MBA -30歳からの挑戦-

30歳を機にMBA取得を志した挑戦者の、勇気あるも困難に満ちた成長物語。アメリカから帰国後、再就職しました。

安藤 忠雄

2005年03月22日 | ひと
少し前になるが、建築家の安藤忠雄さんの講演を聴きにいった。

「日本人には、日本というすばらしい国を深く愛し、その伝統や特異性、良い習慣を大切にしながら、世界と接していって欲しい」という強い願いが込められた講演であった。講演が始まるまではどんな話をするのか検討もつかずにいたのだが、時間がたつにつれて安藤さんの飾らない素朴な優しさが会場いっぱいに満ち溢れてくるのをひしひしと感じることができた。安藤さんがマイクを握るまでは硬い雰囲気だった会場も、彼の講演が終わろうとする頃には誰もが彼の独特な世界に引き込まれていた。

安藤さんは独学で建築を学び、「連戦連敗」という著書にもあるように数々のコンペに負けて芽の出ない時代を耐えてこられたそうだが、今では世界に数十もの案件を抱える世界的に有名な建築アーティストとして大活躍されているそうである。成功したからといって、それを鼻にかけるわけでもなく、コテコテの大阪弁で「自分が信じる世界」について熱く語る安藤さん。その中でも一番印象に残っているのは、日本の男性についてのくだりであった。

彼曰く、「ここに集まっている皆さんのほとんどはダメ人間だ。日本の男性には仕事中毒の方がかなり多い。これから高齢化社会がどんどんと進んでいく中、仕事ばかりしてきた男性は人間的な面白みにかける。かたや仕事もそこそこに人生を楽しんできた女性は、年を重ねても趣味の世界を広めたり、新しいチャレンジに胸を膨らませたり、演劇やコンサートなどを楽しむことができる。しかし、男性はというと女性とは大きく異なり、文化力が極端に低く、仕事がなくなるとどうしてよいかわからなくなってしまい、最悪のケースは自殺に追い込まれたり、離婚したりとまるで良いことがない。仕事に熱中するのも大切だが、映画を観たり、美術館に足を運ぶなどして、もっともっと心を耕して文化力を高めていかなければ、大きな口を開けてまっている惨めな将来に飲み込まれることになる。」

今や東京大学の名誉教授としてもご活躍されているそうだが、安藤さんの飾らない、それでいて、ぐいぐいと引っ張られてしまうリーダーシップがとても輝いているように感じられた。きっと彼の元で働く人々も、のびのびとかつ熱く仕事に取り組むことができるのではないかと意味もなく想像が大きく膨らんだ。連発する冗談の中にも、自分が生まれ育った関西の地、そして愛する日本に緑と花にあふれた美しい街を取り戻したいと熱く語った安藤さんには、明らかに日本、そして日本人に対する深い愛情が感じられた。

講演では瀬戸内オリーブ基金という取り組みにも言及されておられたが、これは産業廃棄物で汚された土地にオリーブの木々を植えて、緑にあふれる美しい地域の再生を願うという思いが込められているそうで、その大いなる志に共感した。また、桜の名勝としても有名な大阪市の造幣局から広がる緑のベルト地帯の完成にも力を入れておられるとのこと。安藤さんの話を聞いていると、「私に何かできることはないのか」という気持ちになってくる。これはどういった作用が働いているのだろうか…。

講演を終えて、瀬戸内オリーブ基金にわずかな寄付をさせてもらい家路についた時、人々が安藤さんに惹かれる理由がわかったような気がした。それはきっと、見返りを求めずに自分がまず一生懸命になって、物事を進めていこうとがんばっている姿が周りの人間に力を与えるからではないのか。そう考えると、これまでに出会ってきたすばらしい人々もみな安藤さんと同じ熱い情熱を持っていたことを思い出す。

私自身、「人は生まれた瞬間から死ぬ瞬間までとどまることなく走り続ける列車である」と考えているのだが、「情熱を燃料として走る列車」とは、何ともすばらしいではないか。


明日のトピック:  MBA Wannabeのモラル

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