昔むかし、といってもほんの半世紀前のこの頃、
ある山深い村の、それはそれは貧しい農家のとある一軒屋で
餅つきをしておったそうな。忙しいのに、動かぬ男衆にいらだって
つい、すす払いやら拭き掃除を始めたそこの嫁っこが、急に産気づいたから
さあ、大変。あわてただんなは、ハイヤーを呼んだそうな。
雪深い山里、やっとハイヤーがついて乗り込む頃には、もうかなり痛みも強く
2歳になる長男も不安そうに母さんをみとったそうな。
むかうは、ダムの下の隣の町立病院、長男もそこで産み落とした、といっても
そのときは帝王切開だったという。
ダムに行く前に、嫁っこの親代わりにようしてくれる県議さんとこへ、産気づいたと言って寄り、いよいよダムに、すると当時トンネルも少ないガタガタ道。おまけに雪崩れでついに行き止まり。するとハイヤーの中で「ホギャー、ほぎゃー」と
産声が。取り上げたのは、その子のおとっつあん。さあ、こうなると大変だ。
下手にエンストでもすると、赤子が危ない。ハイヤーさんの腕の見せどころとばかりに、バックバック、ひたすらバック、向きを変えられる幅もない当時だった。
そして嫁っこの親代わりの宮本翁の家で、産湯につかり、めでたしめでたし。
それにしてもお気の毒なのはハイヤーさん。それがこのかたがまた良いお方で、車で命を落とす事はあっても、命が生まれることはめったにないことでめでたい。
ついては子の名づけをさせてくれろという。親二人たいそう恐縮して、喜んでおまかせすることに。ついた名前が、トヨペットカーのなかで生まれたから、「とよか」。実に単純。しかも、このいい加減な夫婦は、ついでに女の子だし、売れ残りそうと見たのか、生まれた日もごまかして1月2日で届け出た。
それから10年。兄貴のにくらべ、自分の写真のあまりの無さと、名前のつけかたのいいかげんさに加え、実のたんじょう日が「餅つきの日」としかわからない両親に橋の下で拾われた子だと言われ、その方がよっぽど悲劇の主人公になれてよかったのにと思う「とよか」であった。DNAは怖い。いくら他人かもと思おうとしても、世間の人が、どこに投げとってもここの子とわかるとのたまうのだから。
しかも親のいいところは似ずに、変なところばかり似るもので、いい加減さは人一倍。自分でいうのもおこがましいが、人のいいのも親譲り。三日坊主はお墨付きの天下一品。
奇特な方もあるもので、何を血迷われたのか、だましだまされか、ご縁があって嫁にもらってやるという。売れ残りのクリスマスケーキとなった身には、願っても無いお話。いざゆかん、あれ、写真がない。めったにとられることもなかったし、写真は嫌いだった。披露宴をもりあげようと、義父は一計を案じ、トヨタ自動車に誕生の由来を伝えると、なんとあの世界のトヨタから、・・・・
車が一台、じゃじゃーん、残念、大きなミニカーでした。
引越しの時処分しちゃったんだなあ、これが。もったいない、というより、あのミニカーに今は亡き義父の精一杯の愛がつまっていた気がする。それがやっとわかった今、義父はもういない。
ああ、そうだ。私、昔から「蛍光灯」。P病は更にそれに輪をかけることに貢献している。かくして逃げたい癖も乗じて、年賀状兼お礼状は新年に持ち越しそうである。おまけに風邪と大雪で実家へ帰るのは断念した。粛々と反省しながらかかせていただこう。もう50になるのだから。そして一段落したら、色々なお話をしに寄ってもらいたい。ごぶさたしている教え子の事も気にかかる。
さあ、今年はもういくばくもない。動けずともあきらめないで、ガンバ!
ある山深い村の、それはそれは貧しい農家のとある一軒屋で
餅つきをしておったそうな。忙しいのに、動かぬ男衆にいらだって
つい、すす払いやら拭き掃除を始めたそこの嫁っこが、急に産気づいたから
さあ、大変。あわてただんなは、ハイヤーを呼んだそうな。
雪深い山里、やっとハイヤーがついて乗り込む頃には、もうかなり痛みも強く
2歳になる長男も不安そうに母さんをみとったそうな。
むかうは、ダムの下の隣の町立病院、長男もそこで産み落とした、といっても
そのときは帝王切開だったという。
ダムに行く前に、嫁っこの親代わりにようしてくれる県議さんとこへ、産気づいたと言って寄り、いよいよダムに、すると当時トンネルも少ないガタガタ道。おまけに雪崩れでついに行き止まり。するとハイヤーの中で「ホギャー、ほぎゃー」と
産声が。取り上げたのは、その子のおとっつあん。さあ、こうなると大変だ。
下手にエンストでもすると、赤子が危ない。ハイヤーさんの腕の見せどころとばかりに、バックバック、ひたすらバック、向きを変えられる幅もない当時だった。
そして嫁っこの親代わりの宮本翁の家で、産湯につかり、めでたしめでたし。
それにしてもお気の毒なのはハイヤーさん。それがこのかたがまた良いお方で、車で命を落とす事はあっても、命が生まれることはめったにないことでめでたい。
ついては子の名づけをさせてくれろという。親二人たいそう恐縮して、喜んでおまかせすることに。ついた名前が、トヨペットカーのなかで生まれたから、「とよか」。実に単純。しかも、このいい加減な夫婦は、ついでに女の子だし、売れ残りそうと見たのか、生まれた日もごまかして1月2日で届け出た。
それから10年。兄貴のにくらべ、自分の写真のあまりの無さと、名前のつけかたのいいかげんさに加え、実のたんじょう日が「餅つきの日」としかわからない両親に橋の下で拾われた子だと言われ、その方がよっぽど悲劇の主人公になれてよかったのにと思う「とよか」であった。DNAは怖い。いくら他人かもと思おうとしても、世間の人が、どこに投げとってもここの子とわかるとのたまうのだから。
しかも親のいいところは似ずに、変なところばかり似るもので、いい加減さは人一倍。自分でいうのもおこがましいが、人のいいのも親譲り。三日坊主はお墨付きの天下一品。
奇特な方もあるもので、何を血迷われたのか、だましだまされか、ご縁があって嫁にもらってやるという。売れ残りのクリスマスケーキとなった身には、願っても無いお話。いざゆかん、あれ、写真がない。めったにとられることもなかったし、写真は嫌いだった。披露宴をもりあげようと、義父は一計を案じ、トヨタ自動車に誕生の由来を伝えると、なんとあの世界のトヨタから、・・・・
車が一台、じゃじゃーん、残念、大きなミニカーでした。
引越しの時処分しちゃったんだなあ、これが。もったいない、というより、あのミニカーに今は亡き義父の精一杯の愛がつまっていた気がする。それがやっとわかった今、義父はもういない。
ああ、そうだ。私、昔から「蛍光灯」。P病は更にそれに輪をかけることに貢献している。かくして逃げたい癖も乗じて、年賀状兼お礼状は新年に持ち越しそうである。おまけに風邪と大雪で実家へ帰るのは断念した。粛々と反省しながらかかせていただこう。もう50になるのだから。そして一段落したら、色々なお話をしに寄ってもらいたい。ごぶさたしている教え子の事も気にかかる。
さあ、今年はもういくばくもない。動けずともあきらめないで、ガンバ!