絵画との出会いから

絵を始めた動機、作品の思い出、絵の仲間との出会い、支えてくれた家族との思いなどを、絵画作品とともに記録するブログです。

ミュシャ展を観て

2017-07-02 21:53:02 | 日記

3月8日から6月5日まで国立新美術館で開催されたミュシャ展を6月2日に観に行った。入場券を買う迄40分、会場に入場する迄2時間弱かかるほどの混雑と人気であった。少々遅れた感想だが、私にとっては非常に刺激的であったのでこの印象を残しておきたいと思ったので投稿することにする。

アルフォン・ミュシャは現在のチェコ出身でスラブ民族であったこともあらためて知った。幼少から絵が好きで絵描きを志してフランスに行き、商品ポスター等を描いて生活していたが、彼のリアルでゴージャスな商品ポスターやデザインを見て、当時の劇場の大女優であるサラ・ベルナールから彼女のポスターを依頼されたことを契機に女優ポスター画家として有名となり、膨大な注文を受けて莫大な利益を得たが、同時に多忙を極め体力を消耗した。

      フランス時代のミュシャ

                

我々が知っているミュシャの絵というと、この時代の優雅な女性を花や植物でデザインした画家である。女性は美人ばかりで女性の姿を太い輪郭線と曲線で優雅に表現する手法に、私は今迄の油絵の範疇に入らない魅力を感じていたし、日本画の筆使いとの類似性を感じていた。まさにこの絵画手法がアールヌーボー時代の幕開けとなったのである。

      ジスモンダ       カーネーション

           

裕福になり財産を築いたが多忙で疲弊したミュシャは1910年50歳になり故郷のチェコ・プラハに戻った。当時のチュコはドイツ・ハプスブルグ家の支配下にあり、民族は圧政の元で苦難な生活をしていた。ミュシャはこの民衆の為に絵を描こうと「スラブ叙事詩」をテーマとした絵画制作の目標を定め、生涯を捧げたのである。

      スラブ叙事詩制作中のミュシャ

      

 ミュシャが制作した「スラブ叙事詩」の絵画は幅8M,高さ6Mから10Mと通常の油彩画の規格を大きく超える大作ばかりで、鑑賞するのはかなり離れて見る他なかった。従って会場も順番に捕われないで自由に鑑賞できるような配置になっていた。しかしながらこれらの大作がはじめて海外に出て鑑賞できたのは幸運だった。制作には空いているお城(スビロス城)をアトリエとして借切って数ヶ月かかって1枚を描いたということや画面に出てくる人物は全て民衆に衣装を着せてスケッチしたことも聞いた。

   原故郷のスラヴ民族        スラヴ民族の賛歌

      

作品それぞれの感想は記述できないが、大画面の主役や中心が全て民衆であり、支配者に対する怒りや不安を訴えており、幸福な生活や未来を求めて何かを訴えている表現であった。従って決して楽しい絵でなく緊迫感のある画面ばかりであった。

      

油彩画の表現方法については、全体に薄塗りのようで褐色系の画面が多く画面の上の方から明るさを効果的に表現する構図が参考になった。そして重厚な戦場の画面にも死人や血なまぐさい血の色はどこにも見当らなかった。

     大画面の中心は常に民衆(後ろ向き)

      

      民衆の目線は左側にいる演説者を観ているが・・・

 今回の展覧会を観て、私はミュシャをデザイン画家としてしか認識していなかったことを大いに反省した。彼はスラブ民族の苦難と体制への抵抗を訴えた「歴史画家」であった。そして自分の絵画と残りの生涯を民族に捧げた信念の画家であった。私は絵画には必ずその画家の物語りがあると思ってきたが、正にミュシャはその典型的な画家であった。

この崇高な思想をもった画家であったが、第一次世界大戦のナチス・ドイツ軍に捕われて獄中で生涯を閉じた。78歳であった。おそらく苦しまず静かに天に召されたのではないでしょうか。

 

 


第17回オー美会展の結果報告

2017-05-02 22:42:51 | 日記

前回のブログでお知らせした第17回オー美会展の結果報告と私の出展作品、印象に残った作品のいくつかを掲載してみたいと思います。

既述のごとくオー美会展は日本IBMのOB/OG有志の美術展で、絵画部門、 陶芸部門、写真部門の3部門で構成されており、今回は各部門で新会員が増えて、絵画9名、陶芸6名、写真6名計21名の参加者となりました。

            参加者全員写真

        

 会期は4月14日(金)から19日(水)まで、JR大崎駅の北口にある 品川区立のO美術館を全館貸切で実施しました。全体の評価は見ていただいた方々にお任せしたいですが、期間中に観覧いただいた方は500名を超えて昨年を上回りました。私の個人的な感想を述べれば絵画部門はいつもの日本画の大作もあり、水彩画に新人が2名加わり作品も多くにぎやかとなりました。陶芸部門は趣向を凝らした作品があったが今迄より作品が少なく少々寂しかった。写真部門は鉄道写真家が加わったり、新しい視点からの作品が多く、それぞれの出展者の写真撮影の物語が面白かった。

以下、私の作品と私の偏見と独断による印象的な作品を掲載してみます。

           私の作品(油彩画) 

   「和の静物」            「ピンクとブルーの光の中の人物」

                    

         ミュージシャン・スケッチ

     

              絵画部門

       油彩              水彩

  

     日本画                 水彩画(新人)

                    

              陶芸部門

         信楽焼                 絵付け

              写真部門

     

     王滝紅葉             ベイリービーズ

                               10年に3秒のシャッターチャンス

来年の第18回展は3月に開催予定


第17回オー美会展のご案内

2017-04-13 21:55:18 | 日記

絵を描いているひとにとっては、作品を発表する機会があることは、目標の一つであり励みになるものです。そして皆さんの感想を頂くことが次の励みになります。昨年もご紹介しましたが、毎年開催している元勤務していた会社「日本IBM」のOBの仲間達で開催している美術展です。

「第17回オー美会展」の情報をご紹介します。

今年は新しい会員が増えてにぎやかに新しい作品が展示されます。    このブログをご覧の方々のご来場をお待ちします。。

 ・      第17回 オー美会展:会期 4/14(金)-4/19(水)

・      会場 : JR 大崎駅   品川区立「O美術館」(全館貸切)

・作品分野は絵画だけでなく陶芸、写真もあり大変楽しくご覧に     なれます。過去の作品はホームページ http://oobikai.sakura.ne.jp  で検索ください。

会期中のご案内や会場のご案内は添付のご案内はガキを参照ください。

   


横浜市民ギャラリー鑑賞サポーター結果報告

2017-03-25 10:54:24 | 日記

3月3日から19日まで、横浜市民ギャラリーの収蔵作品のなかから春夏秋冬に描かれたものや、各季節を感じさせる戦後美術品の中で横浜にゆかりのある、または横浜をテーマとした絵画、版画、写真、漫画95点を展覧する「季節をめぐる」という展覧会が開催されました。                 

               展覧会パンフレット  

    

この展覧会で観覧にきた方々に鑑賞サポーターとして、素人の希望者から選抜されたサポーターが自分が選んだ作品1点を観客の前で説明するイベントがあり、ボランタリーとして参加した。5分間で作品を説明して自分の感想も述べるということで事前の研修や発表の訓練をして、会期中の2日間(3/12.18)のどちらかでトークをした。久しぶりに緊張して大変勉強になった経験であった。                        

私は横浜ゆかりの画家「国領経郎」の点描「真鶴風景」(秋)を選択してトークをしたのでそのトーク内容を記載して残しておくことにします。 終わってみればあっけないひと時であったが、説明迄の調査や研究がしっかりと残り、画家や絵画を自分なりで説明したり感想を述べることがいかに大変なことであることをあらためて感じた一日であった。      サポーターは中学生から私のような70歳までの10数人であったが、個性が出て大変楽しい経験であった。さて観客の評価はいかに?

        私の選んだ国領経郎点描「真鶴風景」     

           

          私の説明トーク内容

皆さん今日は鑑賞サポーターの高瀬です。

これから国領經郎(こくりょうつねろう)の油画の説明をさせていただきます。国領さんは横浜市井戸が谷(今の中区)に大正8年に生まれた横浜ゆかりの画家です。本作は画家が48歳の時の作品で点描という技法で描かれています。

点描というのは、19世紀印象派の後期に出てきたとスーラをはじめとする「新印象派」が開発した絵画技法です。一定の光学理論に基づいて色をパレットの上で絵具を混色しないでそのままカンバスに並べて描く手法です。完成したものは離れてみると混色と同様に見えます。国領の点描はご覧のように厚塗りの点描で光があたる具合で、陰や光る部分が出て色調や絵肌に変化ができる画面となっています。お隣のブースに中西新太郎さんの点描がありますので比較してみてください。

本作は真鶴の風景ですが、海岸線や山並みの曲線と崖と家屋の直線と正面の大きな樹で構成されており、この樹で遠近感を表現して全体として安定感がある構成で、画家がよく用いた褐色と青の点描で描かれています。 私はこの絵から静かな雰囲気(静謐)と少し寂しい孤独な国領の心境を感じます。                             国領のその他の点描としては、横浜の「外人墓地」や赤煉瓦倉庫を描いた「船のある風景」や奥様を描いた「赤い服のA子」が有名です。会場に図録がありますのであとで見てください。

  船のある風景(赤煉瓦倉庫)      赤い服を着たA子(奥さんの画)

  

国領の画風は年齢を重ねるに従って変化して行きまして、最初は人物や風景の写実的な画風でしたが、50歳を過ぎると砂丘(すなはま)をテーマとした心象風景画に移ります。そして国領と云えば[砂丘の画家]といわれるほど、人物と砂丘とで構成された名作を多数残しています。     これも図録がありますので後でご覧ください。

     国領砂丘絵              国領画伯

   

最後に経歴を簡単にご紹介しておきますと。             国領は画家に成る迄大変苦労した方で、幼いときに両親に死別して兄が(現)芸大彫刻科に入学したことに刺激され、同じ芸大図画師範科に入学して先生の道を選びましたが、太平洋戦争の兵役で中国に派兵されました。終戦後教師として新潟の柏崎や東京の大森中学で図画の先生となりましたが、横浜に戻ってからは横浜国大の教授まで勤めました。    28歳の時に日展に初入選してから、日展や光風会に所属して理事や日本芸術院会員となり、勲3等瑞宝章を受章しています。またテレビなどのメデイアでも活躍し79歳でなくなられました。            実は彫刻にも作品があリまして、66歳のときJR横浜駅東口の横浜新都市ビル(ポルタの入口)の壁面に「希望」という題のレリーフ(壁彫)を制作して今でも横浜市民に親しまれています。横浜駅に行かれましたら是非 見てください。 以上です。有難うございました。

           壁彫レリーフ「希望」

   

       


人物首像制作(第一回)

2017-02-28 21:06:29 | 日記

何十年も絵を描いてきたが、はじめて人物の彫像制作を学ぶ機会を得た。隔週の日曜日に通っている横浜関内アートスクールで3回の「人物首像制作」の実習に参加している。

       

貴重な経験なので制作過程を3回に分けて写真で記録することにしました。

第1日の記録(円形の机の配置で制作)

① 頭部の土台となる芯棒を板のうえにたてる。一本の棒に2本の小さい角材を濡れた麻ひもを何十回も巻き付けて固定する。位置が難しかった。

② 粘度の水分をとることと粘り気を調整するために力一杯こねて、心棒に固まりでつけていく。この段階迄はモデルさんは居ない。従って自分のイメージで貼付けてゆく。

③上記の作業が終わる頃から円の中心にモデルさんが入り、45度づつ右に回転してゆくのでその姿を見ながら、まだ粘土をつける作業を続ける。

④モデルさんが3回転する頃から、形態を整えてゆく。しかしながらここでは絶対に粘土の表面をすべすべにしないことというアドバイスがあった。まだまだごつごつの形態で積み上げてゆく段階のようである。

⑤最後のモデル観察のときに練習と思い、粘土へらを使って粘土のつけ過ぎや形態の狂いを調整するため粘土を削る作業を試みた。粘土へらの威力を実感した。

       ①             ② 

    

       ③              ④

     

               ⑤

 

ここ迄の作業を通して、今迄絵に描くときは、自分の場所から見える対象物を平面で描いていて、いかに立体的に奥行きや厚さを意識しないで描いていたかを実感した。正に「形態」という物に対する認識を体験できたことがうれしかった。

後2回でどのような問題や困難があるか、未知の領域に入る。