歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

アタテュルク像の串本移設報道に対するトルコ人の反応(1)

2010-02-10 23:37:23 | アタテュルク像問題

この所、トルコの生んだ稀代のコラージュ職人にして未確認アニメ原作者、セルカン氏にかまけ過ぎたお陰ですっかり遅くなってしまいましたが、ようやくこの↓話題です。

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「トルコ建国の父、アタチュルク銅像 新潟から和歌山・串本に移設へ」
2009年12月18日 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/091218/trd0912182002012-n1.htm

トルコ共和国政府が新潟県のテーマパークに寄贈したものの、閉園などによって、屋外に放置されたままとなっていたトルコ建国の父、ムスタファ・ケマル・アタチュルク初代大統領の銅像が和歌山県串本町に移設されることが決まり、18日、串本町が発表した。

トルコの軍艦「エルトゥールル号」が串本沖で沈没した際、地元漁師が救出活動にあたったゆかりがあるためで、沈没から120年にあたる来年6月に除幕される。

銅像が設置されていたのは新潟県柏崎市のテーマパーク「柏崎トルコ文化村」。平成8年に開園したが経営破綻し、17年に閉園していた。その後、施設は結婚式場として利用されていたが、新潟県中越沖地震が発生。倒壊の恐れがあるとして像は台座から外され、屋外に放置されたままとなっていた。

このため「トルコとの友好関係を損なう」という声もあがっていたという。

移設をめぐっては20年3月、駐日トルコ大使館がゆかりのある串本町に打診。町議会も承認するなどして交渉が進められていたが、同園の土地をめぐる訴訟が起き、移設交渉はいったん頓挫していた。しかし、今年10月にトルコ大使館が像の寄贈を要請したところ了承され、移設が決まったという。 

串本町の田嶋勝正町長は「両国民の友好のシンボルとなる像の移設が決まり、うれしい」と話している。
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 今回の急展開の背景には、2010年、つまり今年の“トルコにおける日本年”があるようです。

日本の外務省のサイトによれば、この“日本年”というのは、トルコに関わる日本企業と外務省を中核に官民一体で展開される、日本という国の一大紹介キャンペーンのようなものらしい。具体的には、今年一年の間中、日本文化絡みのイベントやら交流事業がトルコ各地で目白押しなのだとか。

まあ、実行委員会の委員長がトヨタの張会長だったり、日本側の名誉総裁に皇族の仁親王、トルコ側のそれにアブドゥッラー=ギュル大統領を戴いていたりと、トップに錚々たる面子が揃っている所からしても、その気合の入りようが分かろうというものです。先月の4日にアンカラで行われた開催式典でも、日本から岡田外相が直々に出席していましたし。

でもって、そうした友好ムードに華を添えようと、エルトゥールル号事件から120周年にあたる今年の6月に合わせて、串本に件のアタテュルク像を建立することになったと。

ただ、柏崎市の市長派と反市長派のどうでもいいローカル政争の解決を待っていたら6月には間に合わなさそうなので、駐日トルコ大使館がその頭越しに、現在銅像を所有している企業と直接交渉。それを手放させたと。大体そんな所ではないでしょうか。

その交渉に、日本側の政財官界の“偉い人”がどの程度関わったのかは分かりませんが、銅像の移転にかかる費用をあの日本財団が負担するという話からも、何となく想像がつくような.....。

日本財団ブログ・マガジンより↓
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トルコ建国の父像、串本町へ 6月3日に除幕式
[2010年01月29日(金)]
http://blog.canpan.info/koho/archive/974#BlogEntryExtend

トルコは世界でも有数の親日国。今年が両国の友好120周年に当たることから、本財団が関係者との話し合いを進めた結果、串本町への移転が決まった。
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それにしても、

>倒壊の恐れがあるとして像は台座から外され、屋外に放置されたままとな
>ってい た。このため「トルコとの友好関係を損なう」という声もあがって
>いたという。


何だか他人事みたいな文章ですね。そもそも、新潟・中越沖地震直後のものと思われる横倒しになった銅像の写真を、何ヶ月も後になってセンセーショナル気味に公開したのはどこの新聞でしたっけ?。

で、さらに、トルコの新聞がその件を取り上げると、恐らくその記事の内容もろくに確認することなく“「建国の父」に対して非礼だとして、トルコ紙でも報道された”とか、“トルコとの友好関係を損なう”どころか、ほとんど“既成事実として友好関係が損なわれている”かのような報じ方をしていた新聞もあったような気がしますが、どこでしたっけね?

確かどちらも名前をサン...何とか新聞と言ったようなw。

あるいは、ひょっとして、初めから今年の“トルコにおける日本年”を下から盛り上げるための遠大な“仕込み”だったとかw。まあ、どっちでもいいですけどね。とにかく“飛ばし記事”はよくないですよね。何に関しても。

それはともかく、結果として、アタテュルク像の落ち着き先が串本に決まったのは良いことですね。大分前のエントリーにも書きましたが、あの銅像を立てるなら柏崎よりも串本の方が相応しい。別に柏崎がダメだという話ではありません。管理人は串本と柏崎の双方に行ったことがありますが、どちらも良い所ですよ。

ただ、エルトゥールル号事件以来の縁と地元住民の親土感情の高さを思えば、やはり日本中であの町以上に適した所は無いように思えるのです。

まあ、細かいことを言えば、かつての清朝と現在の中華人民共和国が別物であるのと同様に、というか、オスマン帝国(=多民族からなる古典的なイスラーム帝国)と今のトルコ共和国(=トルコ民族が中心の近代的な国民国家)は多分それ以上に異なるわけで、そのオスマン帝国を滅ぼした言わば“張本人”であるアタテュルクの像とオスマン海軍将兵の殉難碑が一堂に会するのはおかしくないか、という話もあるかもしれません。

でも、成立したばかりのトルコ共和国と日本の間に国交が結ばれた後に(オスマン帝国と日本の間に正式な国交は無かった)、トルコ政府がそれらの将兵を“トルコ人”だと認定し、殉難碑が改修されたり、トルコ大使館の関係者も交えた慰霊祭が行われるようになったのは、いずれもアタテュルクが大統領に在任中の出来事でした。

その意味ではアタテュルクと件の殉難者の間にもそれなりに縁はあるわけで、個人的にはそこにアタテュルクの像があったとしても、特に不自然では無いと思うわけです。

ところで、そういうめでたい話とは別に、串本については少々気がかりなことがあります。というのも、ネット上で“串本 トルコ エルトゥールル”みたいなキーワードを入れて検索すると、しばしば不吉な内容の新聞記事に出くわすからです。

例えばこれ↓は、和歌山県の地方紙“南紀州新聞”の2007年6月10日付けの記事なのですが、

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「失敗も大切な経験」
トルコ人初の宇宙飛行士候補セルカンさんがエール送る
串本町大島小で

http://minamikisyu.i-kumano.net/news/2007_06/20070610_00.htm

トルコ人初の宇宙飛行士候補、 アニリール・セルカンさん (34) が8日、 串本町立大島小学校 (山崎多喜雄校長) で、 3~6年生42人を対象に、 挑戦を繰り返してきた少年時代を講演。 「失敗も大切な経験。 いつも前向きに夢に向かって取り組めば、 きっと何でもできる」 とエールを送った。

セルカンさんは東大大学院工学系研究科建築学専攻の助教で、 エール大学の客員教授なども務める。 宇宙エレベーター計画など、 宇宙構造物に関する研究開発で、 ケンブリッジ大学物理賞を受賞

※受賞してないw。

先端技術を応用し、 インフラに依存しないで暮らせる空間技術の開発、 研究をしている。

ドイツ生まれで、 8歳で科学に興味を持ち、 スイスへ留学。 世界各国から集まった級友たちと過ごすが、 15歳のとき、 問題を起こし、 退学。 学業の道を閉ざされ、 何をすべきか迷っていたとき、 テレビの人気番組をきっかけに、 タイムマシーンの実験に挑戦。 一躍注目を集め、 再び進学への扉を開いた

※この辺りは全て脳内での設定で、実際には小中高全てトルコの学校だったらしい。

セルカンさんは 「退学しても宇宙飛行士の候補にまでなれた。 出会いを大切に、 失敗も経験として、 いつも前向きにいれば、 きっとなりたい自分になれる」 と力を込めた。

※なれてないw。

同町は日ト友好原点の地。 セルカンさんは、 トルコ軍艦エルトゥールル号の遭難を教科書で学んだという小学生の従弟から預かった 「エ号を助けてくれてありがとう。 いつか出会えるのを楽しみにしています」 というメッセージを披露。 「距離を超えて、 友愛の心をつなぎ、 世界へ発信して」 と呼び掛けた。

※かなり怪しい。これについては後述。


山下由莉さん (4年) は 「宇宙エレベーターの話がすごい。 まだ何になりたいか決めていないけど、 いろんなことに挑戦したい」、 吉田颯平君 (同) は 「退学しても頑張れるところがすごい。 将来は養殖をしたい」 と目を輝かせて聴き入っていた。

研究を生かすのは人次第
串本高で中高生800人に講演


トルコ人初の宇宙飛行士候補、 アニリール・セルカンさん (34) は8日、 串本高校で同校生徒と町内中学生ら約800人を対象に研究者の視点から講演。 「素晴らしい研究も社会に役立てることができるかは、 扱う人間次第。 みんなで一緒に考えていくとが大事」 と力説した。

8歳で太陽電池に着目し、 高校中退後、 大学も巻き込んで、 タイムマシーンの実験に没頭。 建築学を基礎にさまざまな研究に取り組み、 透明人間のプロジェクトにも携わった。

最先端の技術に関わり続けているが、 「本当に人の役に立つ研究かが大切」 との視点も忘れない。「日本ではロボットが人間の友達の感覚で新鮮。 近い将来、 我々の生活に大きく関わってくるかもしれない」 と話した。

※疑似科学はいらないw。

日本語で好きな言葉は 「ただいま」。 「過去も未来もない。 今が大切と感じる」 という。 また 「無」 は 「訓練で幸せも悲しみの気持ちも表れない自身にピッタリ」 とも。 ただ、「家族を思うときと、 若い皆さんの前で話す機会に感じる幸せだけは抑えられない」 と笑顔を見せた。

※一体何の訓練なんだろう?w

講演後は生徒からの質問が殺到。 「宇宙飛行士候補になってから、 深夜にトルコに帰国しても、 空港に大勢の子どもが迎えに来てくれるようになった」、 「今後は災害時に役立つ仮設住宅の開発に取り組みたい」 などと話した。

※すげえ(棒読み)
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またセルカン氏か!

この人を扱うのは前回のエントリーでやめたはずなんですがね。まさかこんな所にまで関わってこようとは....。

でも、これだけではありません。 実はセルカン氏と串本町の関係は非常に深かったりします。 同じく南紀州新聞の、上記の記事から3ヵ月後の2007年9月2日付けの記事は以下の通り。

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 「セルカンさん大使第1号に 研究と友好に力尽くす 串本町」
南紀州新聞 2007年9月2日
http://minamikisyu.i-kumano.net/news/2007_09/20070902_00.htm

「世界の中で串本の名はトルコ人の心では意味が違う。 これだけ大切にされている町はない。 がんばりたい」 串本大使の委嘱状を松原繁樹町長から受けたトルコ人初の宇宙飛行士候補、 アニリール・セルカンさん (34) が笑顔を見せた。

串本町は1日、 新町誕生後初の 「串本大使」 の任命書をアニリール・セルカンさんに交付した。 松原繁樹町長は 「世界へ串本をアピールしていただきたいが、 インフラのない場所で生活できる研究の場としても町を活用してほしい。 子どもたちとの交流もぜひ深めて」 と依頼した。

セルカンさんは東大大学院工学系研究科建築学専攻の助教で、 エール大学の客員教授も務め、 研究の一つに水道や電気などのインフラがない場所でも暮らせる技術を研究している。 町の大使は 「広報マン」 の役割を担うのが普通だが、 大規模災害に備えて研究課題として町を利用してもらいたい意向もある。

セルカンさんは 「串本はトルコでは教科書にも載っている。 ものすごく名誉なことだ。 串本大使を自分のブランドの一つとして続けたい」 と喜んでいた。

合併する前の旧町で行われていた 「くしもと大使」 は新町の誕生でなくなっていたが、 今年度から復活した。 「視点を変えること」 アニリール・セルカンさん講演 串本大使  トルコ人初の宇宙飛行士候補、 アニリール・セルカンさん (34) が8月31日、 串本町文化センターで 「最先端技術を用いた観光のまちづくり」 をテーマに講演、 会場には町職員や議員ら約60人が詰めかけた。

※候補じゃないw。

セルカンさんは宇宙エレベーター計画など宇宙構造物に関する研究開発でケンブリッジ大学物理賞を受賞

※受賞してないw。

先端技術を応用し、 インフラに頼らないで暮らせる空間技術の開発、 研究をしている。 宇宙エレベータの研究は実際の研究は不可能に近いが、 この研究をきっかけに生まれた素材を日常生活に技術移転するのが目的。

「ワークショップでいくら考えてもできない。 でも想像できることが面白い」 と話す。 宇宙飛行士は自分の尿を浄化して1週間は水分を補給するという話題も紹介した。 全くインフラのない生活の研究もしている。 串本はインフラに頼らない 「インフラフリー技術」 の研究の場とできないかと提案した。

セルカンさんはスキーのオリンピック選手にも選ばれている

※ 選ばれてないw。

「他の選手と同じ方法で滑ると勝てない。 全く違う方向から考えることで金メダルが獲得できる。 視点を変えることが大事だ」 と話し、 物を見る視点の大切さを訴えた。

※獲得してないw。

また、 大島小学校などで子どもたちと交流できたことが思い出深いと話し 「子どもたちに夢を与えたい」 とも語る。

※ 確かに、夢を与えたかもしれない(悪い意味で)w。

「空が好き。 上から全体を見ることができるから。 いろいろな視点を楽しめる」 と講演を締めくくった。
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何と、セルカン氏は初代の“串本大使”らしいのです。

→(2)に続く



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10 コメント

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串本大使 (真実の目)
2010-02-11 04:23:15
未だにセルカンは串本大使なんですかね。
どこの国に対する大使なんでしょう?
在日串本大使ですか?
それはどうでもよくて(セルカン風に)、串本の小学校では道徳の時間にセルカン事件を教材にしてもらいたいですね。
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Unknown (Unknown)
2010-02-11 14:10:16
ここのブログに来てからトルコ人に対する見方が変わったわ
日本は日本しか味方がいないと思った方がいい
台湾は親日~
トルコは~
って妄想すると足元すくわれるよ
返信する
Unknown (裸族のひと)
2010-02-11 17:04:25
>道徳の時間にセルカン事件を教材にしてもらいたいですね

激しく同意。騙して迷惑を掛けた罪滅ぼしとして、せめて反面教師になって役立って貰わないとねー。


>日本は日本しか味方がいないと思った方がいい

全くもって、その通りです。親日或いは反日なんて「ネトウヨ」みたいなもので、レッテル貼りをしても所詮は単なる思い込み。
それに変な方向に誘導される可能性だって有りますからねぇ。右も左も。特にマスゴミと政治家は利用できる事は何でも利用して煽ったりしますから、要注意だす。

こういう人々は先に結論(自分が持っていきたい方向)が決まっていますし、それらの事実がひっくりかえっても意味不明の言い訳するか、ダンマリだから困ったもんですww

次の(2)は、もしかしてア塗るる詐欺事件の串本バージョンでは・・・
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Unknown ( )
2010-02-11 23:41:43
>日本は日本しか味方がいないと思った方がいい

へ?そんなの当たり前でしょ?
世界中のどこの国が自分以外の国を信じているというの?
日本人の「親日」判断基準なんて、プーチンが柔道黒帯だから親日とかどーでもいいさじ加減だよ(笑)日本って相当馬鹿な国民を持った国だと思うよ。
ネトウヨに多いよね、こういう傾向。
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Unknown (天上)
2010-02-12 01:48:34
↑みんな良い国のネトサヨよりよくね?
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Unknown (Unknown)
2010-02-12 03:27:37
どっちもどっちだろ
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Unknown (Unknown)
2010-02-13 09:30:46
突然ネトウヨのレッテル貼りする人って…。
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Unknown (Unknown)
2010-02-14 01:34:14
「毎日ネットウヨクと戦っています」by民団新聞
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Unknown (Unknown)
2010-02-14 13:19:46
>日本って相当馬鹿な国民を持った国だと思うよ。

どこの国の国民も大概そんな能天気かあるいは排外的なやつしかいないよ。

前に沈黙の艦隊読んで「日本人は親米だと信じてたのに私たちのことこんなに嫌ってたなんて!」って嘆いてたアメリカ人がいたよ。
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Unknown (通りすがり)
2010-02-17 10:06:08
いつもサイト拝見しております、突然ですいませんが、いつかお時間空いた時に二言三言でいいので
ロシアで五輪の川口kavagutiさんがどのように言われているか教えて頂けませんか?
彼女はフィギュアスケートペアで五輪にでるためにロシアに帰化した女性なのですが、
今回残念ながらメダルには届きませんでした。ペアはロシアのお家芸で、
今まで五輪で13連覇、なんと48年間もメダルどころか金メダルを取り続けてきました。
それを途切れさせた代表の片割れが元外国人で、しかも帰化して数年も経っておらず、
インタビューなどから察するにロシアという国に対しての忠誠心、愛国心は無い、という感じなのです。
川口さんを選手として尊敬しているので彼女がバッシングを受けたりしないかと思うと胸が苦しいです。
図々しいですがお手隙の間にもご紹介頂けたらと思います。
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