語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


田中一村の天井画

2013年08月25日 | 能登の花
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田中一村の天井画が、「やわらぎの郷」の小さな御堂にもどってきた。

県内外の美術館での展示を終え、修復された美しい状態で。

実家のとなり町、宝達清水町にあるこの場所は、

ひっそりと、訪れる人も少なくて、気のすむまで絵を眺められる。

49枚の植物画は、田中一村が40代のころ(奄美大島に移住する前)

ここで寝泊まりし、近辺の野山から集めた薬草を描いたもの。

素朴な植物ながら、一枚一枚の構図の美しさ、躍動感、

何度見ても見飽きない。







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当時、千葉で苦しい生活を送っていた孤高の画家に

天井画を依頼し、石川にいざなったのは 施設の創始者、北橋茂男氏。

大阪で洋食店を営み財をなした人だが、

健康な「食材」に対するこだわりから、

身近な植物の中から、食材となる薬草を

この聖徳太子を奉る御堂の天井に描かせたのだそうだ。





一番奥の絵に、一村のサインが。

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北橋氏のおかげで、一村は新境地をひらき、

世にも珍しい、薬草の天井画が後世に残された。

しかもここは一年中、無料開放されている。

なんてありがたいこと。



園内には、一村が2ヶ月ほどの制作期間中、

滞在していた小さな家も残されている。

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それからもう一つ、別棟の道場に残された作品が。

仏壇の地袋に描かれた白い蓮の花の絵、

これも展覧会での展示から一緒にもどってきた。



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美術館でのよそいきの顔でなく、

絵が、生活の中で息をしている。

描かれた蓮の花が、匂い立っている。






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美術館に収蔵されるという話もあったようだが、

こうして作品が本来の場所にもどってきた。

そして、ここの光のうつろいとともに

表情を変えてはたのしませてくれる。


やわらぎの郷

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