「いらっとして…」催涙スプレー噴射 高田馬場駅をパニックに陥れた２９歳女の動機
産経新聞 2013年8月15日（木）18:45
帰宅途中の学生やサラリーマンらでごった返していた駅が、突然の凶行で一瞬にしてパニックに陥った－。ＪＲ高田馬場駅（東京都新宿区）の女子トイレで７月３０日深夜、女が催涙スプレーをまき散らし、女性客らがのどの痛みなどを訴えた事件。事件発生から１０日余りが経過した８月１１日、傷害容疑で無職の柏木麻耶容疑者（２９）が警視庁に逮捕された。「女性に何かを言われ、いらっとした」と容疑を認めているが、そのきっかけについては「よく覚えていない」と口を閉ざしている。（大島悠亮、中村翔樹）
■トイレの順番待ちの末…２０秒間、無言で噴射
「キャー！」 「救急車を呼んで！」
７月３０日午後１０時２０分ごろ、高田馬場駅に女性の悲鳴や叫び声が響き渡った。
せきをしながら座り込み、体調不良を訴える女性たち。救助活動や情報収集に慌ただしく行き交う駅員たち。何が起こったのか分からずに呆然（ぼうぜん）と様子を眺める乗客たち…。予期せぬ出来事に、駅内の混乱は一気にピークに達した。
事件が起きたのは、駅構内にある女子トイレだった。女性会社員（１８）は直前にトイレに向かったが、１１個ある個室は全て「使用中」で、入り口近くで順番を待っていた。
しばらくすると、右奥にある個室が空いた。女性は一つ手前の個室の前に立っていた女が先に待っていたと思い、「先にどうそ」と声をかけた。ところが、女が「いいですよ」と答えたため、女性は「失礼します」と断って空いた個室に入った。
次の瞬間だった。扉を閉める前に女性の背中が強く押され、「何が起きたの？」と思って振り向くと、順番を譲ってくれた女が顔の辺りを目がけてスプレーを吹きかけてきた。
約２０秒間にわたり、無言のまま噴射し続ける女。噴霧されたスプレーが煙のように女子トイレ内に充満し、周囲は唐辛子の刺激臭に包まれた。
女性はとっさに両腕でスプレーを防ごうとしたが、顔に直接吹きかけられたため、皮膚が炎症を起こしていた。近くにいた他の女性６人も目やのどの痛みを訴えて病院に搬送されたが、けがはなかった。
同署は傷害容疑で捜査を開始し、防犯カメラの映像などから女が山手線で逃走したことが判明。目撃情報などからも柏木容疑者の犯行と断定し、８月１１日に同容疑で逮捕した。
■後絶たない駅トラブル…刺傷事件、突き落としも
駅構内やホームなどでは、ささいなトラブルから深刻な事件に発展するケースが後を絶たない。
東京メトロ副都心線渋谷駅（渋谷区）のエスカレーターでは昨年５月２１日、５０代の男性が男にサバイバルナイフで刺され、重傷を負う事件が発生。２日後に３０代の男が殺人未遂容疑で逮捕されたが、男は「エスカレーターでぶつかり、頭にきて刺した」と動機を供述していた。
今年６月１５日未明には、ＪＲ京浜東北線大井町駅（品川区）のホームで、４０代の男性会社員がトラブルになった男に線路上に突き落とされ、右手首の骨を折る重傷を負った。直後に電車がホームに入ってきたが、男性はホーム下の隙間に逃げ込んだため、最悪の事態は免れた。
同日夜に２０代の男２人が神奈川県警に出頭し、警視庁が殺人未遂容疑で逮捕。捜査関係者によると、被害男性と男らのトラブルは、電車内で男の腕が別の乗客に当たったことを被害男性が注意したことがきっかけだったという。
日本民営鉄道協会によると、平成２４年度に大手私鉄１６社の駅や電車内で起きた駅員や乗務員への暴力行為は計２３１件。５年連続で２００件を超えているといい、私鉄各社は対応に頭を抱えている。
■支離滅裂？の犯行動機 謝罪の言葉なし
今回逮捕された柏木容疑者と女性は、たまたまトイレの順番待ちで並んでいただけの間柄だった。
捜査関係者によると、柏木容疑者は「順番待ちをしていたら、女性に何かを言われていらっとした」と犯行の動機を説明しているが、肝心の「いらっとした」きっかけについては「はっきり覚えていない」と供述しているという。
捜査関係者は「女性が言うように、柏木容疑者が『先にどうぞ』と言って譲ったのなら、支離滅裂な犯行」と首をかしげる。
柏木容疑者がなぜ、催涙スプレーを持っていたのかも今のところ分かっていない。柏木容疑者は素直に取り調べに応じているが、女性への謝罪の言葉などはまだ口にしていない。捜査関係者は、柏木容疑者についてこう話す。
「女性の顔めがけてスプレーを噴射しており、非常に悪質。同じ女性なら、女性にとって顔がどれほど大事か分かるだろうに…」
産経新聞 2013年8月15日（木）18:45
帰宅途中の学生やサラリーマンらでごった返していた駅が、突然の凶行で一瞬にしてパニックに陥った－。ＪＲ高田馬場駅（東京都新宿区）の女子トイレで７月３０日深夜、女が催涙スプレーをまき散らし、女性客らがのどの痛みなどを訴えた事件。事件発生から１０日余りが経過した８月１１日、傷害容疑で無職の柏木麻耶容疑者（２９）が警視庁に逮捕された。「女性に何かを言われ、いらっとした」と容疑を認めているが、そのきっかけについては「よく覚えていない」と口を閉ざしている。（大島悠亮、中村翔樹）
■トイレの順番待ちの末…２０秒間、無言で噴射
「キャー！」 「救急車を呼んで！」
７月３０日午後１０時２０分ごろ、高田馬場駅に女性の悲鳴や叫び声が響き渡った。
せきをしながら座り込み、体調不良を訴える女性たち。救助活動や情報収集に慌ただしく行き交う駅員たち。何が起こったのか分からずに呆然（ぼうぜん）と様子を眺める乗客たち…。予期せぬ出来事に、駅内の混乱は一気にピークに達した。
事件が起きたのは、駅構内にある女子トイレだった。女性会社員（１８）は直前にトイレに向かったが、１１個ある個室は全て「使用中」で、入り口近くで順番を待っていた。
しばらくすると、右奥にある個室が空いた。女性は一つ手前の個室の前に立っていた女が先に待っていたと思い、「先にどうそ」と声をかけた。ところが、女が「いいですよ」と答えたため、女性は「失礼します」と断って空いた個室に入った。
次の瞬間だった。扉を閉める前に女性の背中が強く押され、「何が起きたの？」と思って振り向くと、順番を譲ってくれた女が顔の辺りを目がけてスプレーを吹きかけてきた。
約２０秒間にわたり、無言のまま噴射し続ける女。噴霧されたスプレーが煙のように女子トイレ内に充満し、周囲は唐辛子の刺激臭に包まれた。
女性はとっさに両腕でスプレーを防ごうとしたが、顔に直接吹きかけられたため、皮膚が炎症を起こしていた。近くにいた他の女性６人も目やのどの痛みを訴えて病院に搬送されたが、けがはなかった。
同署は傷害容疑で捜査を開始し、防犯カメラの映像などから女が山手線で逃走したことが判明。目撃情報などからも柏木容疑者の犯行と断定し、８月１１日に同容疑で逮捕した。
■後絶たない駅トラブル…刺傷事件、突き落としも
駅構内やホームなどでは、ささいなトラブルから深刻な事件に発展するケースが後を絶たない。
東京メトロ副都心線渋谷駅（渋谷区）のエスカレーターでは昨年５月２１日、５０代の男性が男にサバイバルナイフで刺され、重傷を負う事件が発生。２日後に３０代の男が殺人未遂容疑で逮捕されたが、男は「エスカレーターでぶつかり、頭にきて刺した」と動機を供述していた。
今年６月１５日未明には、ＪＲ京浜東北線大井町駅（品川区）のホームで、４０代の男性会社員がトラブルになった男に線路上に突き落とされ、右手首の骨を折る重傷を負った。直後に電車がホームに入ってきたが、男性はホーム下の隙間に逃げ込んだため、最悪の事態は免れた。
同日夜に２０代の男２人が神奈川県警に出頭し、警視庁が殺人未遂容疑で逮捕。捜査関係者によると、被害男性と男らのトラブルは、電車内で男の腕が別の乗客に当たったことを被害男性が注意したことがきっかけだったという。
日本民営鉄道協会によると、平成２４年度に大手私鉄１６社の駅や電車内で起きた駅員や乗務員への暴力行為は計２３１件。５年連続で２００件を超えているといい、私鉄各社は対応に頭を抱えている。
■支離滅裂？の犯行動機 謝罪の言葉なし
今回逮捕された柏木容疑者と女性は、たまたまトイレの順番待ちで並んでいただけの間柄だった。
捜査関係者によると、柏木容疑者は「順番待ちをしていたら、女性に何かを言われていらっとした」と犯行の動機を説明しているが、肝心の「いらっとした」きっかけについては「はっきり覚えていない」と供述しているという。
捜査関係者は「女性が言うように、柏木容疑者が『先にどうぞ』と言って譲ったのなら、支離滅裂な犯行」と首をかしげる。
柏木容疑者がなぜ、催涙スプレーを持っていたのかも今のところ分かっていない。柏木容疑者は素直に取り調べに応じているが、女性への謝罪の言葉などはまだ口にしていない。捜査関係者は、柏木容疑者についてこう話す。
「女性の顔めがけてスプレーを噴射しており、非常に悪質。同じ女性なら、女性にとって顔がどれほど大事か分かるだろうに…」