セルロイドの英雄

ぼちぼちと復帰してゆきますので宜しくお願いしまする。

【映画】明日へのチケット

2006-11-05 11:00:20 | 映画あ行

"Tickets"
2005年イタリア/イギリス
監督)エルマンノ・オルミ アッバス・キアロスタミ ケン・ローチ
出演)カルロ・デッレ・ピアーネ ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ シルヴァーナ・サンティス フィリッポ・トロジャーノ マーティン・コムストン ウィリアム・ルアン ガリー・メイトランド
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
シネ・アミューズにて

ローマに向かう国際列車。
大学教授と提携先企業の秘書。将軍の未亡人と彼女に付く事になった兵役中の若者。サッカー観戦の為にスコットランドからやってきた若者とアルバニア難民。
列車をテーマに3人の巨匠が共同監督した”半”オムニバス映画。


『木靴の樹』のオルミ、『桜桃の味』のキアロスタミ、そして今年『麦の穂をゆらす風』でついにパルムドールを獲得したケン・ローチ。
このラインナップ、ものすごくないですか?問答無用の豪華さ。銀河系集団。

名のある監督があるテーマの下に短編を持ち寄るオムニバス作品は多々ありますが、各監督の力の入り具合にバラツキがあったり、思い切った冒険をしてしまう監督がいたりで全体としてまとまりの無い作品になってしまうことが多いように思います。
まあ、こういう作品の場合、観るほうも、作品の完成度なんかよりもそれぞれの監督の個性を楽しんで観たりしているわけですが。

しかし、この『明日へのチケット』は一味も二味も違う。各監督の個性を味わうのと同時に、作品の完成度も楽しめる。

老境に差し掛かった大学教授の、ある女性に出会ったことによって呼び覚まされる朧な想い出。
ナイーブだったあの頃を思い出した彼のささやかながら勇気ある行動。
決して饒舌ではありませんが、というかだからこそ深い余韻を残すオルミ編。

絵に書いたようなオバサンの図々しさを発揮する将軍の未亡人に翻弄される人々をユーモラスに描きながら、そこにしっかりと市井の人々への愛情をにじませるキアロスタミ編。

普段は地元のスーパーで働き、セルティックを応援することが唯一の生き甲斐。
そんなスコティッシュ庶民が思いがけず移民問題に直面し、アルバニア人家族の運命を決めなければならなくなる―。
移民問題は他人事ではない、という重いテーマをあくまでも爽やかに直球勝負で描くケン・ローチ編。

それぞれの監督が自分の手癖をしっかり主張しながらリレーのように次の監督につないでゆくこの作品ですが、その流れが全然不自然ではない。
静かなオルミ編からユーモラスなキアロスタミ編を経由してローチの感動編に至る。
三人三様の作風ながら、全ての作品に共通する暖かい人間賛歌が快い後味を残してくれます。

しかしケン・ローチ、絶好調ですね。
もうすぐ公開の『麦の穂をゆらす風』も楽しみになってきました。
コメント (13)
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