一身二生 「65年の人生と、これからの20年の人生をべつの形で生きてみたい。」

「一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」

ブロンボス洞窟

2017年05月29日 | 社会

 ノルウェーのベルゲン大学の考古学者ヘンシルウッド(Christopher Henshilwood)によると,ケープタウンの300km東にあるブロンボスという洞窟で発見された巻き貝の貝殻は,大きさが完璧に揃っており,どれも皆,口とは反対側の同じ箇所に孔があいている。

  ヘンシルウッドは,7万5000年近く前に人類が貝殻を集め,ビーズ飾りを作るために,孔を開けたと考えている。その見方が正しいとすれば,これらの地味な貝殻は,まさに人類の至宝ということになる。

 

 なぜなら,これはこれまでに見つかった人類最古の装身具の証拠であり,私たちの祖先が一般に考えられているよりはるか昔から現代人と同じように思考していた証にほかならないからだ。

 

 骨格などの形態でみると現生人類の起源は,アフリカにあるというのが有力だ。2003年,エチオピアのヘルト村近くで発見された化石から,現生人類はすでに16万年前に出現していたことが明らかになった。さらに今年2月,エチオピアの別の遺跡であるオモ・キビシュから出土したホモ・サピエンスの化石の年代再測定結果を発表した。解剖学的にみた現生人類の起源は19万5000年前へと遡る可能性が出てきた。

 

 しかし,人類がいつ頃から現代人と同じような精神を持つようになったかについてはわかっていなかった。ここ20年の研究では,人類が現代人のように高度な道具を使いこなすようになったのは,約4万年前のことだと考えられてきた。

 

 だが,もっと以前から現生人類が使うような象徴的思考能力を持っていたのではないかという疑問がおこっていた。この疑問を裏付けたのが約7万5000年前のブロンボス洞窟の出土品だ。

 

 孔のあいた貝殻ビーズのほかに,骨器で文様を掘られたオーカー(赤鉄鉱)など,おしゃれの道具や贈答品として使った可能性のある道具が多く出土した。