語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


桜にまつわるお能「吉野天人」「西行桜」について

2015年03月06日 | 作品展、コンサートなどのイベント

お能には、花や木の精が人間の姿になって現れる曲が

たくさんあるようです。美しい空想ですね。

人が人を愛するように、花や木にも深い愛情が、

むしろさらに畏敬の念をもって、植物を見てきた

東洋人の思想が、お能に反映されているように感じます。

4月に開催するお能の会では、

桜の季節に合わせて、桜の精、桜を守る天人の曲を選んでいただきました。

そのあらすじをまとめてみました。

また、今回一緒に企画をすすめてくだった

シテ方の下平克宏さん、ワキ方の殿田謙吉さんは

各地の大舞台でご活躍のすばらしい能楽師さんです。

合わせてプロフィールをご紹介します。

 

【 曲(演目)】

両日とも昼の部は「吉野天人(よしのてんにん)」

夜の部は「西行桜(さいぎょうざくら)」です。

 

「吉野天人」

(シテ  下平克宏  写真提供  前島吉裕) 

 

毎春、色々な場所の桜を見ることにしている都の男が、

今年は吉野の桜を見ようと思い立ち、仲間たちとともに吉野山に入ります。

するとそこへ高貴な姿をした女性が現れます。

このような所になぜ女性が?と不審に思った男が女に尋ねると、女は

「私はこの辺りに住む者で、

 一日中 花を友として暮らしているのです。」

と答えます。

そして都人と共に花を眺めます。

しかし女がいつまでも帰ろうとしないので、男が尋ねると、女は

「実は私は天人で、花にひかれて来たのです。

 今夜ここに旅居して信心なさるならば、

 古の五節の舞をお見せしましょう。」

と言い、女は消え失せます。

やがて夜になり、どこからともなく音楽が聞こえ、

辺りにはなんともいえない良い香りが立ちこめます。

するとそこへ天人が現れ、桜の花に戯れ舞を舞っていましたが、

また花の雲に乗ってどこかへ消え去っていくのでした。

 

前シテ:里女 /後シテ:天人  . . .  下平 克宏(観世流)

ワキ:都人  . . . . . . . . . . . . . . .  殿田 謙吉(下掛宝生流)

地 謡  . . . . . . . . . . . . . . . . . . 大槻 祟充(観世流)

笛  . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 江野 泉 (森田流)

 

 

「西行桜」 夜の部(ろうそく能)

(シテ 藤波重満  写真提供 前島吉裕)

 

嵯峨の奥に住まいする西行の庵には、桜の名木がありました。

修行の障りになるのをおそれて、

今年の春は花見客の訪問を受け付けまいと決心しますが、

都の者たちから乞われるとしぶしぶ見物を許します。

都人たちは、今を盛りと咲く桜を愛でて花見に興じます。

その様子を見て西行は、花の散るのを静かに眺めて心を澄まそうとしたのに

俗世の人々に妨げられたのは桜のせいであると歌に詠みます。

夜になり、花の下でまどろんでいる西行のもとへ

老人が現れ、桜に罪はないとさとします。

そして自分はこの老木の桜の精であると名乗り、

物言わぬ草や木もこうした道理を教えさとすことで

今度は悟りえた西行に導かれて、

仏の知遇を得ることになるのだと喜びます。

老木の精は、都周辺の桜の名所を案内して西行を楽しませ、

やがて夜明けとともに姿を消します。

西行が目覚めると辺り一面に

雪のように花が散り敷いているのでした。

 

シテ:桜の精  . . . . . . . . 下平 克宏(観世流)

ワキ:西行法師 . . . . . .  殿田 謙吉(下掛宝生流)

地 謡  . . . . . . . . . . . .  大槻 祟充(観世流)

笛   . . . . . . . . . . . . . . 江野 泉 (森田流)

 

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【 能楽師 プロフィール 】

 

下平 克宏(しもだいら かつひろ)

観世流 シテ方

群馬県高崎市出身 1958年生


学習院大学入学後、サークル(観世会部)にて能と出会う。

藤波重満師(観世流職分、東京芸術大学名誉教授、

重要無形文化財総合指定保持者)の許へ内弟子として入門。

東京芸術大学音楽学部邦楽科能楽専攻に入学。

同校卒業後、邦楽科助手を歴任。

昭和63年独立。

平成元年4月に独立披露能を主催し、「羽衣」を勤める。

平成3年「石橋」、平成5年「乱」、

平成7年「道成寺」をそれぞれ自身主催の記念会で披く。

平成10年 自身記念会にて「井筒」

平成15年 自身記念会にて「道成寺」赤頭を披く。

平成20年に演能の会特別公演にて「安宅」瀧流之伝を披く。

平成21年オーストリア・ルーマニア海外公演に参加。

現在、演能の会を主宰し、東京を中心に演能活動を行う。

シテ方観世流準職分

(社)能楽協会会員

(社)観世会会員

正派音楽院講師

上毛芸術奨励賞特別賞受賞

ぐんま観光特使


. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 

 

殿田 謙吉(とのだ けんきち)

 

下掛(しもがかり)宝生流 ワキ方

石川県金沢市出身 1959年生

東京都練馬区在住

殿田保輔(やすすけ)の長男

宗家 人間国宝の宝生 閑及び父に師事

東京芸術大学 音楽学部邦楽科能楽専攻卒業  

公益社団法人 能楽協会 東京支部常議員

日本能楽会会員

重要無形文化財総合指定保持者

いしかわ観光特使

石川県金沢市出身 1959年生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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