一身二生 「65年の人生と、これからの20年の人生をべつの形で生きてみたい。」

「一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」

本谷 有希子(1979年7月14日 - )

2013年05月09日 | 芥川賞

本谷「作家は才能があるに越した事はないが、日々の生活、人間が作品を形作るので、才能は重要なことではない。」

大江「才能を超えるところに、小説家としての世界が開けることが、最も大切である。」

僕も本谷さんはカッコイイ靴はいてるなあと思って見てました。
でも辛口な批評もあったみたいですね。
そういえば大江さんが試着室に入ったことがないという発言が個人的には対談の中で一番の衝撃でした。
(「試着室とはこういうものだと思ってください」って、試着室を知らないの会場中で大江さんだけだよ!と聴衆のだれもが心の中でつっこんだはず)
それでも問題なく小説を読めてしまうのは大江さんの想像力と本谷さんの描写力のなせるわざなのでしょう。

本谷さんの小説やエッセイはここ何年か読んできているのですが、彼女が二十代の頃の作品は自意識に苛まれる登場人物が多くて、
とてもイマドキな意味での「私」(アイデンティティ)が主要なテーマだったのではないかと思います。
それこそ本人をモデルにした『ほんたにちゃん』という小説まであって、自虐的・嗜虐的な笑いが特徴的でした。
それが、一昨年に発表した前作『ぬるい毒』から作風が変わってきていたので、
今回の対談を聞いて、本谷さんの中で「私」や「個」があまり意味を持たなくなってきたのだな、と腑に落ちました。
「才能が必要だとはあまり思わない」なんていう言葉が彼女から飛び出そうとは、以前ならちょっと考えられなかった気がします。
その変化が、年齢的に自意識から卒業したということなのか、作家として新たなステージに進んだということなのかわかりませんが、
ともかく本谷さんにとっての(おそらくは大きな)変わり目に、大江さんという規格外の聞き手(?)をもって、生の声を聞けたのは貴重な体験だったなあ、としみじみ思い返しています。

_b_l___b1_2 

本谷 有希子(1979年7月14日 - )は、日本劇作家演出家女優声優小説家。石川県出身。「劇団、本谷有希子」主宰。

Motoya2 Motoya1 Motoya

2000年9月、「劇団、本谷有希子」を創立。劇作家・演出家としての活動を開始する。2002年、『群像増刊エクスタス』に「江利子と絶対」を発表し小説家デビュー。サイトで連載していた小説を読んだ編集者が声をかけたことがきっかけとなった。

2005年4月から2006年3月までの1年間、ラジオ番組本谷有希子のオールナイトニッポン』のパーソナリティを務めた。この番組がきっかけで彼女を知った人も多い。2005年には、小説『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が第18回三島由紀夫賞候補となる。

2006年、小説『生きてるだけで、愛。』で第135回芥川龍之介賞候補となる。

2007年、『遭難、』で第10回鶴屋南北戯曲賞を史上最年少で受賞、小説『生きてるだけで、愛。』が第20回三島由紀夫賞候補となる。同年『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が佐藤江梨子主演で映画化された。

2008年、小説『遭難、』で第21回三島由紀夫賞候補となる。

2009年、「幸せ最高ありがとうマジで!」第53回岸田國士戯曲賞白水社主催)を受賞。「あの子の考えることは変」で第141回芥川賞候補となる。10月には雑誌『VOGUE』により、日本を代表する女性10人を選ぶ『ヴォーグ ニッポン ウィメン・オブ・ザ・イヤー2009』を受賞。

2011年、小説『ぬるい毒』で第24回三島由紀夫賞候補、第145回芥川賞候補、第33回野間文芸新人賞受賞。

2013年、小説『嵐のピクニック』で第7回大江健三郎賞受賞。5月7日、シンガーソングライターで映画監督の御徒町凧と入籍。