怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「やさしい訴え」小川洋子

2016-03-11 22:27:06 | 
小川洋子の作品には、聞いたことはあるけれど普段の生活ではあまりかかわりもなくてほとんど知らないようなものが舞台装置で出てくる。
「博士の愛した数式」ではもちろん数学
「猫を抱いて象と泳ぐ」ではチェス
そしてこの本「やさしい訴え」ではチェンバロとカリグラフィー、チェンバロはバロック音楽の時に演奏されるピアノが出てくる前の楽器という程度の知識は知っていましたが実物は見たことがありません。カリグラフィーなるものは初めて知りました。まあ、小説の中にも少し触れられていますけど、カリフラワーとかガリバーだの、カルシウムだと間違えられたということですので知らなくて当然か。
この本は先日中日新聞の書評で取り上げられていて、評者は「博士の愛した数式」よりも好みということでした。それならばと早速図書館で借りてきたのですが、書評の威力は大きくて1996年発行の本ですが、予約が何件か入っていました。

でも、これも好みの問題なのですが、私としてはやっぱり「博士の愛した数式」の方がいいですね。
夫に愛人ができ、実家の持っているもう10年も使っていなかっただろう別荘(たぶん東北かな?)に逃げてきた主人公。その別荘の近くというか隣なんでしょうね、に住んでチェンバロを作っている新田と助手の薫。それぞれ心に傷を持っているこの3人の密やかな緊張感のある三角関係。
どうも小川洋子らしからぬというか心がざわめいていくような静かな艶めかしさがあります。これってやっぱり小川洋子の30代の作品だからでしょうか。
私とすれば「人質の朗読会」のような心に染み入る生きることの素晴らしさというか悲しさというかが読後感としてじわっと出てくる方がいいんですけどね。だいぶ脂気が抜けてきたと言うか、私が還暦を過ぎているという証拠なのでしょうか。

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