JOHNY’s BLOG

かほりたつあざやかなはなとどめおくおもいをよせる淡雪のふみ

歴史と小熊英二シラバス

2006-04-21 07:34:36 | Book
歴史って何?例えば60年前の戦争は歴史なのか?
 こんな問いを受けてなんとこたえるか。

そうだね~歴史とは現在ではないか。
現在の私の輪郭をはっきりさせるために知らなければならないこと、過去の歴史という言葉は語義矛盾ではないだろうか。今と切り離された歴史というものはないように思う。

以下は小熊英二の講義のシラバスですが、なんとなく答えがあるように思います。

たんなる年号や事件の羅列としての「日本史」ではなく、近代国家成立の仕組みを総合的に把握し、現実政治を分析する視点を養う場としての「近代史」を学ぶことが目標である。


 ・教材
 第1回(4月10日)

 手始めとして、「近代とは何か」についてこの講義で必要な範囲において話す。人間が身分や慣習から自由になりながら、同時に戦争と環境破壊が絶えない「近代」とは何なのか。「近代」とはたんなる年号の区切りではなく、一定の特徴を備えた社会のかたちであることを理解してもらいたい。

 第2回(4月17日)

 この回では、「学校」について講義する。読み書きソロバンといった「実学」を自発的に学ぶための場だった江戸時代の寺小屋にたいして、近代国家の学校の特徴の一つは、「生活の役に立たないことを、強制的に教える」という点にある。近代国家が、いったい何のために多額の予算を投じてまで、学校をつくったのかを考える。

 第3回(4月24日)

 この回では、「開発」について講義する。発展途上国が上からの産業開発を行なう場合、資本の不足や技術の立ち後れなど多くの困難が発生する。明治の日本がなぜそうした困難をクリアできたのか、それはどんな問題点を残したのかを話し、現在の発展途上国の問題への示唆を学ぶ。

 第4回(5月1日)
 この回では、「国語」について講義する。国民統合が進んでいない第三世界国家では、公用語が複数だったり、英語やフランス語が公用語である(つまり「国語」と「公用語」がちがう)ケースは珍しくない。日本でも英語公用語案や漢字全廃論などの議論を経ながら、単一の「標準語」が成立していった。一つの国家に所属する人間が、全員同じ言語を話すという異常な事態は、どのように可能になったのかを学ぶ。

 第5回(5月8日)

 この回では、「ナショナリズム」について講義する。明治初期においては、薩摩人と会津人は自分たちが「同じ日本人」とは思っていなかった。天皇への民衆の関心はうすく、幕末の内戦では日の丸は旧幕軍側の旗だった。そうした人間集団が、いかなる方法で天皇と日の丸をいただく「日本人」として形成されていったかを考え直す。

 第6回(5月15日)

 この回では、「国境」について講義する。近代国家の特徴のひとつは、国境線を明確に引くことにあり、そのために前近代から近代への移行にあたって国境紛争が発生する。明治初期の日本にとっての最大の国境紛争だった沖縄問題を中心に、欧米や中国との外交経過とともに、ひとつの地域が「日本」に編入されてゆく経緯を学ぶ。

 第7回(5月22日)
 この回では、「性と家族」について講義する。性に関する観念は近代以前と近代以後では大きく異なるが、一般に誤解されているのとちがい、「封建的」と呼ばれる貞操感は明治以後に流布したものである。身分制度に基づく社会から国民国家に変貌する過程で、人々の性意識や家族形態がどのように変わったかを検証する。

 第8回(5月29日)

 この回では、「教育」について講義する。身分秩序を破壊し、一元的な価値観のもとに自由競争による社会上昇を可能にした近代教育は、やがて心理的・社会的・経済的にさまざまな問題を引き起こす。近代教育の試行錯誤の歴史をふりかえると同時に、多様性と平等、自由と安定のジレンマというすぐれて「現代」的な問題と特徴をとらえる。


 第9回(6月5日)

 この回では、「福祉」について講義する。共同体の解体と競争の拡大は、必然的に競争の敗者に貧困をもたらす。その対応として、共同体の代用となる労働運動や福祉政策が生まれるが、それはやがてコーポラティズムと国家の肥大をも招いてゆく。貧困とその対応をとおして、現代国家の特性を考える。


 第10回(6月12日)

 この回では、「差別」について講義する。近代社会は、自由で自立した近代人を人間の典型として描くが、女性・障害者・老人・異民族など、その基準から外れた者が差別の対象となる。差別は近代化が進むことによって解消するのか、それともより悪化してゆくのかという問題を考察する。

 第11回(6月19日)

 この回では、「戦後体制」について講義する。現在の日本のあり方は、第二次世界大戦直後の占領改革や新憲法の制定、そして一九五〇年前後の国際情勢などによって決定された部分が大きい。そうしたなかで、国内の改革やアメリカとの関係がどのように構築されていき、現在にまで影響を及ぼしているかを考える。

 第12回(6月26日)

 この回では、「戦後補償」について講義する。戦後補償問題は、「南京大虐殺」や「従軍慰安婦」といった特定のトピックに議論が集中し、ナショナリズムに関する議論もからんでやや錯綜している。補償問題の全体像を把握し、現在の日本の国際的位置にこの問題が与えた経緯や影響などを整理して解説する。


 第13回(7月3日)

 この回では、「外国人」について講義する。現代における国民国家の成熟は、国内の国民に権利を拡張してゆく過程であると同時に、外国人との権利の差が拡大してゆく過程でもある。日本にとっての最多数の外国人である在日韓国・朝鮮人を中心に、「日本人」と外国人の境界の問題を考える。


  



① 竹内洋「教養主義の没落」(中公新書)

教育社会学者が、近代日本における階層文化としての「教養」の成立と崩壊過程を描いたもの。ブルデューの階層社会分析が応用されている研究の一例。

②芹沢一也「狂気と犯罪」(講談社+α新書)

 近代日本における「狂気と犯罪の歴史」。フーコーの「狂気の歴史」の日本への応用として成功している事例。


③吉見俊哉「博覧会の政治学」(中公新書)

 社会学者による、日本における博覧会の歴史。博覧会がどのように近代国家形成や植民地支配にかかわっていたかにも言及される。フーコーの「まなざし」の概念の応用もみられる。


④タカシ・フジタニ「天皇のページェント」(NHKブックス)

 人類学やメディア・イベント研究を応用した近代天皇制の分析。天皇家のメディア戦略を考察した多木浩二「天皇の肖像」(岩波書店)および若桑みどり「皇后の肖像」(筑摩書房)は問題意識が近いが、理論的背景はクリフォード・ギアツなど。

⑤牟田和恵「戦略としての家族」(新曜社)

 いわゆる「近代家族」論の日本近代史への応用。落合恵美子「二〇世紀家族へ」(NHKブックス)と併読するとわかりやすい。

⑥赤川学「セクシュアリティの歴史社会学」(勁草書房)

 フーコーの「性の歴史」の近代日本への応用版。オナニー有害説の言説の歴史をあつかう。学問的方法論を述べた部分が充実しているので、自分も研究してみたいというひとには参考になるかもしれない。

⑦橋本毅彦・栗山茂久編「遅刻の誕生」(三元社)

 近代日本における時間意識の変化を、学校・鉄道・時計といった制度や技術の変化から追跡した論文集。興味深い事例が多い。


⑧品田悦一「万葉集の発明」(新曜社)

 近代日本における「伝統の発明」のケース・スタディ。万葉集がどのように「国民的」な古典になったかを検証。木博志「近代天皇制の文化史的研究」(校倉書房)やホブズボーム編「つくられた伝統」(紀伊国屋出版)などと併読するとよい。

⑨イ・ヨンスク「『国語』という思想」(岩波書店)

 「国語」という概念が日本に定着した過程、およびそれが植民地支配でどのように働いたかを検証したもの。田中克彦「ことばと国家」(岩波新書)と併読するとよい。

⑩木村直恵「<青年>の誕生」(新曜社)

 明治二十年代における政治意識の変化と「青年」概念の誕生を、ブルデューの「ハビトゥス」概念も応用しつつ検証したもの。アリエス「<子供>の誕生」(みすず書房)、ロジェ・シャルチエ「書物の秩序」(ちくま学芸文庫)を併読するとよい。

⑪柄谷行人「日本近代文学の起源」(講談社学術文庫)

 近代日本における「文学」概念の成立を、フランス現代思想の応用から読み解いたもの。今回取り上げた本のなかでは、読むのに若干の予備知識が必要なものの一つ。


 全部読もうと思うとけっこうな手間・・・ですが。せっかくだからいっときましょうか。

                         JOHNY

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