2章第1項:【人は自身の意識を外界に映し出す※(1)】
わかりにくいテーマなので以前に述べたように、同じ内容を別の表現や事例で説明していきます。章や節ごとに深化させていきます。スパイラル方式です。私にもっと文章力があればよかったのですが...(^_^;)
私たちが物やツール、建造物を作るときは完成した姿をイメージします。
私たちの思考は、イメージと同じである言っても過言ではありません。
言語や数式だけでは、"物"を生み出すことはできません。先にイメージありきです。
言語や数式でさえイメージの一種ですから。
人間がつくるイメージには、おおよそ3種類あります。
(1)自身が学習や体験から得た素材を基にして描くイメージ。
(2)自身の内面にある素材(臓器、頭脳、さらには心理構造)の投射から描くイメージ。
(3)描いたイメージが共感され、共有化されて人格のように独立するイメージ。
人間と動物の決定的な違いは、(2)と(3)のイメージがつくり出せるかにあります。
犬や猫も意識がありますから、当然、(1)のようなイメージは描けます。類人猿はさらに高度な学習能力を持ちますが、(2)と(3)のような人間独自の抽象的なイメージを描くことはできません。
(1)について。
犬と散歩中、怖い体験した場所に来ると犬は急に怖じ気づきます。また反対に飼い主の声や足音が聞こえたら喜びの表現をします。これは条件反射というより、恐怖体験のイメージや優しい飼い主に可愛がられているイメージがあるからではないでしょうか。人間はさらに、このイメージから様々な道具を造ることができます。もし、人にこのような力がなければ、自然界の中で生存は不可能だったでしょう。人間は、爪も牙もなく、攻撃に耐えられる硬い皮膚もない、筋力もない、ないないづくしの弱い存在です。弱いが故にイメージの力で様々な"物"を創って身を守ったのです。牙の代わりに武器をつくり、爪に代わりに穴を堀り、木を倒すためにクワや斧をつくり、弱い皮膚の代わりに服や鎧をつくりました。のろい足を補うために、馬を使い、自動車を発明しました。
(2)について。
例えば心臓の構造は何かに似ているとお思いませんか?そう、エンジンです。
脳の構造は?コンピュータの階層構造によく似ています。ピラミッドは、心理学が説明する潜在意識モデルに似ています。意識は、外界を模倣して都合のよいイメージをつくり、潜在意識は心の内側を外界にイメージ投射します。
(3)について
類人猿の中でもチンパンジーの知能は、一般に3歳から5歳児に匹敵すると言われています。人間の子どもと図型ゲームや記憶テストをしても引けを取りません。しかし、神や創造主をイメージすることや未来を思い描くことは、いくら訓練してもできません。
ある著名な心理学者※(2)がこんな実験をしました。
5歳児に、ボールを投げて的に当てるゲームをさせます。ボールはマジックテープで的に付きます。但し、2つ条件があり、後ろ向きになって、的を見ないでボールを投げること。それと、線からは、決して的に近づかないこと。最初のひと組の子供たちは、なかなかボールが的に付きません。
誰も見ていないのを確かめると、ずるをして線を越して的にくっけてしまいました。もうひと組には、この部屋には「プリンセス・アリス」という妖精がいて、みんながズルをしないように見張っていると教えます。妖精が座る椅子も置いておきます。すると、ほとんどの子はルール通りに行動しました。実際は、妖精の存在はいないのですが、「見られている」「罪の意識」という概念を人間は幼いうちからもっているようです。そして、この概念は、他者と共有する事ができます。
その顕著な例が、ユダヤ民族と旧約聖書です。
※(1)映し出す=投影
※(2)ジェシー ベリング「 ヒトはなぜ神を信じるのか―信仰する本能」