み込んでいくのを見ていた。
ぷるっ子は、“kipple君・・・kipple君・・・”と止めどなく流れる涙と共につぶやいていた。
***
一週間後、家族も家も失った、ぷるっ子は、避難所を抜け出し、放射能汚染のために立ち入り禁止区域と指定されている学校を訪れた。
学校は無かった。 そこには巨大な瓦礫の山が延々と続いていた。
誰もいなかった。 空にはカモメがいっぱい飛んでいた。
そこで、ぷるっ子は立ちすくみ、時を忘れて、ただ瓦礫を見つめ続けた。
ひたすら涙が湧いてきた。 どんどん、どんどん涙が出てきて止まらなくなった。
ついに、ぷるっ子は瓦礫の上に膝をつき、号泣した。
“うわぁーん!kipple君~!うわぁぁ~~ん!きっぷる君~~!”
と、その時、ぷるっ子の目の隅に倒れた鉄棒が映った。
“て・鉄棒・・・あれは、あれは、kipple君が大車輪をしてた鉄棒?そうよ!そうだわ!あの鉄棒よ!”
ぷるっ子は涙をボロボロ流しながら瓦礫に半分埋まって倒れている鉄棒に向かって走った。
そして、ぷるっ子は、埋もれている鉄棒を中心に瓦礫の中を探し始めた。
身体じゅうドロドロになって、ぷるっ子は片っ端から瓦礫をどかし、一晩中探した。
“kipple君。kipple君。絶対に生きてるよね。kipple君、この下だよね”
朝が来て、ぷるっ子は力尽き、ついに瓦礫の山に倒れてしまった。
その時、見つけた。瓦礫の奥に見えるのは、あの赤い封筒。
ぷるっ子は、死に物狂いで瓦礫をかき分け、赤い封筒を取り出した。
その赤い封筒は確かに、ぷるっ子がkippleに渡そうとして投げたものだった。
しかし、ぷるっ子が手にした赤い封筒はまるで鋭い刃物で斬ったように真っ二つだった。
“どういう事?わたしはあの時、何を見たの?kipple君はこの瓦礫に埋まっているんじゃないの?
・・・生きてるわ。きっと。kipple君は、生きている。あら?この鉄棒も、よく見ると真っ二つだわ。もしかして、あの時、時空に亀裂が入って、kipple君は別の世界に行ったんじゃ?・・・そして、その亀裂が閉じた時にちょうど、あたしの投げた、この封筒が飛び込んで真っ二つになったんじゃ?
生きてる!kipple君は生きている!
行くわ!わたし!kipple君に会いに行く!
もう、この世界には家族もいないもん!わたしは絶対にそっちに行くわ!どうすればいいの?そうね。地震ね。再びあのくらいの巨大地震を起こせば、ここの時空の扉が開く!きっと、そうだわ!待ってて、kipple君!絶対に、わたし、会いにいくからね!”
それから、ぷるっ子は瓦礫の中から立ち上がり、いつかきっと地震兵器を作って、もっと凄い地震を起こして、ここに再びあの青白い渦巻き状の時空の亀裂を安定的に出現させて、kipple君に会いに行く!と両手の拳を血がにじむほど固く握りしめて決意した。
・・・その頃、kippleは・・・
大車輪をしてたkippleはクルクル回りながら青白い渦巻き状の亀裂の中にすっ飛んで行き、別の世界に着地した。
そこは巨大地震の起きていない、もう一つの日本であった。
ふと、気づくとkippleは真っ二つになった赤い封筒をキャッチしていた。あれ?何だこれ?そう言えば、さっき、ぷるっ子が何か叫びながらオレに投げてよこしたヤツだな、と思い、中身の手紙を読んでみた。
手紙も真っ二つになっていたが、それが、ぷるっ子からの熱烈なラブラブ・レターであることはあきらかだった。
kipple君は、読んでるうちに勃起していた。そして、速攻で、ぷるっ子を探して校内を両手を広げて“きぃぃぃ~ん”と飛行機の真似をして超スピードで走り回った。
ところが、こっちの地震の起きてない世界の、ぷるっ子は、kippleの事が虫唾が走るくらい大嫌いだった。
kippleが、“きぃぃぃ~ん!”と言いながら、ぷるっ子を見つけ、“きぃぃぃ~ん!やらせろ!”と言った途端、ぷるっ子の強烈な蹴りがkippleの顔面を襲った。
kippleは血を吐くまで、ぷるっ子に殴る蹴るされ、さらに、こっちの世界のもう一人のkippleと出会い、kipple君は、ドッペル君と呼ばれ・・・・
とか。
ああ!妄想!おお!ベタな妄想!ヨギル妄想止まらない!
たとえば・・・
2030年。
東京電力福島第一原子力発電所は新興宗教メルト教の聖地となっていた。
東京電力福島第一原子力発電所一帯は立入禁止区域として有刺鉄線等で隔離され、ヅラ西山ゾーンと呼ばれていた。
原子炉は相変わらず放射線を放出し続けていた。
2012年以降、日本中で続々と奇形化した子供が生まれ、彼らはフクシマ・チルドレンと呼ばれた。
そのフクシマ・チルドレンの中に通常では考えられない特殊な能力を持つ者が確認された。
その異形の特殊能力者たちは、kipplerと呼ばれ政府の極秘施設で訓練を受け特殊戦闘部隊として編制された。
そして地球溶融を目指すメルト教団と特殊戦闘部隊kipplerの壮絶な戦いが幕を開けようとしていた。。。
「真・メルト転生」
ズーン・・・ズーン・・・ズーン・・・
とか。
終
This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)
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