橋下市長 脱原発迫る 関電「経営難しい」
2012年6月28日(木)07:57 産経新聞
大飯原発3、4号機の再稼働を目前に控える中で開かれた27日の関西電力の株主総会。筆頭株主である大阪市の橋下徹市長は、脱原発依存に向けて、経営陣に自身の考えを直接ぶつけた。全電力に占める原子力発電の比率が約5割に達する関電に迫る大胆な方針転換と、大株主として求めるべき安定経営。二律背反ともいえる立場のはざまで、自らの言葉に力を込めた。
「関電がこのままではつぶれると危惧している。衰退産業が歩んだ道を歩んでいると感じている。経営陣は、将来リスクについての説明が不十分だ」
橋下市長は、与えられたわずか3分余りの質問時間で、関電経営陣に思いのたけを語った。
発言に対して、関電の岩根茂樹副社長は「すべての原発が止まれば、9千億円のコスト増になる」と原発を全廃した場合の影響を説明。「原発の再稼働がなければ、継続的な経営は難しい。電気を安価に提供することで企業価値を高めたい」と理解を求めた。
橋下市長が株主提案について言及し始めたのは、東京電力福島第1原発事故を受け、関電が節電要請に動いた大阪府知事時代の昨年6月。1年越しで訴え続けた主張だ。
株主総会に出席した橋下市長は記者団の取材に応じ、「経営リスクについて何も考えていないことがはっきり分かった」と関電側を批判。「市場原理にさらされ国際競争の中で生き抜いている企業の経営陣からすれば信じられない答弁。倒産することがないということを前提にしている答弁だ」と揶揄(やゆ)した。一方で「今回は最初の一歩。(提案が否決され)具体的に何かが変わるということはないが、株主が原発事業の将来性について真剣に考えるきっかけになってくれればいい」と意義を強調した。
※
関電株主総会が大阪市の提案否決、橋下市長は原発リスク訴える
6月27日(水)15時51分配信 ロイター
[大阪 27日 ロイター] 関西電力<9503.T>は27日、大阪市で定時株主総会を開き、原子力発電所の早期全廃を求める大阪市の株主提案を否決した。出席した橋下徹市長は、原発が経営にもたらすリスクを訴えたが、関電側は原発の稼動がなければ中長期の経営が立ち行かなくなると主張した。
経営の透明性確保などを求める大阪市と京都市、神戸市との共同提案を含め、株主が提案した28議案はすべて否決された。
八木誠社長は総会後に会見し、原発が重要な電源だという主張について、多数の株主から理解を得られたとの認識を示した。現在、公表を見送っている2013年3月期の連結業績、配当予想について、節電の影響など需要の動向がまだ見えないとし、「算定が可能となった段階で速やかに業績の見通しを出したい」と述べた。大飯原発3、4号機(福井県おおい町)以外の原発も再稼働されなければ、燃料費増などで経常損益ベースで「5000億(円)ぐらいの赤字になる」との見通しを示した。
<最長の株主総会>
関電株の約9%を保有する筆頭株主の大阪市は、「可及的速やかに全ての原子力発電所を廃止する」との条文を定款に加えることを求めた株主提案をしたものの、可決に必要な出席株主の3分の2以上の賛同が得られなかった。
質問に立った橋下市長は、「衰退産業が歩んできた道を今、関西電力は歩んでいると思う」と発言。その上で「衰退産業もその時に、時代の転換を読めずに、そして経営を誤った。今がまさに時代の転換だ。エネルギー供給体制の転換だ」と訴え、「リスクをしっかり念頭に置いて、新しいエネルギー供給体制を目指してほしい」と締めくくった。2030年時点の原発依存度や原発停止に伴う業績への影響に関する質問も含め、発言は4分強。与えらえた3分間を超え、議長からたしなめられる場面もあった。
関電の岩根茂樹副社長は同市長の質問に対し、同社の原発11基が全部停止した場合、9000億円の燃料費と代替の発電コストかかるとの認識を示したうえで、原子力が再稼働しなければ持続的、継続的な経営は難しいとの考えを示した。2030年の原発依存度については「現時点で何%が適正ということは申せない」と話した。
このほか大阪市の提案で否決されたのは、元グーグル日本法人社長の村上憲郎氏の社外取締役選任や、国から関電への天下りの禁止、取締役削減に関連した定款の一部変更。脱原発依存ではなく、原発の全廃を求める株主提案については、京都市、神戸市が同調に難色を示したことから、大阪市の単独提案となっていた。取締役18人の選任と剰余金処分に関する会社提案は可決された。株主総会の来場者は、最終的に過去最高の3842人に膨らんだ。所要時間は過去最長の5時間32分、昨年は4時間51分だった。
<自治体との連携に意欲>
総会後の会見で八木社長は今回、大阪・京都・神戸市から株主提案があったことを受け、「特に自治体とかそういうことではなく、株主が提案権を行使されたことに対し真摯に受け止め、総会の場で審議、判断をいただいた」と述べた。その上で「(関電は)地域に根差した企業であり、地域、自治体からの信頼を得ることは大変重要」と、自治体との連携に意欲を示した。
また、「関西電力がこのままではつぶれてしまうと大変危惧している」とした橋下市長の総会での発言について、八木社長は「貴重な意見として受け止め、そうしたことにならないように経営陣が全力を挙げて経営改善、企業の発展に取り組んでいきたい」と話した。
<原発再稼働なければ「経営は厳しい」>
中長期の電源構成のあり方については、国の議論を踏まえ考えていくとしながら、野田総理が原発は重要な電源だとした発言について八木社長は「(総理の)そうした考え方のもとにエネルギーミックスの議論がなされていくと思う」とし「(総理の発言を)心強く思っている」と述べた。大飯原発3、4号機の再稼働だけでは燃料費負担増などが続き、「経営にとっては厳しい状況になる」(八木社長)との認識で、電気料金の値上げの可能性についても「ありとあらゆる選択肢を考えていく必要がある」(同)との考えを示した。
(ロイターニュース 長田善行;編集 久保信博)
2012年6月28日(木)07:57 産経新聞
大飯原発3、4号機の再稼働を目前に控える中で開かれた27日の関西電力の株主総会。筆頭株主である大阪市の橋下徹市長は、脱原発依存に向けて、経営陣に自身の考えを直接ぶつけた。全電力に占める原子力発電の比率が約5割に達する関電に迫る大胆な方針転換と、大株主として求めるべき安定経営。二律背反ともいえる立場のはざまで、自らの言葉に力を込めた。
「関電がこのままではつぶれると危惧している。衰退産業が歩んだ道を歩んでいると感じている。経営陣は、将来リスクについての説明が不十分だ」
橋下市長は、与えられたわずか3分余りの質問時間で、関電経営陣に思いのたけを語った。
発言に対して、関電の岩根茂樹副社長は「すべての原発が止まれば、9千億円のコスト増になる」と原発を全廃した場合の影響を説明。「原発の再稼働がなければ、継続的な経営は難しい。電気を安価に提供することで企業価値を高めたい」と理解を求めた。
橋下市長が株主提案について言及し始めたのは、東京電力福島第1原発事故を受け、関電が節電要請に動いた大阪府知事時代の昨年6月。1年越しで訴え続けた主張だ。
株主総会に出席した橋下市長は記者団の取材に応じ、「経営リスクについて何も考えていないことがはっきり分かった」と関電側を批判。「市場原理にさらされ国際競争の中で生き抜いている企業の経営陣からすれば信じられない答弁。倒産することがないということを前提にしている答弁だ」と揶揄(やゆ)した。一方で「今回は最初の一歩。(提案が否決され)具体的に何かが変わるということはないが、株主が原発事業の将来性について真剣に考えるきっかけになってくれればいい」と意義を強調した。
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関電株主総会が大阪市の提案否決、橋下市長は原発リスク訴える
6月27日(水)15時51分配信 ロイター
[大阪 27日 ロイター] 関西電力<9503.T>は27日、大阪市で定時株主総会を開き、原子力発電所の早期全廃を求める大阪市の株主提案を否決した。出席した橋下徹市長は、原発が経営にもたらすリスクを訴えたが、関電側は原発の稼動がなければ中長期の経営が立ち行かなくなると主張した。
経営の透明性確保などを求める大阪市と京都市、神戸市との共同提案を含め、株主が提案した28議案はすべて否決された。
八木誠社長は総会後に会見し、原発が重要な電源だという主張について、多数の株主から理解を得られたとの認識を示した。現在、公表を見送っている2013年3月期の連結業績、配当予想について、節電の影響など需要の動向がまだ見えないとし、「算定が可能となった段階で速やかに業績の見通しを出したい」と述べた。大飯原発3、4号機(福井県おおい町)以外の原発も再稼働されなければ、燃料費増などで経常損益ベースで「5000億(円)ぐらいの赤字になる」との見通しを示した。
<最長の株主総会>
関電株の約9%を保有する筆頭株主の大阪市は、「可及的速やかに全ての原子力発電所を廃止する」との条文を定款に加えることを求めた株主提案をしたものの、可決に必要な出席株主の3分の2以上の賛同が得られなかった。
質問に立った橋下市長は、「衰退産業が歩んできた道を今、関西電力は歩んでいると思う」と発言。その上で「衰退産業もその時に、時代の転換を読めずに、そして経営を誤った。今がまさに時代の転換だ。エネルギー供給体制の転換だ」と訴え、「リスクをしっかり念頭に置いて、新しいエネルギー供給体制を目指してほしい」と締めくくった。2030年時点の原発依存度や原発停止に伴う業績への影響に関する質問も含め、発言は4分強。与えらえた3分間を超え、議長からたしなめられる場面もあった。
関電の岩根茂樹副社長は同市長の質問に対し、同社の原発11基が全部停止した場合、9000億円の燃料費と代替の発電コストかかるとの認識を示したうえで、原子力が再稼働しなければ持続的、継続的な経営は難しいとの考えを示した。2030年の原発依存度については「現時点で何%が適正ということは申せない」と話した。
このほか大阪市の提案で否決されたのは、元グーグル日本法人社長の村上憲郎氏の社外取締役選任や、国から関電への天下りの禁止、取締役削減に関連した定款の一部変更。脱原発依存ではなく、原発の全廃を求める株主提案については、京都市、神戸市が同調に難色を示したことから、大阪市の単独提案となっていた。取締役18人の選任と剰余金処分に関する会社提案は可決された。株主総会の来場者は、最終的に過去最高の3842人に膨らんだ。所要時間は過去最長の5時間32分、昨年は4時間51分だった。
<自治体との連携に意欲>
総会後の会見で八木社長は今回、大阪・京都・神戸市から株主提案があったことを受け、「特に自治体とかそういうことではなく、株主が提案権を行使されたことに対し真摯に受け止め、総会の場で審議、判断をいただいた」と述べた。その上で「(関電は)地域に根差した企業であり、地域、自治体からの信頼を得ることは大変重要」と、自治体との連携に意欲を示した。
また、「関西電力がこのままではつぶれてしまうと大変危惧している」とした橋下市長の総会での発言について、八木社長は「貴重な意見として受け止め、そうしたことにならないように経営陣が全力を挙げて経営改善、企業の発展に取り組んでいきたい」と話した。
<原発再稼働なければ「経営は厳しい」>
中長期の電源構成のあり方については、国の議論を踏まえ考えていくとしながら、野田総理が原発は重要な電源だとした発言について八木社長は「(総理の)そうした考え方のもとにエネルギーミックスの議論がなされていくと思う」とし「(総理の発言を)心強く思っている」と述べた。大飯原発3、4号機の再稼働だけでは燃料費負担増などが続き、「経営にとっては厳しい状況になる」(八木社長)との認識で、電気料金の値上げの可能性についても「ありとあらゆる選択肢を考えていく必要がある」(同)との考えを示した。
(ロイターニュース 長田善行;編集 久保信博)