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海の森水上競技場見直し 負の遺産 負のレガシー レガシー 彩湖 長沼ボート場 入札疑惑 陸の孤島 小池都知事 バッハ会長

2016年12月06日 17時42分03秒 | 政治
“混迷” 海の森水上競技場



▼ 海の森水上競技場 50年間で維持管理費50億円(施設赤字負担額 年間1億円) 大規模修繕費102億円 公費負担の合計152億円
▼ 海の森水上競技場 20年程度使用の“スマート施設”(仮設レベル)として約298億円で整備(小池都知事) 工事再開
▼ 4者協議トップ級会談 海の森水上競技場で合意 長沼ボート場は事前キャンプ地に

▼ 海の森水上競技場建設 長沼ボート場見送りへ 11月29日開催の“四者協議”トップ級会談で決定か
▼ “四者協議”作業部会、見直しの結論の方向性は決めず。現地視察も行った上で11月28日に議論の取りまとめ
▼ 都政改革本部 海の森水上競技場では、恒久施設として経費削減案、仮設施設案、長沼案の3案を提示 
  小池都知事 「決め打ち」せず3案を四者協議に提案
▼ 都政改革本部 検討対象を海の森水上競技場と長沼ボート場に絞る
▼ バッハIOC会長と森組織委会長、「選手村は重要で五輪の魂であり中心。分村はできるだけ避けてひとつの選手村に」
▼ 森組織委会長 “親父さん”、“兄弟”、“船長” 、バッハIOC会長との親密さアピール
▼ バッハ会長 東日本大震災被災地で野球・ソフトボールを 安部首相と会談
▼ 小池都知事・バッハIOC会長会談 コスト削減の必要性に理解を求める バッハIOC会長 “もったいない” コスト削減に理解示す
▼ 海の森水上競技場、長沼ボート場、彩湖、“三つ巴”の争い激化 日本ボート協会と日本カヌー連盟 海の森支持
▼ 小池都知事 長沼ボート場や仮設住宅を視察 村井宮城県知事 「整備費は約200億円で収まる」
▼ 五輪ボート会場、埼玉も誘致へ名乗り 整備費試算266億円
▼ 小池都知事、村井宮城県知事と会談 村井宮城県知事は組織委と会談 組織委は9つの課題を指摘
▼ 都政改革本部 調査チーム 宮城県長沼ボート場を代替地に提言 森組織委会長 激しく反発
▼ 国際ボート連盟ロラン会長 不快感を示す 連盟として海の森水上競技場支持を正式表明 
▼ IOCコーツ副会長 「これまでの都の説明と違う。改革本部の提言は信頼関係を壊す」と不快感 IOCバッハ会長は「建設費高騰は把握。建設的な協議を」




小池知事 調査チームの見直し案を“四者協議”へ提案を表明

 11月1日、都政改革本部の会合が開かれ、経費削減に向けた競技会場の見直し案の最終報告が示された。
 ボート・カヌーの競技会場については、海の森水上競技場の建設計画を見直して経費削減を行った上で「恒久施設」として整備する案と、観客席などを“仮設施設並み”にする「仮設レベル」として整備する案、さらに長沼ボート場に変更する案の3つの案について建設費や施設維持費などを示した。
 現行計画の491億円から、「恒久施設」案では328億円、「仮設レベル」では298億円に削減できるとしている。
 調査チームは、これまで候補地として提案されていた埼玉県の彩湖については、洪水や渇水対策のための調整池であり、国土交通省の管轄のため難しいという見解をすでに示しており、最終報告からは除外した。
 都政改革本部の上山信一特別顧問は「海の森水上競技場は工事が始まっているので明らかに本命であるが、今回はそれ以外も考えようとしている。アスリートの声は大前提として重要だが、実現可能性の確率が高く、時間がかからないことが絶対的な条件だ」と述べている。
 宮城県の「長沼ボート場」に変更する場合は、県の試算として150億円から200億円としている。


小池都知事 復興五輪前進 「決め打ちはしない」 見直し案複数案提示へ
 10月22日、小池都知事は、記者会見で、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長とコーツ副会長の来日で、長沼ボート場の可能性が低くなっているのではないかという記者の質問に、「プロジェクトチームの中でも長沼と推す人もいる。また客観的に見てもいろんな利点を挙げられている。ただ私は長沼(案)がプロジェクトチームで出てきてから、ようやく復興五輪の原点にいま戻りつつあるのではないか、思い出されつつあるのではないかと思っているので、その意味でも長沼が手を挙げていることは非常に大きな効果が被災地全体もしくは復興ということに目が行ったというのは大きな役割をすでに果たしてうる部分もあるのではないか思う。いまいろんな点検をしながらしっかり前に進む、その結論は総合的に判断したい」
 10月25日、小池都知事は、記者団の質問に答えて、「IOCからは『都が決め打ちをすると連携が難しくなる』と聞いているので調整していきたい」とした上で、「都政改革本部が11月1日にセットしてあるので各関係者と連携をとって進めていきたい。調査としての答えは複数案になると思う。あくまで調査ということだからだ」と述べた。



東京オリンピック 競技場整備 最新情報 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念
もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革” 競技場整備大幅見直し
海の森水上競技場、オリンピック アクアティクスセンターは新設 バレー会場は先送り 4者協議トップ級会合


バッハIOC会長 「複数種目を被災地で」提案 安倍総理と会談
 2016年10月19日、バッハIOC会長は、総理官邸で安倍総理と会談し、東京オリンピック・パラリンピックの複数の種目を東日本大震災の被災地で行う構想を提案した。
 会談後、バッハIOC会長は、記者団の質問に答え、「イベントの中のいくつかを被災地でやるアイデアを持っているという話をした」と語り、東京オリンピック・パラリンピックの複数の種目を東日本大震災の被災地で行う構想を安倍総理に提案したことを明らかにした。これに対し安倍総理は、「そのアイデアを歓迎する」と応じたという。
 またバッハ会長は 「復興に貢献したい。世界の人たちに、復興はこれだけ進捗していることを示すことができる」とし、大会組織委員会が福島市での開催を検討している追加種目の野球・ソフトボールについては、選択肢の1つとした上で、 「日本のチームが試合をすれば、非常にパワフルなメッセージの発信につながる」と述べた。
 野球・ソフトボールの開催地を巡っては、福島県の福島、郡山、いわきの3市が招致している。
 このほか宮城県利府町でサッカーの1次リーグが開催されることがすでに決まっている。また聖火リレーの出発地には、宮城県石巻市の経済団体などが名乗りをあげ、被災地と東京をつなぐルートを提案している。
しかし、ボート・カヌーの会場見直しについては安倍総理との会談で話題にはならなかったとした。


小池知事がコスト削減説明 バッハIOC会長は理解示す 4者会合開催で合意
 2016年10月18日、会談は東京都庁にバッハ会長が訪れて開かれた。
 冒頭、“3兆円”に膨れ上がったとされる開催費用のコスト削減について、小池都知事は「(競技場)の見直しについては80%以上の人たちが賛成をしているという状況にある。都政の調査チームが分析し、3つの競技会場を比較検討した。そのリポートを受け取ったところで、今月中には都としての結論を出したい。オリンピックの会場についてはレガシー(未来への遺産)が十分なのか、コストイフェクティブ(費用対効果)なのか、ワイズスペンディングになっているのか、そして招致する際に掲げた『復興五輪』に資しているかということがポイントになる」と述べた。
 これに対し、バッハ会長は「“もったいない”ことはしたくない。IOCとしてはオリンピックを実現可能な大会にしていきたい。それが17億ドル(約1770億円)を(組織委員会に)拠出する理由だ」と語り、小池都知事は親指を挙げて笑顔で答えた。
 そして、バッハ会長は、コスト削減を検討する新たな提案として、「東京都、組織委員会、日本政府、IOCの四者で作業部会を立ち上げ、一緒にコスト削減の見直しを行うということだ。こうした分析によってまとめられる結果は必ず“もったいない”ということにはならないと確信している」とした。
 これに対して小池都知事は、「来月(11月)にも開けないか」と応じた。
 また抜本的な見直しの検討が進められている海の森水上競技場については、会談に中では、長沼ボート場や彩湖の具体的な候補地は出されなかった。
 バッハ会長は、「東京が勝ったのは非常に説得力のある持続可能で実行可能な案を提示したからです。東京が開催都市として選ばれた後に競争のルールを変えないことこそ日本にとっても東京にとってもIOCにとっても利益にかなっていると思う」と暗に海の森水上競技場の見直しを牽制した。
 会談は、当初は、冒頭のみ報道陣に公開する予定だったが、小池都知事の要請で異例の全面公開となった。殺到した取材陣は合計139人、午後2時過ぎに行われたこともあって、民放の情報番組では生中継で会談の模様を伝えた。
 11月に開催される4者協議も、小池都知事はオープンにしたいと要請し、バッハ会長もこれを承諾したとされている。
 翌朝の朝刊各紙は、「同床異夢」(朝日新聞)、「四者協議 都にクギ」(読売新聞)、「IOC会長 先制パンチ」(毎日新聞)、スポーツ紙では「小池知事タジタジ、IOC会長にクギ刺されまくる」(日刊スポーツ)などの見出しが並んだ。
 小池都知事は、東京都が主導で3会場の抜本的な見直しをまとめ、その後、組織委員会やIOCと協議を行うという作戦だったが、コーツ会長の「四者協議」提案で、思惑通りいかない状況になってきたのは誤算だっただろう。しかし、「四者協議」の具体的な見直し案を提出できるのは東京都しかないだろう。東京都の掲げる「復興五輪」を組織委員会も国も反対できない。しかし、IOCも絡んできたことで、“混迷”は更に深刻化したことは間違いない。一体、誰がどのように収束させるのだろうか?まったく見通せない状況になった。

 
海の森水上競技場、整備費300億円程度に削減 都が試算
 東京都が2020年東京五輪・パラリンピックのボート・カヌー会場に計画している「海の森水上競技場」の整備費について、現行計画の491億円から300億円前後に削減する試算をまとめていたことが明らかになった。テレビ中継用桟橋設置をやめることで約60億円、予備費90億円の削減、屋根付きの観客席の縮小や艇庫を仮設施設にするこことで約40億円、合わせて約200億円の事業費を抑制するとしている。

IOC、ボート・カヌー競技など韓国開催も検討 海の森水上競技場開催が中止の場合
 10月18日、国際オリンピック委員会(IOC)は、海の森水上競技場が建設されない場合には、代替開催地として韓国を検討していると、国内の大会関係者が明らかにした。関係者によると、IOCは海の森水上競技場の整備費が高額であることを憂慮して、2年前にも韓国案を選択肢として組織委員会に示しており、再度持ち出す可能性があるという。
 関係者によると、IOC側が想定するのは、2013年世界選手権や2014年仁川アジア大会で使われた韓国中部、忠州(チュウンジ)の弾琴湖国際ボート競技場で、ソウルから約100kmほど離れた場所にある湖のボート場で、国際規格の2千メートルコース8レーンを備える。
 IOCは14年12月に承認した中長期改革「五輪アジェンダ2020」で、コスト削減などの観点から例外的に五輪の一部競技を国外で実施することを容認している。交通アクセスなどに課題があるものの、ボート関係者によると「数カ月あれば、五輪を開催できるような能力をもったコース」の整備が可能という。これに対してバッハ会長は、「憶測はうわさにはコメントしない」と述べた。
 海の森水上競技場の“迷走”に不快感を示したIOC関係者が小池都知事とバッハ会長の会談を前にリークして、暗に小池都知事の対応を牽制したと思うのが自然だろう。海の森水上競技場は更に“混迷”を深めている。


小池都知事 長沼ボート場や仮設住宅を視察
 2015年10月15日、小池都知事は宮城県登米市の長沼ボート場を視察した。村井宮城県知事が同行した。
長沼ボート場への開催については、大会組織委員会は交通事情や整備経費増大の懸念など9つの問題を指摘し難色を示したが、村井知事は9つの問題はいずれも解決できるとした上で、「会場の整備は都の試算(約350億円)を下回る約200億円で収まる見込み」と述べ、被災地での開催に強い意欲を示した。
 また小池知事は、長沼ボート場から約7キロ離れた仮設住宅団地を訪れ、県が選手村の宿泊施設用に改装した部屋を視察した。2世帯分を1部屋にリフォームした部屋で、11畳のダイニングルームも備えられていてバリアフリーにも対応しているという。
 視察後、小池都知事は「やはり復興五輪というメッセージは私はパワフルなメッセージと思っているし、被災地で使われた仮設住宅が今度は五輪・パラリンピック用によみがえるというのは、一つの大きなメッセージとなり得ると思った。今日の現地視察をベースに東京都としての選択をしっかり定めていきたいと思っている」と述べた。
 これに対し、村井知事は「小池都知事には長沼の良い面がしっかりインプットされたのではないかと思う」と語った。
 さらに都政改革本部がボート・カヌー会場見直し案を発表する前に、小池都知事が村井知事と事前に話し合いを行っていたことが明らかにされたことを巡り、大会組織委員会は「水面下で他の県知事と話し合うのは極めて不透明なやり方」と反発した。これに対して、村井知事は「決して小池都知事と私が水面下でいろいろ話をしたということではなくて、あれを聞いて非常に組織委員会に不信感をもった。逆にね。結局なんでもかんでもいちゃもんをつけているようにしか見えない。あれじゃオリンピックはうまくかないと思う」と述べた。また小池都知事は、「知事同士情報交換をするのは当然、不透明という批判は当たらない。透明にすべきことはたくさんある。だからこの見直しを多くの都民が望んでいる」とした。
 一方、上田埼玉県知事は、ボート・カヌー会場として、彩湖の受け入れを改めて表明した。上田知事は「受け入れる気持ちがないと小池都知事が判断されたんだったらそれ誤解だということだから、正式に私たちも、国交省の理解があれば、しっかり受け入れるということを表明した」と彩湖開催に前向きな姿勢を示した。(出典 TBS報道特集 2015年10月15日)


五輪ボート会場、埼玉も誘致へ
 2016年10月14日、小池都知事は、記者会見で、ボート・カヌー会場を彩湖(埼玉県戸田市)に計画変更する案を埼玉県の上田清司知事が「十分です」と断ってきたと述べた。一方、上田氏は「(小池氏から)打診を受けたことはない」と否定し、誘致の意向を表明した。
 小池氏は「上田知事から『主要な競技がすでに会場として(埼玉県内に)来るので十分だ』と聞いた」と明かした。この発言を受け、上田氏は記者団に対し、「申し入れが全くないのに辞退のしようがない。とんでもない話です」と述べた。小池氏と五輪の話は「していない」という。
 その後、上田氏は「大会組織委員会の顧問という立場から誘致を自粛していたが、(小池氏の発言を受けて)考えを変えざるを得ない」とする談話を出し、積極的な誘致に転じる考えを示した。
 こうしたやりとりに大会組織委員会は同日夜、「国際競技連盟や国内競技団体に意見を聞いていないのに、小池氏が水面下で他県知事とだけ話し合うのは極めて不透明なやり方だ。混乱した事態を収拾していただきたい」と異例の文書で発表し、報道各社に一斉に送り、小池氏への反発を強めている
 小池都知事、森喜朗組織委会長、宮城県、埼玉県、日本ボート協会、戸田監督会などの競技者組織、それに国際ボート連盟や国際オリンピック委員会(IOC)、関係者で合意に至るのは至難の技だ。
 また「復興五輪」の理念をどうするかという問題も重要で、こうなると単にスポーツ関係者の判断だけでなく国の関与も不可欠だろう。
 海の森水上競技場を巡る問題は、一気に“混迷”を深めていきそうだ。

小池都知事 村井宮城県知事と会談 海の森水上競技場見直し
  2016年10月12日、小池都知事は海の森水上競技場の見直しを巡り村井宮城県知事と会談した。村井宮城県知事は、都政改革本部が宮城県登米市の長沼ボート場を代替候補地として提案したことを歓迎するとしたうえで、長沼ボート場での開催へ協力を求めた。
会談では、村井氏は用意していた資料を差し示して説明しながら、東日本大震災の仮設住宅をボート・カヌー競技選手の選手村として再利用することや、整備中の自動車道による交通アクセスの確保、大会関係者の宿舎に近隣のホテルを活用するなどの計画を示した。 また高校総体のボート会場として毎年活用したいという構想も明らかにした。
 会談後、村井宮城県知事は、「被災者の皆さまと話をすると忘れ去られてしまう記憶の風化が非常に怖いとおっしゃる。2020年はちょうど震災から丸10年、多くの皆さまに来ていただいて改めて被災地の復興した姿を見ていただき、改めて被災者を激励してもらいたい」と語った。
 これに対し小池知事は、「選択肢としての一つだが、思い入れは十分に受け止めた」と述べた。

 これに先立ち、村井宮城県知事は前オリンピック・パラリンピック担当大臣で組織委員会理事の遠藤利明氏や武藤敏郎事務総長と会談した。
 会談では、組織委が長沼ボート場について9つに課題を指摘した。

・選手村の分村の設置
長沼ボート場は東京・有明地区の選手村から遠距離にあるため、選手村の分村の設置が必要で、オリンピックで1300人以上、パラリンピックで250人以上の宿泊施設を用意しなければならない。仮設住宅の転用で対応すると、パラリンピックの選手に使ってもらうためには利便性に課題が残る。
・パラリンピックへのバリアフリー対応
 競技会場には車いすの選手が利用できる間口の広いトイレや、すぐ横にシャワースペースも必要になるとし、会場についても高低差10メートルほどの斜面もあり、パラリンピックの開催に適さない。
・輸送に問題点
仙台から85キロあり、パラリンピックの選手に負担が大きく、最寄り駅の1つにはエレベーターやエスカレーターがない。
・会場に斜面が多く、整備が困難
 会場周辺は斜面が多く、放送設備を置くためのスペースの確保などが難しく、周辺道路も狭い。
・電力通信インフラが未整備
国際映像を配信するための電力や通信関係のインフラが整備されていない。
・観客や大会関係者の宿泊施設不足
・選手の移動などに負担大
 空港から距離があり、選手の移動に負担がかかることや、カヌーはスラロームとスプリントが別の会場で実施されることになるためコーチなどスタッフの対応が難しくなる。
・整備経費増大の可能性
都政改革本部の調査チームの試算ではおよそ350億円とされているが、バリアフリー化や電力・通信、宿泊関係などにかかる費用が含まれていないので整備経費は更に膨れ上がる可能性がある。一方、海の森水上競技場はコスト削減の余地があり結果的に低コストになるのではないか。
・レガシー(遺産)が残らない
 
 会談後、遠藤理事は、「東京都を含めてそれぞれの組織や団体が時間をかけて丁寧に精査し、現在の計画が最良の場所だと決めた。その中でIOC=国際オリンピック委員会などの理解を得られるのかどうか、難しい課題がいっぱいある。問題点のうち、いくつかはすでにクリアしているということだが、いちばん大きい問題は、現地で負担する費用の問題だと思う」と述べた。
これに対して村井宮城県知事は「組織委員会は消極的で『しょせん無理だ』という感じだった。長沼のボート場でできない9つの理由を挙げていたが、すべてクリアできると考えている。1000年に一度と言われる震災から立ち直ったのだから、やる気を出せば4年あればできる。できない理由よりもやれる方法を考えるべきで、森会長のリーダーシップに期待したい」と述べた。

「復興五輪」は国の責任
 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は招致の段階から、東日本大震災からの“復興”を掲げ、「復興五輪」を国や組織委員会は繰り返し強調してきた。
 2015年11月27日、政府は2020年東京オリンピック・パラリンピックについて基本的な考え方、施策の方向を閣議決定した。 その中で、「世界の注目が日本に集まる機会を活かし、『復興五輪』として、復興の後押しと なる取組を進める」とした。そして「国民総参加による『夢と希望を分かち合う大会』を目指し、「大会の効果が東日本大震災の被災地を含む日本全体に波及し、国民全体に参加 意識が醸成されるよう努める」とした。
 政府は大会開催にあたって、「復興五輪」を国民に“公約”したのである。2020年東京オリンピック・パラリンピックは「復興五輪」を高らかに掲げた大会なのである。 
 しかし、開催準備が進められる中で、「復興五輪」は雲消霧散してしまっている。カヌー・ボート競技会場の見直し問題をきっかに「復興五輪」という理念にどう取り組むのか、もう一度、考え直す必要があるのはないか。「復興五輪」の理念を具体化する取り組みを牽引するのは、組織委員会や都もさることながら、国であろう。丸川五輪相は、組織委員会や都の対応に委ねるのではなく、主体的に「復興五輪」に向けて取り組む責任がある。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックをレガシー(未来への遺産)にするためにも……。



東京オリンピック 競技場整備 最新情報 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念

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都政改革本部「海の森水上競技場」抜本的見直し
宮城県長沼ボート場を代替地に提言

 2016年9月29日、2020年東京五輪・パラリンピックの開催経費の検証する都政改革本部の調査チームは調査報告書を小池都知事に提出し、「海の森水上競技場」にも言及し、当初計画の7倍の約491億円に膨れ上がった経費に加えて、「一部の競技者が会場で反対している」「大会後の利用が不透明」などとして、宮城県長沼ボート場を代替地に提言した。長沼ボート場は「復興五輪」の理念にも合致するとしている。


アイエス総合ボートランド(宮城県長沼ボート場)  宮城県登米市
延長2000m、幅13.5m、8コース  (日本ボート協会A級コース認定 国内で唯一) 
1999年 シドニー五輪アジア予選大会開催
カナダが東京五輪の事前合宿地の候補地として視察


 海の森水上競技場の整備経費の高騰については、湾岸エリアの水路に整備するため様々な課題が存在し、その対策のための整備費が予算の高騰を招いたと指摘し、招致段階では69億円が、その後の現地調査等の結果、1038億円を超える整備費が見積もられ、削減努力後も491億円が必要された。


都政改革本部 調査チーム 調査報告書
 
 調査チームでは、ボート協会(NF)は海の森水上競技場を恒久施設として整備することを訴えているが、首都圏のボート・チームや全国の選手の一部からその立地に疑義が出され、競技会場として有用性・利便性について疑問が残されているとした。
 さらに五輪開催後のレガシーとしては、収入、ランニングコストなど具体的な収支計画は現時点では不透明な部分が多いと指摘した。


都政改革本部 調査チーム 調査報告書

 他の会場への代替の可能性については、オリンピックのような国際大会が開催可能な河川、湖は国内他地域に複数存在し、これまでも他代替候補地の検討が行われた。代替候補地がオリンピック要件を満たすためには、改修費用や高額の仮設費用が必要とされており。現在は海の森水上競技場が国際競技団体(IF)や IOCが承認した開催地として妥当とされている。
 しかし、仮設費用の大部分が観客席やTVカメラレーン等を設置する仮桟橋工事等のためであり、競技団体との交渉次第では、他代替候補地がより低コストで整備できる可能性はあるとした。
 また、整備費の試算額がまったく不明瞭で、仮設費の項目で、他の候補地が約170~180億円計上しているに対し、海の森水上競技場の約28億円とし、仮設費の内、「観客席・外溝・仮桟橋等」は協議中として、経費を計上していない。余りにも杜撰で不公平な整備費試算の比較である。海の森水上競技場の整備額を不当に低く見せていると批判されてもしかたがないだろう。
 問題は仮桟橋で、海の森水上競技場以外は、約140億円の設置費用を計上している。仮桟橋は、ボート・カヌー競技する中継カメラの移動トラック・レールを設営するためのもので、2000メートルのコースの両側に仮設で建設するものだ。もちろん大会開催時のみ使用する仮設施設である。
海の森水上競技場は陸上部分に中継カメラの移動トラック・レーンが設営可能なので仮桟橋は設置しなくても済む。ところが国際オリンピック委員会(IOC)の基準によれば仮桟橋の設置は義務でななく、コースの幅を135メートル確保すればよいとしている。リオデジャネイロ五輪では、中継カメラを積んだモーターボートが並走して競技を生中継している。つまり140億円の仮桟橋はあってもなくてもいいのである。
 唖然とするほど杜撰な見積もりである。東京都が試算した海の森水上競技場、長沼ボート場、彩湖の整備費の試算全体が、果たして適正に行われたのか深い疑念が生まれる。まず、第三者機関が3つの候補地について、整備費のきちんとした試算を実施すべきであろう。
 都政改革本部調査チームでは、競技開催地については海の森水上競技場に加え、その他代替候補地も含めて再度検証すべきだと結論づけた。


都政改革本部 調査チーム 調査報告書


都政改革本部 調査チーム 調査報告書


 今後の課題と必要なアクションとして
▼ 海の森競技会場のコスト削減、レガシー収支改善の再検討
例:水位維持のための恒久的な締切堤、遮水工は必要か? 例:仮設化によるコストダウンは可能か?
▼ ボート協会(NF)と都オリンピックパラリンピック準備局による具体的なレガシーとしての需要予測の精査
例:ボート施設利用競技団体、利用者予測は? 例:恒久施設としてのランニングコストと収入予測は?
▼ 代替候補地の再検討
例:候補会場の整備費用、大会後のランニングコストと収入予測は? 例:仮設シナリオの場合コスト試算の再検討 (高額な仮桟橋設備は本当に必要か?等)
 調査チームでは、以上のような項目を挙げている。


“迷走” カヌー・ボート競技場
 都政改革本部の調査チームは調査報告書のこうした提言に対し、激しい反発が起きている。
 森組織委会長は、「IOCの理事会で決まり総会でも決まっていることを日本側からひっくり返すということは極めて難しい問題」と述べ、海の森水上競技場については、「宮城県のあそこ(長沼ボート場 登米市)がいいと報道にも出ているが我々も当時考えた。しかし選手村から三百何十キロ離れて選手村の分村をつくることはダメなことになっているし経費もかかる。また新しい地域にお願いしてみんな喜ぶに決まっているが、金をどこから出すのか。東京都が代わりに整備するのか。それはできないでしょう法律上」と否定的な考えを示した。
 10月3日、海の森水上競技場の視察に来日していた国際ボート競技連盟のロラン会長は、視察後、「(海の森水上競技場は)ボート会場には適切だ。非常に満足しているし、このプロジェクトにも満足だ。今のところ、1つのプロジェクトしか存在しない」と述べた。さらにロラン会長は、「立地もよく、検討すべき点もあるが、最良ということで決定され、現在の準備状況に満足している」と強調した。
その後、ロラン会長は小池都知事と会談し、小池都知事は「都政改革を訴えて今回の知事選に当選をした私として、もう一度オリンピック・パラリンピックにかかる経費、そしてまた、さまざまな環境整備を見直すべきではないか、実はこのことを訴えて知事になったようなものだ。費用の見直しについての世論調査は、80%以上の方が見直しということに賛成をしている。東京オリンピック・パラリンピックを成功させる最善の方法を見出すことを短期間で努めたい」と述べた。
 これに対し、ロラン会長は「直前に海の森から変わるかもしれないと報道で知って驚いた。承認済みのことに関して、我々に事前に相談がなかったことが残念。なぜこうなったのか深く知りたい」と不快感を示した。
 そして「決定ではなくこれから検証段階であると聞いたが、これは非常に重要なことだ。この報告書は第1ステップであり、報告書を改善するための手伝いをしたい。一部分だけでなく、すべての要素を全面的に検討して結論を出してもらいたい」とけん制した。長沼ボート場に変更する案については、「競技会場は、いろいろな基準を満たさないといけないが、東京から遠く、アスリートにとってベストの経験にならないのではないか。2年前にIOCや東京都などが調査をして専門家がまとめた分析では、宮城開催が将来にわたって地元によい効果をもたらすのかという点で、ほかの候補地に比べて評価が低かった」とした。
 また日本ボート協会の大久保尚彦会長は、「単に東北復興支援ということでは本当にワンポイントになってしまう。将来のレガシーにまったくならない。私はまだまったく理解できない」と強く反発している。また原理事は「海の森水上競技場でもう少しコストを下げられないかということをまず先に勧化ルのが筋であって、競技団体に一言の相談もなく突然マスコミの中で世論を誘導しているような状況に今なっているのが残念だ」と述べた。
 一方、IOCのバッハ会長は、東京五輪の開催費用の増加について、「東京における建設費の高騰は我々も把握している。東日本大震災からの復興などそのほかの理由もあるだろう」とし「建設的な議論をしたい」として柔軟に対応する姿勢で、今後東京都や組織委員会と協議を始める意向を示した。
 スポーツ・ジャーナリストの二宮清純氏は、「アスリート・ファーストなら彩湖、復興五輪ファーストなら長沼ボート場、IOC・IF(国際競技連盟)ファーストなら海の森水上競技場」としている。
 報告書の提案を実行していくためには、国際競技団体や国際オリンピック委員会(IOC)の承認を受け直す必要がある上に、海の森水上競技場にこだわっている国内の競技団体や大会組織委員会、そして国などとの調整も必要で、実現には難関は多いと思われる。
 小池都知事は難しい決断を迫られている。


海の森水上競技場完成予想図 出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局


唖然とする“専門家”の“言い訳” 膨れ上がった施設整備費
  2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催費用は招致段階では、全体で約7340億円としたが、それが“3兆円”に7倍以上膨れ上がる可能性があると指摘され、激しい批判が浴びせさられている。
 これに対して、日本スポーツ法学会理事の専門家は、招致ファイルの段階では、“本体工事”のみを算出して“周辺工事”は算定していないので“当然”とする発言を繰り返している。また建築費の値上がりや入札制度が原因だと発言などとしている。
 本当にそうなのだろうか、発言する前にきちんと事実関係を把握してこそ専門家だろう。見識を疑う。
 海の森水上競技場で検証してみよう。招致段階では約69億円、その内訳は陸上施設64億円、水上施設15億円、消波装置1億円、防風林3億円である。
 額は少ないが、周辺整備費として防風林3億円が計上されているのである。
 これに対して現在の整備計画の経費は約491億円を検証してみると、内訳は本体工事費が251億円、インフラ整備費が86億円、調査設計費が19億円、工事中のセキュリティ費が21億円、建設費の値上がり91億円、消費税増分が23億円としている。本体工事だけで比較しても約4倍に膨れ上がっているのである。 コースを海から遮断する「締め切り堤・水門」や「護岸遮水・揚排水」工事はボート・カヌー競技場建設の本体工事だろう。まさか、招致段階では海から遮断しないで競技を開催できるとでも思っていたのだろうか。“周辺整備”を入れていないから約4倍に膨れ上がったという説明はまったく説得力がない。インフラ整備費は全体の20%程度なのである。
 そうすると必ず建設経費の暴騰を理由に挙げる。
 しかし、建設費の値上がりだけでは、整備費は2倍、3倍にならない。
 海の森水上競技場で言えば、建設費の値上がり分は91億円と明らかにしている。約20%程度である。新国立競技場の建設計画見直しに際も、建設費値上がり分は約25%程度としている。
 9月放送のNHKの番組、「リオから東京へ オリンピック・パラリンピック」の中でで、NHK解説委員は、「招致段階では開催費は7340億円だったが、その後資材や人件費の高騰ということもあって、森組織委員会会長も“2兆円”や“3兆円”になるのではないか発言している」とコメントした。開催経費が膨れ上がった原因を“資材や人件費の高騰”にしている。ほかのニュース番組でも同じような発言をしている。“資材や人件費の高騰”では7倍超にはならいのは明らかだ。事実関係を踏まえた説得力のあるコメントをしてほしい。
 総合評価方式や設計・施工一括方式など入札制度の責任にする専門家もいるが、発注側が定める入札前の予定価格の段階ですでに何倍にも高騰しているのである。落札率が99%台という高止まりになるという問題はあるが、そもそも予定価格が2倍、3倍なっているのである。
 招致の競争を勝ち抜くために開催経費はなるべく安く記載しなければならないとする専門家もいるが、オリンピック・パラリンピック招致を都民や国民が賛同するための判断材料にするためには開催経費は極めて重要なポイントとなる。東京オリンピック・パラリンピックの招致を決める際に、“2兆円”、“3兆円”という数字を明らかにしたら、都民や国民は納得しただろうか?
 都民や国民を欺いたことにはならないだろうか?
 海の森水上競技場を巡って、「そもそも69億円をベースに考えるとこまる。はっきりいって69億円はいいかげんなものだから」、元宮城県知事の発言である。簡単に言ってほしくない。このような認識で税金を投入する施設整備計画がまかり通って良いはずがないのは常識である。
 百歩譲って、招致が決まって準備作業が本格化した段階で、早期に開催費用を都民や国民を明らかにしなければならない。杜撰な開催計画のツケがまた都民や国民に回されそうとしている。
 新国立競技場の“迷走”が再び繰り返えされ始めた。



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“疑念”噴出 海の森水上競技場
 東京五輪のボート・カヌー競技場が整備される“海の森公園”は、ごみと建設残土で作られた中央防波堤内側の埋立地で、1230万トンのごみが高さ約30メートルにわたって積み上げられた“ごみ山”だった。
 この土地を東京都は緑あふれる森林公園にして東京湾の玄関口にふさわしい臨海部のランドマークにしようとするのが“海の森”プロジェクトである。工事に2007年から始まった。広さ約88ヘクタール、日比谷公園の約5.5倍の広大なスペースに約48万本の木々が植えられる計画だ。
 高度成長期の“負の遺産”を、未来への遺産(レガシー)に変えようという狙いは大いに評価したい。


海の森公園 出典 東京都港湾局 Dream Imagination


 ボートとカヌーの競技場となる海の森水上競技場は、この“海の森公園”の防波堤内の埋立地に挟まれた水路を締め切る形で施設を整備する計画である。
 招致計画では、水門や観客席の工事で整備費を約69億円とした。当然必要とされる工事費が含まれていない極めて杜撰な整備計画だった。
 その後の東京都の調査で、軟弱な地盤強化や潮流を遮る堤防の追加工事、コースの途中にある中潮橋の付け替え工事、護岸からの跳ね返り波を防止する消波装置の設置などが必要とわかり、あらためて整備を積算すると当初計画の15倍の1038億円に膨れ上がることが判明した。
舛添前知事は、東京都の施設整備費が、全体で当初計画では938億円だったが、その後の見直しで約5倍の4584億円に膨れ上がる分かり、これでは東京の財政がもたないと施設整備費の大幅削減に乗り出した。
 「海の森水上競技場」は杜撰な整備計画のシンボルとなり、仮設施設への変更や水門の形状の変更や護岸延長の縮小、観客席の移設など会場レイアウトの変更などにより整備費を約491億円に約半分に圧縮ことした。
 見直された計画では、延長約350メートルの締め切り堤などの港湾施設や、水門2基、揚排水施設各1カ所を整備、実施設計では会場周辺の水面や空を引き立たせるために、水門などの土木施設については、鮮やかさを抑えた色彩を採用することとした。また風速シミュレーションの結果を踏まえて、防風林の整備や、ボートの航行時に発生する波を弱める消波装置の設置も行う。建築棟は、グランドスタンド棟(S造2階建て延べ5613平方メートル)、艇庫棟(S造2階建て延べ5977平方メートル)、フィニッシュタワー(S造5階建て延べ746平方メートル)などを整備する。
観客席は、恒久施設のグランド棟2000席と大会開催時には仮設施設で関係者席2000席、一般観客席1万席、一般立見席1万席、合わせ2万4000席を確保し、五輪開催後は2000席(グランドスタンド棟のみ)まで減らす。
 しかし、この約500億円の巨額な経費で整備される海の森水上競技場巡って、数々の疑念が噴出している。


海の森水上競技場基本計画 出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局


海の森水上競技場基本計画ゾーニング 出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局




ボート・カヌー競技の“天敵” 強い風と波 航空機の騒音 沿岸部での開催は無謀?
 カヌー・ボート競技関係者から最も批判の声が強いのが、海の森水上競技場の“強風と波”である。
カヌー・ボート競技の会場は、沼や川を利用したり、人工のコースを整備したりするがが、いずれも内陸で、強い風が吹き、波の懸念が大きい沿岸部で開催されるのは「史上初」という。
 “海の森公園”には、風力発電の風車が立ち並んでいる。沿岸部独特の強い風が常に吹いているからだ。強い風が吹けば波が発生する。 海の森水上競技場は、埋め立て地に挟まれた東西の水路がコースになる。五輪が開かれる夏場は南風が多く、競技に不向きな横風になる。護岸が垂直なため波の打ち返しがあり、護岸近くのコースと中央のコースでは不公平になる懸念が生まれる。
 都が昨年十月に公表した基本設計では、波風対策として、コース両側を水門で仕切り、コース周囲の護岸に消波装置を取り付ける。風上の南岸に高さ五メートルの防風林も植えるとしている。
 当初からアンフェアな競技運営になりかねないという懸念が、関係者から根強く出されているのである。
 加えて無視できないのが、近くの羽田空港を頻繁に離発着する航空機の騒音、離発着に備えて、低空で飛行するのでとにかくうるさい。選手や観客にとって、とてもボート・カヌー競技に集中できる環境ではないのである。
 また海水であることから、淡水と違って浮力が違うことで競技に与える微妙な影響やボートが塩害で腐食する懸念などの問題点も噴出している。
 オリンピックのシングルスカル元日本代表の武田大作氏は、「五輪を含め国際大会が海で行われることは信じられない。ボートやカヌーはバランスが重要。横風は非常に影響を受けやすい。(海の森水上競技場は)選手の立場からはやりにくい」とし、「東京の団体は戸田の漕艇場を利用している。大学の寮のような生活をしていて1階がボート置き場、2階が居住できるようになっており食事もできるので環境が良い。わざわざ環境が悪い海の森水上競技場に行く人はないと思う」(ひるおび! TBS 2016年10月4日)と述べている。
 また戸田漕艇場を拠点にしているボート競技団体で構成する戸田監督会の和田卓事務局長は「(海の森水上競技場)は居住できないんじゃないかな。極端にいうとなかなか難しい。騒音もひどいし、周りになにもないし、移動するための経費だとか環境だとかを考えたら100%いかないと思う」(報道ステーション テレビ朝日 2016年10月3日)と語っている。


戸田漕艇場 出典 blogs.c.yimg.jp

 こうした中で、埼玉県戸田市は、戸田監督会と連携して、戸田ボートコース(戸田漕艇場)の隣にある彩湖での開催を提案している。彩湖は荒川の遊水地で、全長は8.1キロメートルもあり、2000メートルのコース設営には十分だ。高規格の堤防に囲まれ、風は静かで波の影響もほとんどない。淡水湖なので塩害もない。敷地内にはプロ野球ヤクルトの2軍練習施設やサッカー場などがありスペースは十分確保できる。戸田市が元建設業者に見積りを依頼したところ、国際規格のコースが約47億円の費用で整備が可能という試算がされたという。海の森水上競技場の整備経費の約10分の1である。そこで、戸田市では彩湖での競技場計画を立て、図面も完成させて、舛添要一前知事時代の2014年9月に東京都や五輪組織委員会に要望したが、「五輪組織委員会、日本ボート協会で海の森で合意している」との回答のみだったという。五輪組織委員会では、彩湖は荒川が増水した場合に水を逃がす調整池なので競技場造るのは難しく、施設の工事には陸域の掘削など大規模な整備が必要となるなど大きな問題がり、検討はしたが断念したとしている。
 これに対して、戸田監督会の和田卓事務局長は「近くの戸田ボートコース場は、貯水池に作ったもので今も貯水池として機能を有している。同じように彩湖をボート場にしても貯水池の機能を阻害するものではない。そもそも海の森水上競技場は海水で競技には不向き」と語っている。(ワイドスクランブル テレビ朝日 2016年10月5日)
 ちなみに1964年東京オリンピックのボート・カヌー競技会場となった戸田ボートコース(戸田漕艇場)は、6コースしかなく、8コースが必要とされている国際規格を満たさないので五輪開催は不可能だ。
 ボート競技はコースに白波が立っただけでレースを行うか行わないという判断をするほど、風と波の影響は受けやすい。
 海の森水上競技場で、果たして円滑な競技運営を行う確固たる自信が五輪組織委員会や日本ボート協会にあるのだろうか。
 真夏の東京は、台風やゲリラ豪雨など気象が極めて不安定な季節であることも見逃せない。

「彩湖」を要望する戸田監督会
 戸田監督会は、昨年、競技者の声として「2020年東京オリンピックボート・カヌー競技会場の変更要望について」というコメントを出し、「彩湖」への会場変更を要望した。
その理由として、海の森水上競技場の「劣悪な自然環境」、「巨額の会場整備費」、「五輪後の活用不安」の3つの問題点を指摘している。
この内、「五輪後の活用不安」について、「五輪開催後にレガシーとして有効活用されていくとは到底考えられません。競技団体も五輪後に新たな競技普及拠点として活用する意向は皆無であり、競技会場整備費用が税金の無駄遣いとなる可能性が極めて高いです」としている。
そして代替会場として「彩湖」が最適だとした。
 「彩湖」は、「戸田ボートコースに近く、内陸部に位置するため、自然環境は良く、コース水面、公平性、環境面、経済性、アクセス等どれをとってもメリットがあり、ボート・カヌーの競技会場として、計り知れぬ可能性を秘めています。良好な水面(淡水)は十分に確認されており、またコースとして南北に設置できる点も見逃せず、『海の森競技場』に不可欠の静水化対策、防風対策等は一切不要です。「彩湖」を会場とすることにより、現在の戸田ボートコースに備わる様々な資産を活用できることは何よりのメリットです。」とした。
 更に交通機関については、首都圏や関東周辺からのアクセスは格段に良好で、選手村から若干離れるとしても、オリンピックで4競技(バスケットボール、サッカー、ゴルフ、射撃)とパラリンピックで1競技(射撃)埼玉開催となっていることから「海の森競技場」に固執する必要はないと指摘した。
 戸田漕艇場と「彩湖」を合わせて、東京都オリンピック・パラリンピック開催後、ボート・カヌー競技の“聖地”としてレガシー(未来への遺産)にするというコンセプトは、最も説得力があると筆者は考える。“復興五輪”を掲げる「長沼ボート場」案は、五輪開催の意味合いからすれば重要だと思うが、レガシー(未来への遺産)の視点で見るとどうしても疑問が残る。既存の施設が利用可能なサッカー(予選)や追加競技の野球やソフトボールの開催することで、“復興五輪”を推進したらどうか。


リオデジャネイロ五輪のボート・カヌー競技会場になったロドリゴ・デ・フレイタス湖(Lagoa Rodrigo de Freitas) コパカバーナ地区


“疑惑”の目が向けられている海の森水上競技場の入札
 「海の森水上競技場」のグランドスタンド棟や水門などの整備工事は、入札が行われ、2016年1月、新国立競技場を受注した大成建設を中心とする異業種共同企業体(JV)が248億9832万円で受注した。
しかし、入札は異例づくめで、 “疑惑”の目が向けられている。
応札したのは、大成建設など4社(河川工事)、東洋建設など2社(建築工事)、水ing(ポンプ据え付け)、水門門扉(日立造船)の共同企業体(JV)だけであった。
 また、落札価格が248億9832万円、予定価格は248億9863万9860円、落札率は99.9%、異例の落札率だった。
応札した事業体が1つだけであったことについて、東京都の担当者はポンプの据え付けや水門などの工事は専門性が高く「施工条件が厳しかったのでは」と話しているという。
 その一方で、技術点は60点満点で36点、他の五輪競技場の落札者の点数と比較すると極めて低いのが目立つ。
 今回は技術審査委員の6人のうち5人は東京都港湾局の職員、1人は五輪準備局職員、全員が都庁の職員で、第三者の委員は誰もいない。審査の公平性や不明朗さへの疑念が生まれてくる。 さらに“官製談合”と指摘する声さえも囁かれている。
 こうした“疑惑”に対し、東京都は十分な説明性が求められるのは当然だろう。


海の森水上競技場基本計画 出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局


“491億円”で本当に収まるのか?
 海の森水上競技場の基本計画の整備費の内訳をみると、今回、発注される約249億円の工事は、グランドスタンド棟や水門などの“本体工事”で、整備費全体の約半分にすぎない。実は当初計画の69億円に加えて、平成28年度以降措置する想定額として182億円の整備費がすでに算出されていて、合計249億円をすでに見込んでいた。それに加えて、国際競技団体等と協議中の施設整備、約60億円、工事中のセキュリティへの対応費、10億円、大会後の改修費12億円、今後追加工事が生じた場合の対応費、90億円などを想定額として計上している。この想定額というのが曖昧な数字で根拠を明らかにしていない。
 風や波の影響が懸念されている海の森水上競技場については、開催準備がさらに進みと、国際競技団体から追加工事要請が次々と舞い込むことが予想される。約60億円の想定で本当に収まるのだろうか?
 また地盤補強工事や護岸工事は難工事が予想され、想定外の工事追加の発生が懸念される。まだまだ整備費の不確定要素は大きいと見るのが自然である。
 みるみる内に整備経費が膨れ上がった新国立競技場の“迷走”の二の舞になるのではと不安視するのは筆者だけであろうか?


海の森水上競技場基本計画 出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局


“陸の孤島” 海の森公園 問題は深刻
 東京五輪のボート・カヌー競技場が整備される“海の森公園”は、ごみと建設残土で作られた中央防波堤内側の埋立地で、1230万トンのごみが高さ約30メートルにわたって積み上げられた“ごみ山”だった。
 この土地を東京都は緑あふれる森林公園にして東京湾の玄関口にふさわしい臨海部のランドマークにしようとするのが“海の森”プロジェクトである。  2007年工事は2007年から始まった。広さ約88ヘクタール、日比谷公園の約5.5倍の広大なスペースに約48万本の木々が植えられる計画だ。
 この“海の森公園”の防波堤内の埋立地に挟まれた水路を締め切る形でボート・カヌー競技場施設を約491億円で整備する計画だ。
 しかし、この開催計画には、現状では大きな問題がある。選手や大会関係者、観客の輸送機関の整備である。
 “海の森公園”は、とにかく都心部から遠い。しかも公共交通機関がない。道路は江東区若洲と大田区城南島結ぶ東京港臨海道路とお台場経由で都心部に行東京港く臨海道路(青海縦貫線)しかない。東京港臨海道路は、首都高速臨海線(羽田空港線)から、 “海の森公園”を抜けて、東京ゲートブリッジを通り、若狭海浜公園経由で千葉臨海部につながる。臨海道路は、基本的に大田区や羽田空港、京浜地区から千葉臨海部に抜けるバイパスであり、都心部と“海の森公園”を結ぶ道路ではない。
朝晩に集中する選手や大会関係者、観客などの輸送はどうするのだろうか?
いずれにしてシャトルバスで対応する他ないと思われるが、激しい渋滞でスムーズな運行は確保できるのだろうか、“陸の孤島”問題は深刻である。

海の森水上競技場は“負のレガシー(負の遺産)”のシンボルか?
五輪後も施設の運用に疑問が残されている。
 東京都では、競技場水面はボート・カヌーのほかさまざまな水上イベントに活用し、2000席に観客席はレストランやショップ、セミナールームに、浮桟橋はイベントスペースに、運営管理棟は宿泊施設やトレーニングルーム、艇庫などに利用するという計画で、年間35万人の来場者を見込む。
 しかし、ボート・カヌーの競技団体のほとんどは、交通の便が悪く、海風や波の影響が大きい海の森水上競技場に拠点を移す計画はないとしている。また大規模な国際大会を誘致できる保証もない。ボートの競技人口で見れば、日本国内で約8000人、内80%以上が大学生・高校生である。大学選手権など国内の大規模なボート競技大会は戸田ボートコース(戸田漕艇場)1つあれば十分であろう。
 その一方で、水門の管理や海水で建物の腐食が進む塩害対策でで維持管理費はかさむとされている。
 東京都は運営を民間委託したが、委託先は国営公園の管理を行う一般財団法人「公園財団」。イベント開催や集客のノウハウがあるとは思えない。スポーツ施設の運営管理に詳しい関係者は「アクセスが悪く、使用団体もなく、イベントもない。負の遺産になることは明白」と指摘する声も出ているという。 海の森水上競技場は、負のレガシー(負の遺産)のシンボルの道を歩むのだろうか。






海の森水上競技場五輪後利用計画 出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局


海の森水上競技場完成予想図 出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局


豊洲市場の“盛り土”問題で大混乱の東京都 五輪準備の遅れの懸念が深刻化
 豊洲市場の“盛り土”問題を巡って東京都の“大失態”が明らかになり、築地市場移転問題は大混乱に陥っている。その収拾に都政は麻痺寸前だ。リオデジャネイロ五輪が終わってあと4年を切って、2020年東京都オリンピック・パラリンピックの準備に全力疾走しないと間に合わなくなるタイミングに入った。東京都の行政マネージメント力の“お粗末”さが露呈している中で、本当に大丈夫なのだろうか? 重大な懸念が深刻化している。
 新国立競技場の“迷走”、五輪エンブレムの“白紙撤回”、政治と金のスキャンダルで辞任した舛添前都知事、そして今回の競技場整備大幅見直し、混乱はとどまることを知らない。




“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?



2016年10月9日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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オリンピック
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