MIT MBA留学日記 ~ その後

2009年6月の卒業後、西海岸で社会人生活を再開。新しいタイトルを思いつくまでこのままのタイトルで続行する日記。

サブプライムおまけ

2008年10月23日 | 講演会に参加

サブプライム書いたついでに、おまけです(英語)。
例によって学生同士のMLにYouTubeのリンクが流れてきたものです。
どうやって見つけるんだろうなぁこういうの。

How the markets really work


なんか、イギリスのコメディアンみたいです。

ただ内容は意外とちゃんとしています。

ちなみに会話に出てくるSIVが、こちらで書いたSPCのことです。


次郎長もびっくり

2008年10月20日 | 講演会に参加

一年目は節操なく色々なところに顔を出していたが、二年生になってからは かなり絞り込んでいる。

いい意味で 『選択と集中』 をしようとしているのだが、実は最近ちょっとウズウズしてきた。

好奇心の虫というのか、無節操の虫というのか。


ということで今日は、イベントウォッチャーの友人が行くプレゼンについて行ってみた。

MIT経済学部の卒論発表で、日本の政治をテーマにしたプレゼンが行われるという。
(ちなみに卒論発表の場をこちらでは『Defense』と呼ぶらしい)



"Political Coalition" がテーマとの事だったので連立政権とかそういう話かと思っていたが、実は市町村合併の話でビックリ。

しかも分析の対象が静岡県の浜松市とかで、二度ビックリ。

ボストンくんだりから、日本の一地方を研究対象にしている人がいるんですね・・・。
* まぁ今回のケースは研究対象というか、分析の題材になっていたわけだが。


さらにおまけに、プレゼンの中に山ほど数式が出てきて、またまたビックリ。

浜松市の市町村合併を、

  Cm(g) = g(Β0+Β1 POP m) + Vm

などという数式で語っている人がいるとは、よもや想像もしてなんだ。


結局 Take awayは、『市町村合併に市場原理の導入はそぐわない』、というものらしかった。

博士課程のマジな研究発表の場だったので、一生懸命聞いていた割には半分も分からなかったが、卒論発表ってどんなもんかを知れたことと、なるほど博士課程まで行くとああいう分析をやるのね、ということが分かってよかった。


多分俺は一生やらないだろう。


ゼロだと思ったらイチだった(サブプライム問題 3/3)

2008年10月18日 | 講演会に参加

こちらの続きです)
* 「俺でも分かった(?)サブプライム」と題して、その仕組みを自分なりに整理しています。

前回は、証券化の仕組みによってリスク商品から「安全な部分」だけを切り取り、それを売買のたびに繰り返した経緯を整理した。

残る問題は、なぜそれが「安全」と信じられたのか、そしてなぜ「安全」なはずの資産が大暴落を起こしたのか、である。


問題3: 「安全」のお墨付き

ここで格付け機関が登場する。

Standard & Poors、Moody's に代表される格付け機関は、社債や国債などの債権の返済能力を格付けする。
例えば社債の場合、発行企業の余剰資金や営業キャッシュフローが社債発行残高に比して多いほど、返済の可能性は高い、ということで高い格付けを得ることができる。
高い格付けがついていれば、投資家は手間のかかる信用調査を行わなくても、その資産が持つリスク度合いを計ることができる。

ところでサブプライム資産は、特定目的会社(SPC)の資産として運用されていた。
そのSPCが社債を発行することで、実際のサブプライム資産取引が行われていたので、格付け機関はこのSPCの社債も格付けを行った。
そして広く報道されているように、格付け機関はサブプライム債権から抽出した「安全部分」に、AAA(Aaa)という最高格付けを付与したわけである。

なぜ最高格付けを付与できたのか?

これは前述の通り、「10の債権があったらそのうち一つは必ず返ってきますよ」という考えが背景にあった。
統計的には、10の債権間のCorrelation(相関)は限りなくゼロに近い、という前提を置いていたことになる。
Aさんがコケることは、Bさんがコケることとは無関係、ってなことである。

これは実際、米国の過去の不動産市場を見ると、そのような結果になっているという。
サンフランシスコの不動産価値が一時的に下がっても、同じ時期にニューヨークの不動産価値は上がっている、ということが常に起きていた。
つまりできるだけ資産を分散させれば、全部がすべて価値を落とすことはないはずだ。

10の(よく分散された)サブプライム資産があれば、統計的に必ず1は返ってくるはず。
その「過去の実績」をベースに、格付け機関はその1に対してAAAのお墨付きを与えていたわけだ。


「安全」の崩壊 = 統計のワナ

ところが、米国が過去100年近く、一度も経験したことがないことが起こった。

不動産市況が、全面的に下がりだしたのである。
ニューヨークもサンフランシスコもフロリダも(程度の差はあれ)下がってしまった。

これはCorrelation = 1 の状態である。Aが下がるとBもCも下がる。
大前提のCorrelation = 0ではなくなったため、最高格付けをはじき出した計算が狂ってくる。
「10の資産があっても、ひとつも返ってこないかもよ!」ということが、白日の下に晒された。
AAAだと思っていたものが、実は返ってくる確率の低いジャンク債だったわけである。

こうなるとモロい。

誰もそんな債券、買いたくはない。
信用不安が起こり、資産価値は下がるどころか、今どの程度の価値があるのかさえ分からなくなった。
サブプライム債権の市場で値段がつかなくなったからだ(これが昨年秋に起きたこと)。

更には親亀(サブプライムローン)の上に小亀(ローンを担保とした証券商品)を乗せまくったせいで、上の方では自分がどの親亀に乗っているのか、分からなくなっている。

更に更に、親亀の上には複数の小亀が乗っているのでそれぞれが権利を主張しだすと、もうニッチもサッチもいかない。
だって親亀は既にコケていて、分け前なんてほとんどないのだから。

小亀の価値は地に落ち、飼い主は大損を蒙った。

ちなみにこの小亀を大量に飼っていたのが、リーマンブラザーズに代表される投資銀行である。


システムはダイナミクス

これ以外にもたくさん面白いトピックを聞いた。

何で2000年ころにこういう問題が発生したのか(=クリントン政策の影響)とか、個人の与信力査定の問題(=Assets Based Financeと消費の関係)とか、金融システム上の問題(=融資書類の不備、モラルハザードの問題)とか。
話を聞けば聞くほど、問題は複雑だ。

で、結局誰が悪かったのか?投資銀行?格付け機関?政府?

浅学の私には分かりませんが、それでも、名指しはなかなかできないんじゃないかと思う。
今は結果が分かっているので、振り返って批評や非難をすることは誰にだって簡単だが・・・・。

今取っているクラスの一つに、システムダイナミクスというクラスがある。
システムダイナミクスとは国や会社の政策・戦略と、それが及ぼす結果(副作用も含む)との因果関係を分析する学問。

下の写真のような図解をして考えていくのだが、これがなかなか面白い。

サブプライム問題も、こういうシステムの作用・副作用が大きく増幅した結果起きた問題である。
なんていうと学者さんみたいでナンなのだが・・・。
考えれば考えるほど、誰かを非難して終わるレベルの話ではないような気がしてくるのである。


ゆきだるまの仕組み(サブプライム問題 2/3)

2008年10月13日 | 講演会に参加

こちらからの続きです)
* 「俺でも分かった(?)
サブプライム」と題して、その仕組みを自分なりに整理しています。

風雲急

前の回を書いて数日しか経たないのに、それから日米で株価は10%以上落ち、モルガンスタンレーに21%出資するはずだった三菱東京UFJが出資見直しの検討に入っている(逆に、モルガンスタンレーの株価急落を受けて50%を超える出資も可能性を増している)。
G7は揃い踏みで、声明ではなく行動計画にまで踏み込んだ発表をする。それでも株価は下がっている。
まだまだ先がありそうな、今回の金融危機である。

なぜここまでのことになったのか

あまりに大きな事態となった今回の危機、元をたどればアメリカの不動産バブルがはじけただけの話である。
そこだけ見れば、世界が揺れ動くほどのものでもない。
なのになぜここまで大事になったのか?

自分は金融のバックグラウンドもないし、不動産の専門家でもないので知識レベルは限られているが、先週行われたファンドと教授陣のプレゼンによると、こういうことらしい。
自分のレベルに合わせてできるだけ分かりやすく書きますので、お付き合いください。

問題1: 親亀コケたらみなコケる

サブプライムでお金を借りた人の債務(借金)は、証券化によって新たな商品となり、債権者から別の投資家に売られる。
売られた債権は、更に次の証券化が行われて別の投資家に売られ、また次の商品となる。

ここでいう商品は、リスク商品である。
その辺の店で買う普通の商品なら、問題があれば返品するということも可能だが、リスク商品は問題があったらゼロになるだけ。
そんなリスク商品が、親亀の上にどんどん積みあがっていったわけだ。

そこで親亀がコケた。
不動産市況の悪化により、不動産価値の上昇を見込んで組んだローンを返済できない人がでてきたのである。

親亀コケれば、みなコケる。
1のローンが返済できなくなったことが、3も4もの損を生んだわけだ。

問題2: 100%果汁グミの原理

なぜ、リスクの高いサブプライムの債権が、それだけ売買できたのか?
ここで「進んだ」金融技術が登場する。

サブプライムローンはリスクが高いが、完済される可能性は当然ゼロではない。
サブプライムローンが10あって、それぞれの返済可能性が10%だとすると、九つは不履行になったとしても一つは返ってくる計算になる。

ということはサブプライムローンを10コパッケージにして、ウワズミの10%を商品とすれば、返済確率100%の債権が出来上がる。
その商品は安全債権、ということになる。安全債権であれば、売買は容易。市場が一気に膨らんだわけである。

この仕組みを聞いていて、高校生のときに好きだったお菓子、「果汁グミ」のことを思い出した。
部活の帰りに買い食いしていた「果汁100%グミ」というお菓子があったのだが、フト袋の裏を見ると、小さくこういう但し書きがあった。

   「本製品は濃縮5倍の果汁を20%使用しています」

おや。てことは混じり物が80%あるってこと?でも100%なの?
やっぱ果汁100%っておいしいよね!とか思いながら食ってただけに、ちょっと裏切られた思いの、青春の甘い思い出である。

ちょっと違うかも知れないけど・・・。


とにかくリスキーなサブプライムから抽出された、安全債権。
しかしその安全のお墨付きには、ある統計上のワナが潜んでいたのである。

つづく


楽天

2008年10月12日 | 講演会に参加

二年生になったら楽になると聞いていたが、実際は結構大変。

この週末も重い宿題とチームプロジェクトが合計で4つあり、ずっとPCと向き合っている。

そんな中、昨日、以前お会いしたことのある楽天の方から連絡があった。

同社の三木谷さんがボストン入りしており、MITとHBSの日本人学生と会って話がしたいとおっしゃっているそうだ。

そんなわけで今晩は急遽 三木谷さんとの懇親会。

楽しみだ。


あのことが、こうなった(サブプライム問題 1/3)

2008年10月08日 | 講演会に参加

熱くて寒いトピック: サブプライム問題

サブプライム問題から発生した金融危機が、問題としては寒いが、MBAでのトピックとしては今一番熱い。
先週この問題に関して、ヘッジファンドのゲストスピーカーのプレゼンと、有名教授陣のパネルディスカッションが行われたので、その両方に参加した。
そこで話を聞きながら、へぇ、あのころのあのことが始まりなのね、という感慨を深くした。


あのころ、あのこと

自分が住宅購入を考えたことは、過去に二回ある。

一度目は、結婚を決めて、新居探しをしたとき。
カネはなかったので賃貸するのが現実的だったが、結婚ともなると将来のことを考える。
マイホーム購入ってどんなものか、一応調べてみた。
結局調べている最中に、アメリカに駐在することが決まったので、賃貸も含めて新居探しは途中でやめた。

二度目は、ニューヨークに駐在してまもなく、2000年末から2001年にかけてのことだ。
ここでも賃貸を中心に探したのだが、先輩駐在員の話によると、
アメリカでは賃貸は比較的高く、購入してしまったほうが結局安いという。
歴史的にアメリカの不動産価格は上がることはあれど、下がったことはほとんどないので、帰国時に住宅を売却するときも安心。
損失をこうむることはほとんどないという。
実際、駐在時に思い切って自宅を買った人のほとんどが、帰国時に売却して利益が出していたようだ。

さらには驚いたことに、アメリカでは頭金ゼロでも家が買えるという。
金融市場が発達しているので、不動産ローンも相当フレキシブルに貸してくれるらしいのだ。
日本で調べたときは頭金を3割は用意しろ、と言われた気がするし、更に話を進めていれば、返済能力についても相当厳しい審査があったはず。
アメリカでは審査も比較的カンタン、という。

おいおいこれなら俺でもイケるかも!?と思った。カネはないけど。
アメリカの広いおうちを自分のものにできるかも?カネはないけど。
しかも、帰国するときに売れば儲かっちゃうかも!?カネないし!

・・・結局、ちょっと色気は感じたが、当時26歳の自分にはどう考えても分不相応なので、止めた。


そして雪だるまは大きくなって、崩れた

自分は結局やめちゃったので、買ったらどうなっていたかは分からない。
ただここでのポイントは、分不相応な自分でも、当時のアメリカでは住宅購入が現実のものとして考えられたということだ。
さすがアメリカの金融は発達してるんだなぁ(?)と感心した覚えがある。

頭金もなく、大した返済能力の審査もなく、夢を買った人がどれほどいたのか・・・。

そして「発達した」金融が、雪だるまをどんどん大きくしていった。

つづく


スポーツもビジネス (MLB CFOの講演)

2008年02月16日 | 講演会に参加

今学期は今まで以上に勉強に集中しようと思っている。

そのため 講演会などのExtra Activityは、できるだけ避けている。

おもしろそうな講演が目白押しなので、もったいないなぁ・・・。

と後ろ髪引かれるのだけれど、勉強でいっぱいいっぱいなので仕方がない。

涙を飲んで、パスしている毎日である。



でも、(さっそく)誘惑に負けて、行っちゃいました。

参加したのは、メジャーリーグベースボール機構(MLB)の CFO、Jonathan Mariner 氏 (
バイオ)の講演会。

先週 Sloanで行われた。





Mariner 氏は
HBSの卒業生(1978年)。

HBS卒業後はファイナンシャルアナリストとしてのキャリアを選んだが、1992年に「縁があって」
フロリダマーリンズのCFOに就任。それ以来、スポーツビジネスの世界にいるという。

2002年にMLB機構のCFOに就任。

この年はまさに
選手会のストライキ騒動が発生した年である。

講演ではその当時の逸話や、現在のMLBが抱える課題とその対応策を話してくれた。



講演で出た【MLBの課題・戦略】を自分なりにまとめると、以下のようになる。


(1) コストマネージメント

高騰する選手年俸(コスト)をリーズナブルな範囲に抑えるサラリーキャップ制度の運営。ストライキ騒動の発端となった制度だが、他のスポーツでの導入事例を参考にしながら、デリケートに運営しているという。

(2) レベニューマネージメント

MLBは他の米人気スポーツ(NFL, NHL, NBA)と比較して、売上げ全体に占める入場料収入比が極端に大きいそうだ。そこで売上げ拡大のために、入場料収入の極大化(オークション制度の導入)と、入場料以外の拡大(直営のケーブルチャンネル設立)に取り組んでいる。

(3) グローバリゼーション

海外市場への進出。日本がまっさきに
成功例として挙がったが、話の大半は中国市場であった。オリンピックイヤーでもあり、中国は市場の急拡大を見込んでMLBの戦略地域としているそうだ。数ヶ月以内に、MLB機構から中国に視察団が派遣されるとのこと。


ちなみにMariner 氏はHBS卒業生だからであろうか、こういった戦略を練るに当たって 「競争戦略論」で有名なMichael Porter教授に会って相談したりするそうだ。


競争戦略論〈1〉
マイケル・E. ポーター
ダイヤモンド社

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スポーツビジネスとはこういうものか、という事が学べる、おもしろい講演であった。

・・・・ただ、こういう寄り道のあとには、宿題や予習が待っている。

帰宅後は、当然のように眠れない夜をすごしたのであった。