旅人

昼の顔と夜の顔。
一人の人の昼間と夜の違う様子は、どこかなぞめいて怪しく妖しい響き。

一軒のお店で、ランチタイムとディナータイムではメニューが違うことがある。
cafe＆bar、これも見かける。
だがこの場合、どちらも扱ってますよという表示になっているのが通常だ。

cafe＆bar bissli、ここビスリは、店主が変わる。
一軒の店を、二人で使っている。ワークシェアリングみたいに。

なるほど、これは面白い。

昼のビスリはこうすけさん、夜のビスリはアラタさん、決して多重性人格ではなく、人が違う。

放浪に刺激されたこうすけさんの大学生活は、放浪の日々だった。
そこには、出会いがあった。
東京人の彼が、今こうして静岡市でカフェを開いているのも、紐をずるずると手繰り寄せてみれば
放浪がカランカランと音を立てて見えてくる。

ニュージーランドの一カ月、沖縄で島プロジェクトのボランティアの日々、ヒッチハイクで歩いた日本。。。。

卒業後は店を持ちたいとナマケモノ倶楽部のスローカフェで働く。
それも、旅で知り合った人との繋がりの中から知った店。

ビスリの前身ピサウェイのオーナーと知り合ったのも、旅だった。
店舗つくりを手伝った時は、自分がそこを切り盛りすることになろうとは、夢にも思っていなかった。
ある日、ピサウェイを閉めて旅に出るという知らせ。
昼間はこうすけさんが、夜はピサウェイの客だったアラタさんが店を継ぐことになる。

大河を流れる舟には、どうやら遠目のきく魔法の羅針盤が備わっているらしい。

静岡市の夜の繁華街の通り沿い、少々入りにくいビルの細道、上がっていった２階に隠れ家の如く。
地元に慣れた人が経営するような店。
友人のために始めたような、ほっとして腰の落ち着く店。

扱うのはフェアトレードの珈琲や、オーガニックな食べ物。
どこにいても、この人は自分のできること、自分がやることを忘れない。

あっという間に、仲間も、応援者も、常連客も。

靜岡に、こんな人一人だけだろうという人ばかり来ると言う。
面白い表現をする。

店をやっってみて、大変だし、面白い、という。
再確認や再発見、感謝の本当の意味、すごい勉強になる。。。。のだそうだ。

人の繋がりの面白さをそのまま生きているようなこうすけさん、
間もなくの土曜、６月４日に開かれるbe　good　cafeその１３回目もお手伝い。
今回のゲストは、cafe　slow代表、吉岡さん。テーマはフェアトレード。
なんと。。。ね。

知り合いがいただけで土地勘も無い静岡で、今年お店を始めた人は、もう、ここの生活を手に入れている。
年齢不肖な若者は、一見頼りなさそうでいて、その瞳には達観した老成の色が光る。
ああ、そうか。これが遠目のきく魔法の羅針盤の光か。



両替町通りを北へ。青葉通りと交差する手前の左手。見逃さないように。



「戦争のつくり方」の挿絵を描いた井上ヤスミチの壁絵が迎える。



２階に上がった入り口。少し勇気がいっても、ここまで来れば、ほんわかした仙人の顔が待っている。
ア、彼の入れる珈琲は美味しい。