ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2013.10.25 “最後の経過は早い”という厳しさ

2013-10-25 20:22:33 | 日記
 読売新聞の医療サイトyomi.Drで今月から新しく始まった、緩和医療医・大津秀一先生のコラムが目に飛び込んできたので、以下転載させて頂く。
 先生は、「死ぬときに後悔すること25」というベストセラーの著者。今月の新刊文庫である。買わなければ、と思って大学生協へ行ったが、見当たらなかったのでいまだ買えていない。とても気になっている。

※  ※  ※(転載開始)

専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話 治らないがんと生きる(2013年10月24日)

 いま日本人が一番亡くなっている病気は何ですか?
 皆さん、この答えはご存じですか?
 そう、がんです。現在約36万人(2012年)の方ががんでお亡くなりになっています。それでは2位は何ですか?
 答えは心疾患です。こちらも約19万9千人(同)と多いですが、ざっくり言いますと、がんに比べると半分くらいの数ではあります。
 高齢化の影響が強いため、がん死亡率は上昇しています。しかし、年齢の影響を除いて考えると、がんの死亡率は下がっています。
 がんも進み具合によっては、治療も経過も変わります。例えば早期がんの場合であれば、その治療の目的が完全に治ることになりますが、進行したがんで完全に腫瘍を手術等で取りきることができない場合は、できるだけ機能を低下させない、かつ長く生きられるようにする、というのが治療の目的となります。
 誰しも病気になれば治りたいと思うのは当然です。私も何度も病気をしたことがありますから、元に戻ってほしいと願う気持ちはとてもよくわかります。前回の内容とも重なりますが、失って真に、人はその普通にあった「健康」の大切さをまざまざと思い知らされるのです。
 けれども非常に進んでしまっているがんの場合の治療の目的は、根治ではありませんし、逆にそれを目指して例えば抗がん剤治療をし続けても、いつか最期が訪れてしまいます。抗がん剤治療と並行して、限られた時間をご自身にとって充足されたものにするという「人生の質」の観点から動いていくことが不可欠なのです。
 もちろん私も、進行したがんで治療をされていらっしゃる方に長く生きてほしいと願っています。しかし治療だけで時間を過ごして、それで人生が終わってしまったら、悔いが残るのはご本人なのではないかと思いますし、実際にそういう声も患者さんからあるいはご家族からたくさん聞いてまいりました。
 またさらにがんの特性として、最後の経過は早い、というものがあります。よく有名人ががんで亡くなった時に、「急だった」「早かった」という感想が周囲の方から聞かれることもありますし、そういう印象を私たちが受けることがあります。ただそれも「当たり前」の経過なのです。最後の何週間の経過は一般に早いのががんの特性です。詳しくは近著『どんな病気でも後悔しない死に方』に記してありますのでどうかご参照ください。
 がんという病気の特性を知っておけば、いざなった際にも、治療と並行して「良い人生」を作り上げることができるのではないかと思います。次回、この「並行」について事例を挙げて皆さんと考えたいと思います。

(転載終了)※  ※  ※

 がん患者を9年近く(うち再発進行がん患者としては6年近く)やっていても、このがんの最後の経過のスピード-いわゆるラッシュ期―を目の当たりにすると、たじろぐ。
 昨日訃報を記したながながさんも、そうだ。体調が悪いとおっしゃりながら、9月に入院されるまではごく普通に働いていらしたのだから。それが僅か1カ月ちょっとの間に・・・。
 先生が書かれている通り最後の経過が早い、ということは紛れもなくがんの特性なのだ。こういう最期はがん患者なら当たり前として受け入れなければならないのだろう。先日他界した義母のように、脳疾患等で何年も寝たきりということにならない、比較的最期まで元気に動き回れるのががんという病のメリットである、という人もいるくらいなのだから。
 ふと、こんなふうに呑気に来年初めに登場するT-DM1を待っていて大丈夫なのだろうか、という不安に陥る。増悪していてもまだ慌てる段階ではない、という主治医の言葉を信じ、縋りながら、いつ私の体の中の細胞が暴れ始めるのだろうと思うと、そうそういつも心穏やかでいられないのが正直なところだ。けれど、出来れば昨秋のECのような強力な抗がん剤を投与して健康な細胞まで痛めつけ、受験前の大事な時期、息子の足を引っ張るように寝込みたくない(いわんや入院したくない)というのも本音だ。
 だからこそ、人生の質の観点から動いていくことが不可欠だ、という。そう、治療と並行して、限られた時間を自分にとって満ち足りたものにするために今の私の毎日はある。それが真実だ。

 希望を捨ててはいけないけれど、もしかしたら新薬で完治するかもしれない、と思うことはやはり甘いのだな、と自戒する。いつ最後の経過になっても、できるだけ後悔しないように生きていかなければならない。
 スティーブ・ジョブズの言葉を思い出す。“今日が人生最後の日なら、今日することは自分がしたいことだろうか?”―長い間答えがノーであるときはいつも何かを変える必要があるとわかる-というあの言葉だ。
 もちろん一人の社会人として生きていれば、日々の全てのことは自分がしたいことばかりではない。やりたくなくてもやらなければならないことは、当然のように沢山ある。けれど、もしそれが全てやりたくないことだったら・・・やはり何か変える必要があるのだろう。
 我が身を顧みれば、家族と暮らしながら毎日仕事をし、ヨガに通い、読書や映画を楽しみ、友人と会い・・・仮に今日が人生最後の日になっても、大事な日常を送れていたと自信を持って言うことができる、と思いたい。もちろん他人様から見れば、てんで面白くも可笑しくもない大したことない平凡な毎日だろう。けれど、それこそが私にとってかけがえのない愛おしい日常なのだ。

 ちなみに先生のベストセラー「死ぬときに後悔すること25」は以下のとおりで、矢印の右が私の今の自己評価だ。
1 健康を大切にしなかったこと→ 健康に気をつけてはいたけれど、結果的に病を得た。
2 たばこを止めなかったこと → 吸ったことはない。(さらに夫も禁煙させた。)
3 生前の意思を示さなかったこと → 早めに文書の準備をしなければ、と思っている。
4 治療の意味を見失ってしまったこと → 細く長くしぶとく病と共存するために、なるべく体にマイルドな治療を望んでいる。
5 自分のやりたいことをやらなかったこと → 一つだけ残っているけれど、ほぼやりたいことをやっている。
6 夢をかなえられなかったこと → 滅相もない夢は別として概ね叶えることが出来ている。
7 悪事に手を染めたこと → 小心者なので、悪事とは無縁。
8 感情に振り回された一生を過ごしたこと → なるべく感情をコントロール出来るように日々ヨガで鍛錬しているつもり。
9 他人に優しくなかったこと →健康でブイブイ仕事をしていた時にはそうであったことも事実、けれど病を得てからは心して優しくありたいと思っている。
10 自分が一番と信じて疑わなかったこと → 滅相もない。けれど、ダメな自分でも自分が好き。
11 遺産をどうするかを決めなかったこと → 大した遺産はないけれど、早めに文書にしておかなければ、と思っている。
12 自分の葬儀を考えなかったこと → 具体的に詰めておきたいと思っている。
13 故郷に帰らなかったこと → もっと頻繁に実家に行かなければと思っている。
14 美味しいものを食べておかなかったこと → 貧乏性だったが、病を得てからは贅沢だと思わずに、美味しいものを楽しめるときに楽しむようになっている。
15 仕事ばかりで趣味に時間を割かなかったこと → 病を得てからは、より趣味に時間を割けるようになった。
16 行きたい場所に旅行しなかったこと → 病を得てからはそう無理は出来ないが、それまでは海外旅行も含めてあちこち旅行することが出来た。
17 会いたい人に会っておかなかったこと → 病を得てからは、ちょっとくらい無理をしても会いたい人には会うのがモットー。一期一会を大切にしている。
18 記憶に残る恋愛をしなかったこと → おかげさまで記憶に残る恋愛が成就して今に至る。
19 結婚をしなかったこと → 既婚
20 子供を育てなかったこと → 一男あり
21 子供を結婚させなかったこと → まだそこまで達していないが、息子の意思を阻むつもりはない。
22 自分の生きた証を残さなかったこと → 息子の存在、そしてこのブログの存在。
23 生と死の問題を乗り越えられなかったこと → まだ修行中。
24 神仏の教えを知らなかったこと → これはまったくもって勉強不足。
25 愛する人に「ありがとう」と伝えなかったこと → 日頃から言っているつもり。

コメント
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