3月12日に福島第一原発1号機への海水注入が検討された際、再臨界の可能性を聞かれて、原子力安全委員会の委員長である斑目氏は「可能性はゼロではない」と答えたそうだ。
安全委員会は原子力の専門家集団であり、斑目氏はそのトップであるが、その人物が素人でも言えるような、抽象的で曖昧な助言しか出来なかったとは、驚くべきことである。
地震と津波によって循環冷却機能が全喪失し、注水冷却しか方法がなくなった時点で、いずれ冷却用真水が底をつき、海水による冷却を余儀なくされる事態は容易に想像できたはずである。
その時点で、斑目氏は、軽水炉の冷却材に詳しい専門家を複数ピックアップして、海水注入の問題点について、緊急に議論を始めるのが当然である。
勿論、水位が下がって炉心がむき出しになっているような原子炉に、数十トン数百トンの海水を注入した場合、何が起るかなど、誰にも分からない。そのような状況にまで追い込まれた過酷事故は、今回が初めてである。
従って、これまでの知識から推測するしかないが、まず懸念されるのは、高温の圧力容器の中で海水が蒸発すると、塩化ナトリウムを初めとして、様々な成分が析出してくるかもしれないことである。
この析出物が炉心部分で成長を始めたとき、崩壊熱の除去や核分裂そのものに、どのような影響を与えるのかは気になる点である。
また、溶融しつつある燃料棒は数千度の温度に達するそうだが、析出する結晶あるいは濃縮された海水は、超高温に熱せられた上に、高線量のアルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線などの照射を受けることになる。
こういった状態の中で、再臨界は勿論のこと、圧力容器や配管系に重大な損傷を与える事象が発生する危険があるのかどうか、その見通しを検討して、政府に具体的な助言を与えるのが斑目氏の仕事である。
「海水注入で再臨界の危険性はどの程度上がるのか」「再臨界以外の危険事象は何が考えられるか」「注入前に海水のろ過をどの程度すべきか」「海水中の成分でとくに取り除くべきものはあるか」「その場合どのようなフィルターを使えばよいか」「あるいは加えるべき成分はあるか」「海水注入はどの程度の期間継続してよいのか」「数時間か、数日か、それとも数ヶ月か」など、検討すべき論点は多岐にわたる。
しかし、斑目氏が他の専門家と議論を行い、こういった具体的な助言をした形跡は見られない。それどころか、先日の国会で「可能性がゼロではない」は「事実上ゼロ」であると述べている。
人類が経験したことのない事故の状況下で、海水注入による再臨界の可能性を「事実上ゼロ」だと主張するのは、神様でもない限り不可能である。過去のどんなデータから、そんなきっぱりした結論が導き出せたのか?
もし、これが斑目氏の真意だったとすれば、学者としての資質を問われるだろう。
そして、「事実上ゼロ」だから、海水注入に際してその影響を検討せず、具体的助言もしなかったのだとすれば、それは自らの無為無策を正当化する開き直り以外の何者でもない。
福島原発事故によって日本が国家的危機に直面しているときに、税金から多額の報酬を貰って、原子力エネルギーの安全管理を託されている人物が、専門家として必要な仕事を何もしない上に、詭弁を弄して自己正当化に邁進しているというのは、信じがたい光景である。
どうやら斑目氏が真剣に取り組むのは、自分自身の面子を守ることのようで、専門家として国民を守ることではないようだ。
斑目氏が委員長として適任である可能性は「間違いなくゼロ」である。
<関連ブログ>
「20mSv退避」を勧告する原子力安全委員会に存在価値なし (2011/04/07)
安全委員会は原子力の専門家集団であり、斑目氏はそのトップであるが、その人物が素人でも言えるような、抽象的で曖昧な助言しか出来なかったとは、驚くべきことである。
地震と津波によって循環冷却機能が全喪失し、注水冷却しか方法がなくなった時点で、いずれ冷却用真水が底をつき、海水による冷却を余儀なくされる事態は容易に想像できたはずである。
その時点で、斑目氏は、軽水炉の冷却材に詳しい専門家を複数ピックアップして、海水注入の問題点について、緊急に議論を始めるのが当然である。
勿論、水位が下がって炉心がむき出しになっているような原子炉に、数十トン数百トンの海水を注入した場合、何が起るかなど、誰にも分からない。そのような状況にまで追い込まれた過酷事故は、今回が初めてである。
従って、これまでの知識から推測するしかないが、まず懸念されるのは、高温の圧力容器の中で海水が蒸発すると、塩化ナトリウムを初めとして、様々な成分が析出してくるかもしれないことである。
この析出物が炉心部分で成長を始めたとき、崩壊熱の除去や核分裂そのものに、どのような影響を与えるのかは気になる点である。
また、溶融しつつある燃料棒は数千度の温度に達するそうだが、析出する結晶あるいは濃縮された海水は、超高温に熱せられた上に、高線量のアルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線などの照射を受けることになる。
こういった状態の中で、再臨界は勿論のこと、圧力容器や配管系に重大な損傷を与える事象が発生する危険があるのかどうか、その見通しを検討して、政府に具体的な助言を与えるのが斑目氏の仕事である。
「海水注入で再臨界の危険性はどの程度上がるのか」「再臨界以外の危険事象は何が考えられるか」「注入前に海水のろ過をどの程度すべきか」「海水中の成分でとくに取り除くべきものはあるか」「その場合どのようなフィルターを使えばよいか」「あるいは加えるべき成分はあるか」「海水注入はどの程度の期間継続してよいのか」「数時間か、数日か、それとも数ヶ月か」など、検討すべき論点は多岐にわたる。
しかし、斑目氏が他の専門家と議論を行い、こういった具体的な助言をした形跡は見られない。それどころか、先日の国会で「可能性がゼロではない」は「事実上ゼロ」であると述べている。
人類が経験したことのない事故の状況下で、海水注入による再臨界の可能性を「事実上ゼロ」だと主張するのは、神様でもない限り不可能である。過去のどんなデータから、そんなきっぱりした結論が導き出せたのか?
もし、これが斑目氏の真意だったとすれば、学者としての資質を問われるだろう。
そして、「事実上ゼロ」だから、海水注入に際してその影響を検討せず、具体的助言もしなかったのだとすれば、それは自らの無為無策を正当化する開き直り以外の何者でもない。
福島原発事故によって日本が国家的危機に直面しているときに、税金から多額の報酬を貰って、原子力エネルギーの安全管理を託されている人物が、専門家として必要な仕事を何もしない上に、詭弁を弄して自己正当化に邁進しているというのは、信じがたい光景である。
どうやら斑目氏が真剣に取り組むのは、自分自身の面子を守ることのようで、専門家として国民を守ることではないようだ。
斑目氏が委員長として適任である可能性は「間違いなくゼロ」である。
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