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中国の泥人形(4)陝西省の泥人形

2021年06月09日 | 中国文化

麒麟送子(鳳翔)

 

陝西省は歴史上多くの泥人形の産地を輩出してきました。鳳翔県、乾県、安塞県、富県、及び西安市郊外の狄寨、魚化寨などの地が泥人形の産地です。

 

 1.鳳翔の泥人形

 

鳳翔県(2021年1月より、これまでの鳳翔県を廃止し、宝鶏市鳳翔区になった)は行政的には宝鶏市に属し、陝西省の省都の省都西安より渭河を遡り、約170キロ西にあります。

陝西省宝鶏市鳳翔県

 

鳳翔県の泥人形は陝西省の民間工芸の重要な品目であり、中国西北地域の民間工芸を代表するものです。この地の泥人形は、四つのカテゴリーに分けることができます。

 

①大型の獣の像

「大坐虎」、「大坐獅」、「黒白坐虎」などがあり、高さは約60センチ、何れも季節の行事の際の室内の飾りです。

 

②小型の獣の像

花馬、花兎、泥牛、泥狗などがあり、大きさは3-15センチくらい。

 

③人物像

八仙人、西遊記、麒麟送子、牧童牛などがあります。

 

④掛飾(壁掛け)

「掛虎」が最も有名で、大きさは6-130センチ。他に「送子掛片」、「鍾馗掛片」、「哪吒掛片」などがあります。

 

4つのカテゴリーのうち、「掛虎」が最も有名です。「掛虎」は壁飾りで、土に紙糊を加え、型取りして成形したもので、本体はたいへん薄く、色合いは鮮やかで、農家の人々にたいへん好まれます。

鳳翔掛虎

 

「掛虎」は彩色したものと白黒のものの二種類があります。彩色掛虎は白粉の下地の上に墨の輪郭線で紋様を描き、その中に彩色を加え、最後に全体にラッカーをかけてあります。白黒の「掛虎」は墨の輪郭線だけで色を塗っておらず、ラッカーもかけていません。「掛虎」は彩色でも白黒でも、大きいものでも小さなものでも、その基本の造形は何れも、正面が虎の頭で、丸い目、大きな耳、大きな口、へこんだ眉、広い額、額の真ん中に「王」の字が描かれています。紋様は線描が主で、額、下あご、両頬には大きな牡丹の花、桃の花、ザクロ、佛手(佛手柑)、蓮の花などの縁起の良い草花が描かれ、その間には雲の渦やつる草の紋様が描かれます。全ての紋様の配置、間はよく考えられ、適度な間隔が取られ、全体の構図が対称になるように均衡が取られ、紋様の描線は伸び伸びとして流れるようで、筆遣いの変化に注意が払われています。彩色の掛虎は深紅、浅黄、黄色、バラ色、青緑などの色を多用し、色は鮮やかで目立ち、色合いが濃く鮮やかで、喜びや楽しみの気持ちに溢れています。

 

「掛虎」の成り立ちは、陝西省の「社火」(祭りの時に行う娯楽演芸。「高台」、「高跷」(高足踊り)、「旱船」(「跑旱船」。若い女性に扮した人が、模型の船から上半身を出し、歌いながら練り歩く)、「舞獅」、「舞龍」、「秧歌」(田植え踊り。ヤンゴ踊り)などの通称)や「地戯」(追儺(ついな)。鬼やらい。元々、商(殷)、周代に方相氏により、大みそかの夜、悪鬼を払い疫病を除く儀式に由来)などの風俗や行事と関係があります。「地戯」で使うお面には「掛虎」に似たものも見られ、それゆえ「掛虎」は「地戯」の面が変化したものと考えられています。民間では「掛虎」の面には邪鬼を払う効果があると考えられ、廃れることなく長い間伝承されてきました。毎年、春節の前に、この地の多くの農家では「掛虎」を買い、家の門の「門楣」(戸のかまちの上方の横木)の上に「掛虎」を掛け、新年の邪鬼払いに用いてきました。「大坐獅」、「大坐虎」を部屋に飾る目的も、「掛虎」と同じです。

鳳翔大坐獅

 

小型の泥玩具では、鳳翔の泥牛も特色があり、大で長さ約30センチ、小は約4センチ。何れも二枚の型から作られ、中は中空になっています。中空の部分に小石や豆が入っているものもあり、振るとカランカランと音がします。泥牛の造形は多くが寝そべって、頭は横を向いています。色は黒が多く、緑(青牛)、黄牛、紫紅(紫がかった濃赤色)の牛もあります。牛の顔は簡潔ですが威厳があり、背中に模様が描かれ、牡丹、桃、蓮の花、或いは「三多」(桃、佛手柑、ザクロが描かれ、それぞれ寿、福、多産の象徴)の図案で飾られています。

鳳翔泥牛

 

泥牛の起源は古く、漢代以前、農家には「土の牛を祭って寒気を追い払う」風習がありました。漢代以降は「立春に土の牛を作り」、節気を祭り、農耕の無事を祈りました。

 

宋の孟元老は『東京夢華録』で、

「立春の前日、開封府では春牛を禁中に入れ「鞭春」(立春に豊作を祈願して張り子の牛をむちで打つ行事)を行う」とあります。

 

古代には土の牛を制作する時に「五行」説の原則を守り、立春の日の干支と五行を総合して土の牛の色が決められました。こうした習俗は長い時間続けられ、1940年代ごろにはまだ盛んに行われていたそうです。

 

鳳翔の泥人形は、形にふくらみがあってつややかで、ふくよかで豊かで、立体的な造形が多く、面白みを増しています。本体は中空で、薄く軽くできていて、色は鮮やかできらびやかで、お祝いの喜びの気持ちに溢れています。鳳翔の泥人形の題材は、多くが昔の寓話から採られていて、中原文化の影響が色濃く映し出されています。

 

 

 

 2.西安の「泥哨」(土の呼び子)

魚化泥叫叫

 

魚化寨、狄寨は何れも西安市近郊の農村部でしたが、西安市市街地の拡大で、今は西安市市街に組み込まれてきています。これら両地は何れも「泥哨」、土の呼び子を生産してきました。低温の火で焼いた陶器の呼び子で、習慣上「泥叫叫」、「小泥叫」と呼ばれます。

 

魚化寨の「泥叫叫」は高さ約5センチ、正面は型押し、背面は手で捏ねてあります。一面の型で作られます。てっぺんには小さな丸い穴が設けられ、空気の通路になっていて、吹くと甲高い音が鳴ります。白地が乾いたら、穀物の糠やのこぎり屑を燃料に、熾火で焙り焼きにします。焼いている過程で、白地の表面の土の粒子と粒子の間に大量の炭素を吸収し、それにより全体が真っ黒になります。焼き上げた「泥哨」(呼び子)は白、赤、黄、緑、青で上絵を描き、表面には桐油が塗られます。黒く照り輝き、見栄えが良く、子供たちが手に取って遊ぶのにたいへん良いものです。

泥叫叫は一面の型で作られる

背面は手で捏ねて仕上げる

てっぺんと背面の空気を通す孔

焼いた人形に着色する

 

「泥叫叫」の造形は多くは歴史人物、芝居の人物、神話の人物、現在の生活の中の人物などを題材としていて、全て直立していて、基本の造形は顕著な変化が無く、人物の頭の飾り、服装、武器、道具などで人物の身分や特徴を表しています。

西安泥叫叫

 

狄寨泥叫叫の制作方法と形式は、基本的に魚化寨泥叫叫と同じです。狄寨付近の古い地名を取って、白鹿原の名を冠することもあります。魚化寨と狄寨の「泥叫叫」はいずれも小さいものを得意とし、堅実に作られ、作りは小さいが精巧で、持ち運びに便利に作られています。



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