悪性脳腫瘍に対するレーザー治療

悪性脳腫瘍で苦しんでおられる患者様、および御家族に、私が開発したレーザー治療の有効性、安全性を紹介します。

日本画像医学会

2021-02-08 17:31:21 | 日記
久しぶりの投稿です。日頃から脳腫瘍を含めた神経画像診断にて大変お世話になっている T教授からお誘いをいただき、2/20にWEBで開催される第40回日本画像医学会のシンポジウムでプレゼンさせていただくことになりました。日本画像医学会は、昨年の学会で座長を務めさせていただきましたが、臨床と、画像診断と、病理診断の3分野が共同で同じテーマを語り合う会です。今回は悪性脳腫瘍をテーマとし、私は臨床の代表として、表示の様なテーマでプレゼンすることになりました。私が医師になったのは、1986年ですが、現在に至るまで膠芽腫の5年生存率はほとんど改善していません。他の多くの癌腫の治療成績は確実に改善していっているのにも関わらずです。今回、人類がこの究極の難敵と戦ってきた軌跡を振り返り、今後の展望を述べさせていただきました。結論としては、この敬意さえ抱くほどの難敵と勝負しても、現状の医療技術では勝ち目はないのではないか、となれば、共生をテーマとし、よい関係を少しでも長い期間保つことを目指すべきではないか、というものです。これほどの難敵を、私が生きている間に克服できるとは到底思えません。研究すれば研究するほど、この難敵の素晴らしさ??(たちの悪さ)に気がつくのです。まさに人類にとって究極の病ではないでしょうか?今、人類はコロナという未曾有の危機に直面し、世界中の総力を結してその克服に挑んでいます。数年後にはコロナもインフルエンザの様な扱いになるでしょう。しかし膠芽腫は現在に至るほとんどの優れた臨床研究を打ちのめしました。この時代に生きている全ての膠芽腫研究者の叡智を、次世代に繋ぎ、いつかパラダイムシフトが起きることを祈っています。Enduring battle againt glioblastoma: 膠芽腫との終わりなき戦いに一石を投じられる様、今後もPDTの研究を続けていきたいと思っております。

フランスのe-Congress終了

2020-11-14 20:12:20 | 日記
2年に一度、ドイツとフランスが交互に開催する悪性腫瘍の蛍光診断(PD)と光線力学的治療(PDT)に特化した国際学会である、PDPDT2020がe-Congressという形で11/5-6の二日間開催されました。私は唯一の日本人招待演者として、15分間のWEBでのプレゼンテーションを行いました。PM1:30からとのことでしたが、時差が8時間、日本の方が進んでおり、夜の9:30から自宅でプレゼンテーションしました。自宅でPCに向かって英語でプレゼンするって、家族にはかなり奇妙に見えた様です。質問もたくさんもらったのですが、ネットなので音が途切れたり、画像もカクカクしたりして難儀しましたが、なんとか納得してもらえました。会長からも翌日に賞賛のメールをいただきました。日本がこの領域の最先端であることを、皆が再確認していた、というコメントが何より嬉しかったです。WEBでの国際会議は初めてでしたが、時差を考える必要があり、ネットトラブルもあり得るので、要注意ですね。中国からの演者は全員が動画を録画して配信しておりました。これでは質疑応答ができませんが、これも一つの手かと思いました。これからも自分の経験を世界に発信し続けたいと思います。

フランス ナンシーでの e-congress

2020-10-28 16:20:41 | 日記
PDTを国際的に議論する学会としては、International Photodynamic Association (IPA)が主催するWorld Congressがあり、2年毎に奇数年に開催されています。2019年はBostonで開催され、以前、本ブログでも紹介させていただきました。2021年のIPA はモスクワ、2023年は上海で開催される予定であり、本当に楽しみな国際学会です。ただ、PDT の世界は近年急速に進歩しており、世界中であらゆる癌に対して、種々の方法論でのPDTが試みられています。とても2年毎の国際会議では不十分であるとの意見も多く、特にヨーロッパの研究者からは毎年開催すべきだとの意見が以前からありました。数年前から、IPA の谷間の年(偶数年)にフランスのナンシーとドイツのミュンヘンが交代でPDTの国際学会を開催しようという動きがありました。前回の2018年、ミュンヘンで開催された国際会議に、私は招待されていたのですが、国内の重要な会議と日程が重なり、伺うことが出来なかったのです。そこで、今回、フランスのナンシーで開催される2020PDT PDD updateという国際会議に再度、招待され、非常に名誉あるセッションでの講演を依頼されていたのです。7月の予定でした。ところが、全世界的なコロナ禍の影響で、7月開催が困難となり、11月に延期されることになったのです。それでもフランスに伺えると思っていたのですが、コロナは一向に鎮静化せず。残念ながら、日本の学会と同様、WEB開催となってしまいました。フランスに行けず、日本でのWEB会議とは。何とも楽しくない会議になってしまいました。それでも招待演者、脳神経外科領域のトップバッターとして、15分間の講演を行う名誉をいただいた次第です。プログラムを見る限り、あらゆる領域の疾病に対するPDTPDDの可能性を感じられそうな会議になっています。WEB会議に参加されるには、ネット上でのregistrationが必要ですが、参加費についての情報を知りません。もし、ご興味があるかたがいらっしゃいましたら、PDTPDD update 2020で検索すれば、ホームページに辿り着きます。一度、ご覧になっては如何でしょうか?

論文引用22位

2020-08-16 01:50:31 | 日記
光線力学医療に特化したJournalであるPhotodiagnosis Photodynamic Therapy誌には過去に10編ほどの論文をpublishしてきました。PDTの基礎実験に関するものが多いのですが、原発性悪性脳腫瘍に対するPDTの保険適応獲得に重要な役割を示した臨床論文もpublishしています。今回、本誌に非常に面白い論文が掲載されました。Saudi Arabiaからのものなのですが、2004年から2019年までの16年間にPDPDT誌にpublishされた論文のうち、他論文に引用された回数の多い、top 50の論文を抽出したものです。この領域の有名人によるreview論文が上位を占めているのは当然ですが、私の論文(2013年)が引用22位に選ばれております。取り上げられた論文の多くが文献検討による総説なのですが、私の論文はtalaporfin sodiumによるPDTを悪性脳腫瘍臨床例に行った、世界で最初のものです。わずか22例の論文ですが、最初であるというimpactが大きかったのでしょう。2016年に、日本の脳神経外科学会誌であるNeurol Med Chirにおける引用論文のtopに私の総説が選ばれたのは、非常に喜ばしい業績でしたが、今回も非常に嬉しい内容でした。癌に対するPDT研究の中で、脳腫瘍領域が徐々に注目されてきていることの一つの表れかもしれません。今後もどんどん本誌に論文をpublishしていきたいと思います。

ミラー論文アクセプト

2020-08-11 15:52:59 | 日記

我々が開発したデンタルミラーを用いた悪性脳腫瘍に対するPDTに関する論文がPDPDT誌にアクセプトされました。脳腫瘍のPDTを行なっていると、角度的にどうしてもしっかりレーザー照射ができない場所が生じてしまいます。例えば、垂直に切り立った脳腫瘍摘出腔の壁や、光の通過ルートの手前にどうしても邪魔になる構造がある場合などです。この部分にはPDTを行うことができず、治療ムラが生じてしまう欠点がありました。その点を主張した学会発表を繰り返していた10年ほど前、ある学会で、今は某大学を辞められたある先生に、ならば光を反射させて当てたらどうなんですか?と質問されました。確かにその様にできたら可能ですね、と答えたところ、例えば脳外科で使っているミラーを用いたりーーと、貴重なアイデアをもらったのです。発表後にその先生のところに出向き、大変重要なご意見をいただきありがとうございましたとお礼を言いました。その帰り道、ずっとそのことを考えながら、デンタルミラーの様なやや大型のものを用いれば可能ではないか?と考えた次第です。1ヶ月後には、光学系の基礎実験に詳しい、慶應義塾大学理工学部の荒井教授に相談しておりました。デンタルミラーを用いた光反射率の計測を行なっていただき、治療レベルを維持できることを立証していただきました。その後、東京医大の倫理委員会を通過し、晴れて第一例目を2015.7月に行なったのです。その後、ミラーを用いることの有用性を各種学会でアピールし、とうとうこの方法論が米国の医学雑誌に本日アクセプトされるに至ったのです。我々が学会発表を愚直に繰り返すことのメリットとして、他者がどの様に考えるのかを窺い知ることができる点が挙げられます。他者は批判的に発表を見ていることが多いのですが、時に建設的な意見をくれることがあります。今回のエピソードはまさに後者の典型であったのかもしれません。今後、世界の脳神経外科医がPDTを開始する上で、ミラー照射法というものが当たり前の様に流布することを期待しています。私は、16年以上にわたりPDTの発表を継続してきています。その間に多くの先生と知り合い、自分のidentityを確立できたと言って過言ではありません。愚直なる継続こそが、臨床医・研究者のprofessionalismに重要であることを改めて知った次第です。今後もPDT研究を愚直に続けてまいります。