歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

「対日戦勝記念日」制定に対するロシア人の反応(11)

2010-09-22 23:33:31 | ロシア関係
→(10)からの続き

そしてもう一つは、

“第二次世界大戦終結の日”という名称それ自体が気に食わない "

というものでした。

といっても、サハリン(樺太)州やあちらの右派みたいに“対日戦勝記念日”とすべきだと主張しているかというと、さにあらず。ロシア人にとっての第二次大戦の終りは、あくまで“独ソ戦=大祖国戦争”が終結した5月9日であるべきだというのです。

戦後65年間に渡って、ロシアでは5月9日は通称“ヂェーニ・パベーディ(День победы=勝利の日)”として、国家の肝いりで大々的に祝われてきました。学校や職場は休みとなり、モスクワの軍事パレードを初めとして、国内各地で戦勝記念のイベントが繰り広げられます。また、その前後にかけて、メディアは独ソ戦絡みのもの一色(まあ、その手の戦争映画+ドラマは今でも年がら年中やってるわけだけど)となりますね。

こうした環境で育った多くの人々の意識に、第二次大戦終結=5月9日と刷り込まれるのは(あるいは、その後に起こった日ソ戦争の存在が忘れられるのも)、ある程度自然なことかもしれない。

まあ、その辺りの感覚は、正式な降伏調印の日である9月2日ではなく、ポツダム宣言受諾の日=8月15日を“終戦記念日”としてきた日本人には、意外と分かりやすいのではないでしょうか。勝ち負けは逆ですけどね。

ほとんどの日本人にとって、“終戦”と“盆”のイメージは切り離せないものとして定着しているはずです。

もし今の民主党政権が、

“世界標準に合わせて、終戦の日は今年から9/2に変更する。したがって、8/15は平日となる!”

とか言い出したら、若い世代でも反対する人は多いのではないか?

とはいえ、今回のロシアの場合、別に“第二次世界大戦終結の日”が祝日になったからといって、5/9の“大祖国戦争勝利の日”が消えてなくなってしまう訳ではありません。後者が公休なのに対し、前者は“祝日だけど平日扱い”とちゃんと格差もつけてあります。

それでも不満を持つ人間が多い背景には、どうやら“大祖国戦争史観”に根ざしたナショナリズムのようなものがあるらしい。

前にも少し触れましたが、冷戦時代以来の“大祖国戦争史観”においては、独ソ戦にせよ日ソ戦争せよ専らソ連軍の果たした役割ばかり強調され、米英軍の戦果は矮小化されがちなきらいがあります。お陰で、あたかもソ連軍がほとんど独力でドイツを倒したとか、米軍は太平洋方面にまともな陸上兵力を持っていなかったが故にソ連に対日宣戦を要求した、みたいなことを信じているロシア人って結構多いわけですよ。

でもって、こうした人々の中には、ソ連が中心的役割を果たした(と彼らは信じている)欧州戦線の戦勝記念日ではなく、米英が主でソ連は脇役であった対日戦争のそれを“第二次世界大戦全体が終わった日”として祝うのは、即ち

“米英、特に冷戦の勝者である米国に対する屈従”

だと、感じる人がいるようなのです.....。

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<教えて!ナロード>

「今日、9月2日は公的に第二次大戦が終結した日。だけど、ロシアでこの日を祝う必要ってあるわけ?」
原題:Сегодня,2-го сентября,офиуиально закончилась Вторая Мировая война.Надо ли в России отмечать этот день?
http://otvet.mail.ru/question/44923796/


もし必要だと言うのなら、メドヴェーヂェフが対日戦勝を祝日とする大統領令に署名したことについて、何で怒ってる人たちがいるの?


<ナロードの答え>

回答ナロード1号
5月9日も祝ってる以上、必要だろう。東の方でもうちらの犠牲は大きかったんだぞ!


回答ナロード2号
ソ連時代、9月2日は対日戦勝記念日として祝われたものだった。今はよく知らないけど、多分、ポリティカル・コレクトネスが原因で廃止されたんだろ

※イェリツィン時代の90年代に、対日関係を考慮して祝日から外された


回答ナロード3号
祝う必要は無いけど、忘れないようにすべき。


回答ナロード4号
この日は必ず戦没者を悼みつつ、生き残った人々の健康を願って飲むべきだと思うな!


回答ナロード5号
働かないと!何が祝日だ....無慈悲に聞こえるかもしれないけど、次の世代の人々はあの戦争のことを忘れてしまうだろうな。もう既に、あの戦争のことを気にかける人間は少なくなってる。


回答ナロード6号
死者と、未だ生きている生者の双方を忘れないようにしないと。戦死者と、長い戦後の間に亡くなった人々に哀悼の念を!

ソース:俺はそう思う。


回答ナロード7号
日本との間には降伏文書は調印されておらず、未だ戦争状態にある。うちらは、第二次大戦における勝利を同盟国(=米英)に盗まれてしまったんだ。


回答ナロード8号
もし愛国者としてその日を祝うというのであれば、価値はある。で、単に酔っ払いを喜ばせるだけなら、その価値は無い。


回答ナロード9号
この9月の2日というのは、(日本の国会が前年に議決した)“北方領土の日”への当てつけだと思う。で、極東地方での宇宙基地の建築というのも同じで、日本に対する牽制を強化するためなんだろ

※戦前ならともかく、現時点で沿海州等への野心を持っているのは、むしろ中国とかそっちの方だと思うんだけど....。


<ナロード・ベストアンサー>

もちろん、必要だ。というのも、ソ連にとっての戦争は、大祖国戦争だけに限ったものではないから。

戦勝記念日、おめでとう!!!
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>何で怒ってる人たちがいるの?

その理由については前に書いた通りですが、

具体的にはこんな↓感じです。

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<教えて!ナロード>

 「みんな、大祖国戦争はどうでもよくなったのか?今日(=2010/9/2)の祝日は5月9日の戦勝記念日に対する冒涜では?」
原題:С войной покончили мы счёты?Сегодняшний день-не является ли принижением 9мая-Дня Победы?
http://otvet.mail.ru/question/44943748/

今日(9/2)が戦勝記念日になるなんて本当に耐えられない。 うちらの政府のこういった振る舞いは、例のごとく米国に対するご機嫌取りだと思うんだけど。


<ナロードの答え>

回答ナロード1号
馬鹿げてる。


回答ナロード2号
いや、5月9日はファシスト・ドイツに対する勝利の日、9月2日は第二次大戦が終結した日だ。


回答ナロード3号
冒涜になると思うな。良い教育を受けたという点では、うちらの記憶と彼らのそれに違いは無いはずだけど。


回答ナロード4号
 ...もうすぐ、教科書にはドイツを倒したのは米英であり、うちらからはスターリン指揮下の軍団が一つだけ参加した、みたいなことが書かれるんだろうな。そうなっても驚かないよ。


回答ナロード5号
俺の記憶に間違いがなければ、ソ連は日本に宣戦を布告せず、中立条約を破って侵攻したはずだ。恥じこそすれ、祝う必要なんてないだろう。しかし、何故ご主人様のためにそうしない?

※これは正しくない。中立条約破りは事実だけど、一応ちゃんと宣戦は布告している。


<ナロード・ベストアンサー>


俺にとっては冒涜だ。

その他諸々の、ロシアの卑屈さを示す兆候と同じくな。

だから、その手の祝日はまとめて犬に食わせちまえ。

願わくば、17年目(?)が到来して、直ちにこの混乱が収束せんことを

※この一文は、意味がよく分からない。
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>もうすぐ、教科書にはドイツを倒したのは米英であり、うちらから
>はスターリン指揮下の軍団が一つだけ参加した、みたいなことが書
>かれるんだろうな。


そんなことはないだろうw。

でも、両者の役割をそのままひっくり返したのが“大祖国戦争史観”なんだけどね。もちろん、ここまで極端な矮小化はされてないけども。

あと、

この祝日の名前だけでなく“日付も気に入らない”

との意見もあるようです。

というのは、東京湾上で降伏文書が調印された1945年の9月2日の“2日”というのはあくまで米国時間であって、モスクワ時間だと既に9月3日になっていたという......。

確かに、ソ連時代の“対日戦勝記念日”は9月の3日だったのですが.....。

こんなことまで気になる人がいるのか.....。

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<教えて!ナロード>

「対ファシズム戦勝記念日」

原題:День победы над фашизмом.
http://otvet.mail.ru/question/44939731/

メドヴェーヂェフが、大祖国戦争の終結を1945年の9月2日とする大統領令に署名した んだけど、多くの人々がそれは違うと言っている。降伏文書が調印された時間というのは米国時間であって、実際には(モスクワ時間では)9月の3日だったって話なんだ。 みんなはどっちだと思う?

追伸:ええと、間違い。大祖国戦争じゃなくて、第二次大戦の方だった。


<ナロードの答え>

回答ナロード1号
メドヴェーヂェフはアメ公から新しい電話をプレゼントされたらしい。今や、どんなものにでも署名するんだろうな。


回答ナロード2号
大祖国戦争が終わったのは5月9日。9月は第二次大戦の方だぞ。


回答ナロード3号
対ファシズム戦争が終わったのは5月9日。で、日本に対し用いられていた呼び名は(“ファシスト”ではなく)“軍国主義”。


回答ナロード4号
失礼ですが、それは勝者の態度ではないと思います。


回答ナロード5号
今日のように膨大な数のファシストが粛々と、好き勝手にロシアの大地を蹂躙しつつあるような状況で、一体どうファシズムに対する勝利を語ろうというんだ?

※近年増殖しつつある、ネオナチのことを指すと思われる。


回答ナロード6号
うちらが日本と戦ったのは、米国人たちの要請によるものだ。奴らは強力な陸上戦力を持ってなかったんだな....。そういうわけで、大祖国戦争は5月の9日に、第二次大戦は9月の2日に終わったってことになる。

※もちろん、そんなことは無い。単に犠牲をソ連軍に肩代わりさせたかっただけ。


回答ナロード7号
ファシズムが敗北したって信じられないんだけど。いかなる法令も出てないとしても。


回答ナロード8号
大祖国戦争というのは、祖国防衛戦争のことだ。祖国ソ連の防衛はファシスト・ドイツのソ連に対する無条件降伏をもって終了した。故に、クヮントゥーンスカヤ軍(関東軍)の壊滅はもはや祖国の防衛ではなく、同盟国としての義務を果たすための軍事行動だったってわけだ。そして、作戦は1945年の9月3日に首尾よく完了したが、それは同時に第二次大戦の終りをも意味した。

というか、この頃の学校(ロシアでは小中高は一緒になっている)や職業学校、それに高等教育機関での歴史の教科書って一体どうなってんのかね?是非とも知りたいもんだな。


回答ナロード9号
欧州だと、第二次大戦と大祖国戦争の戦勝記念日は5月の8日だけど。


回答ナロード10号
うちらは5月の9日!


<ナロード・ベストアンサー>

1946年に作られた祭日用絵葉書

"我ら勝利せり!偉大なる国民,勝利者たる国民に栄光あれ".左の方の旗に“5月9日-対ドイツ戦勝記念”、右の方の旗には“9月3日-対日本戦勝記念”と書いてある。
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何だかなあ....。

まさか“対日戦勝記念日”の制定が、北方領土とか日本とかあんまり関係ないところで、ある種のロシア人の反米ナショナリズムを昂揚させることになっていようとは...。

完全にこちらの想像を超えていました。

ギャフン。


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3 コメント

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Unknown (通りすがり)
2010-09-23 02:13:23
>もし今の民主党政権が、
“世界標準に合わせて、終戦の日は今年から9/2に変更する。したがって、8/15は平日となる!”
とか言い出したら、若い世代でも反対する人は多いのではないか?

とあるがもともと8/15は平日なんだがな。
Unknown (Unknown)
2010-09-23 06:29:22
8月15日は盆と重なって日本には都合が良いから変わることはないんじゃないかね
Unknown (管理人)
2010-09-23 17:35:00
>2010-09-23 02:13:23殿
>とあるがもともと8/15は平日なんだ
>がな。

ああ,すみません。確かに"平日"と言うと公休みたいですね 。"普通の日"と書いた方がよかったかも。