イサクの日記帳

気ままな日記帳です。

2020.12.02 天声人語

2020年12月03日 | Weblog

天声人語

米国の大統領だったオバマ氏がノーベル平和賞に選ばれたとき、世界各地からの反応を紙面に載せるべく外電を探したことがある。褒めそやす言葉ばかりのなか、ポーランドのワレサ氏だけは違った▽自主管理労組「連帯」を率いた抵抗運動が評価され、かつて平和賞を受けたその人の言葉は「早すぎる。彼はまだ何もしていないじゃないか」。オバマ氏の受賞理由は「核なき世界」を目指す理念と取り組みだったが、結局尻すぼみとなり、ワレサ氏の危惧は的中した▽ノーベル各賞のなかで、平和賞はときに失望がついて回る。 軟禁の身で賞に選ばれ、民主化の星だったアウンサンスーチー氏がミャンマーの政権に就いた後もそうだった。彼女の政権下で起きたロヒンギャ迫害は、まれに見る人道危機となった▽エチオピアでいま起きている事態も同じである。この国の政府と、北部の政党ティグレ人民解放戦線との間で軍事衝突が続いており、民間人も含めて数千人が犠牲になったと報じられる。 政府を率いるのが、昨年の平和賞を受けたアビー首相である▽隣国エリトリアとの紛争を解決した功績が認められての受賞だった。その際の彼の演説はいまとなってはむなしさを感じるばかりだ。「戦争を美化しようとする人がいるが、戦争は関わる人全員にとって地獄の縮図だ」▽アビー首相の強硬姿勢が、この地に地獄の縮図をもたらしているのではないか。平和を後押ししようとする賞が空回りする。 そんな音が、聞こえるようだ。2020. 12. 2