【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

叶わぬ雪の旅宿。

2008年01月05日 01時50分24秒 | 幻想世界(お伽噺) 
  



北の、知らない国から木枯らしが、雪風をつれ夜の街で舞っていた。

白い闇が狂い舞う港街、遠き潮の香りで満ちていた。

夜更けた静か街の向こうがわ、闇を透かし望んでも観へぬ、夜の闇に蹲り隠れし連山。 

夜が明ければ、朝焼け茜に染まりし綺麗な雪化粧、キッと被ってます。


古きは欧州辺りの独逸風洋館造りな、古風な小さき旅宿(ホテル)。

雪降る朝の曇る明かり、重たき両開き硝子窓から。

其処は、雪嵐の港に面しています。

両に分けられ、窓辺の額縁に吊られしは、真紅色誂えカーテン。


朱色ベッチンクロス仕上げの紅き室内壁、の際に座る小さな卓には、手回し式喇叭蓄音機鎮座まします。

此処で、人目忍んで隠れ過ごしし、昔の叶わぬ人々の想いが重なる、古色な時代がかりし部屋。


眠れぬふたり、視へぬ夜の向こうを窺えるかもと、潮で曇りし硝子小窓の向こうがわ、

無理にと頬をよせあい、互いに求めて指を絡ませ繋ぎ、晩を覗き続けました。

一夜では、互いの心、貪りがたしなと、続かぬままに。


傍ら真紅のテーブルクロスの上、淵が金色クリスタルロックカップ載ってます。

其れ、細かく砕かれし硝子かなと凍れる氷入り、カップの淵より盛り上げ、硝子の肌を濡らしてました。

其処に注がれし琥珀色液体、其の時、密やかに鳴らすは静かさな音。


とくッとく ッと、 とくッとく ッと微か音がする。


琥珀色注ぎしは、白鳥(シラトリ)の細き首の如くなクリスタルデカンタ。

あなたが、小芥子人形みたいな小さきクリスタルの栓を閉めるとき、硝子が擦れ触れあう、静か音。

秘めて、静か淫靡な部屋のなか、隅々まで漂い聴こえましょうかと。


あなたの艶な振る舞い、なにかを隠す薄暗がりで見つめれば。

自分は逃げてみようかと、足音忍ばせ験してみましょうかなと。

其れは心置きなく妖しげで、誘うような、混濁な酩酊世界へと。


露で濡れしグラスの肌、小さき露の雫が伝います。

負けれればと望みし想い、いっそそうなればと伸ばす手よりも早く。

グラスの肌、あなたの白き指にて優しく掴まれる。


「こんどはいつなのぉ?」 この囁き、わたしの胸にと刺さる。

「・・・・こんど?ッテ 」 苦しさな、無意識装い喋り応じ。


っと言いながら、わたしの疲れし裸の腕、空を掴んで手を伸ばしたまま。

そうかと、想いより逃げたものを取り戻せそうもなく、ゆっくりと諦め下げました。


わたしは問われて、判らぬふりの、卑怯者 でした。


指を絡め握り合ったおまえの冷たき手の指、静かに、そっと引かれようと。

それが嫌さできつくとつかんで握り、冷たき指、引き戻しました。


おまへの白さな指、わたしにキツク掴まれ赤く染まりました。

指爪の赤色エナメル、暗い黄色い明かりの角灯ランタンで照らされ、柿色輝き。

琥珀色液体、細き指の柿色舞台の中で、砕き氷といつまでもと廻る、ダンス。


おまへの濡れたかとな滑り輝きの唇、傾けしグラスの淵、妖しげに挿み。

小さき顎上向き、顎下の白き咽喉すじ密やかに動き、熱き琥珀が流れ堕ちる印し視た。


天井から吊られしは、暗き明かりのシャンデリア。

蝋燭の黄色き輝きお、暗き瞳を一途として見つめるは、哀しき涙目なおまへ。

グラスを降ろしても、面は上にと留まり、顎下がらず鼻を啜る音、一度聴こへ。


哀しさは、苦しさ以上だと、昔ぃ訊きました。

苦しさは、慣れぬものだとも、思い知らされました。


ふたりは、何処(イズコ)かにと。

窓辺より、暗さな意識の向こう側、霧笛は何処からでもと。

港より、咽喉を擦れるような、悲鳴じみた鳴き汽笛。

幾度も、胸の中で反響しろと、幾度も。



高見な山の中腹、見送りをと旅宿の木造手摺のバルコニー。

冷たき寒さ風、吹き荒れていました。

わたしが見下ろす連絡船、雪の中の出航でした。


降る雪が、なにもかもと隠すなら、何時までもと眺めていました。

隠せぬは、嘘な覚悟で固めた、思い上がりな独り善がりでした。



「もお一度、逢える事なんかないよね 」

「・・・・・かもなぁ 」

「だけど、もお一度ぉ・・・・ 」


「狂ってやるかもぅ 」


狂えるものなら、此処から堕ちたかった。

互いに求める楽さは、何処までもと堕ちれればのことでした。





  
新年、あけましておめでとうございます。

今年も、わたしはキッと、気侭我侭なんでしょう。

お許しを。



  


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