この薄桃色の花、
新緑の山を彩る空木(うつぎ)の花。
貴重な品種だそうで、葉に斑点があり、
咲き始めは白く、
やがてうっすらとピンク色に変わっていく。
これを、もとスタッフのるり子ちゃんが
能登にある実家のお庭から持ってきてくれた。
るり子ちゃんの実家は、
「牡丹 (ぼたん) の寺」の愛称で知られるお寺さんなのだが、
牡丹だけでなく、一年中、様々な花を咲かせる
美しい花のお寺なのである。
その るり子ちゃんが金沢の大学に通っていた頃、
ちょうど私が花屋を始めたばかりで、
初代アシスタントとして、
時々、仕事を手伝ってくれた。
卒業後、東京で就職し、かれこれ10年以上たったけど、
先日、ひょっこり現れて、
私の店からすく近所のお寺さんに嫁ぐことになった、
という 驚きの吉報をもたらしてくれた。
細く繋がっていたご縁の糸が、
太く強度を増して、結び直されたようだ。
そして、今日、るり子ちゃんは花嫁になった。
お寺さん同士の結婚式、
仏前の結婚式を 私は生まれて初めて拝見した。
ご本尊への奉告、
僧侶による、笙(しょう)や篳篥(ひちりき)の演奏、
三三九度の杯を交わし
厳かに式が進んでいく。
そして、神式などでは見られない、献花の儀式。
新郎新婦が、それぞれ花を献上する。
御仏前に献げられた花は、
遠い能登の地、
花嫁の実家のお寺に咲いていた花である。
淡いピンク色の芍薬と白いカラーの花。
見物に集まったご近所の人々も、
思わず顔をほころばせて、
花の儀式を見守っていた。
とどこおりなく儀式が終わり、
" 花嫁のれん " の向こうに入った花嫁は、
わたぼうしをはずして、少しほっとした表情になった。
その控え室の床の間にも、
花が美しく生けられていた。
花嫁の家の庭に咲いていた薄桃色の花、
白無垢姿の花嫁を優しく見守っている。
これからの人生にも、たくさんの花が咲いて
慰めと歓びを与えてくれますように。
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